LVDS|高速・低電力かつ差動伝送に優れた技術

LVDS

LVDS(Low-Voltage Differential Signaling)は低電圧差動信号方式と呼ばれる高速かつ低消費電力なデータ伝送技術である。ディスプレイや産業機器の内部インターフェースで広く採用され、高速通信が必要な場面でも消費電力を抑えられる点が特長である。差動信号によってノイズ耐性に優れ、長距離伝送や高速転送が要求される場面において安定した通信を実現できるため、高精細ディスプレイや各種制御装置など多彩な用途で利用されている。

概要

従来の単線によるシングルエンド方式ではノイズの影響を受けやすいが、LVDSでは2本の信号線間の電位差を利用することで耐ノイズ性を向上させている。これにより信号ライン当たりの電圧振幅が小さくても誤差が少なく、結果的に高速伝送が可能となる。具体的には約100Mbps〜数Gbps程度まで対応可能であり、FPD-Linkなどのプロトコルを通じてPCや組込み機器のディスプレイインターフェースなどに広く実装されている。

伝送メカニズム

LVDSは送信側と受信側それぞれが差動ペアを形成し、送り手側では小さな電圧差を発生させ、受け手側でその電圧差を検出する。信号線はプラスとマイナスのペアになっており、両者の電圧差が論理レベルを決定する仕組みである。これによって外来ノイズが発生してもプラスとマイナス両方に同程度の影響が及ぶため、差分を取ることでノイズを相殺し、安定した信号再生が行える構造となっている。

特徴

LVDSの大きな特徴は低電圧かつ差動伝送を用いることで、消費電力を抑えつつ高い通信速度を達成する点にある。システム全体の電源設計や基板設計を容易にしながらも、安定した高速通信を可能にしている。またシングルエンド方式に比べて使用する配線が多い点はあるが、それを上回る耐ノイズ性能と通信速度のメリットが得られるため、幅広い分野で選択肢として考慮されている。

データレートと電力効率

LVDSでは1対の配線ごとに大きな帯域幅を確保でき、何本もの差動ペアを並列に配置すればさらに高速なデータ転送を実現可能である。例えばディスプレイに大量の画素データを送る場合にも、複数ペアを組み合わせることで十分な帯域を確保しながらシステムの消費電力を抑えることができる。結果として高解像度の映像を表示する際に必要な信号処理を軽減しつつ、機器全体の温度上昇を抑え、高信頼性を維持することにつながる。

用途

LVDSは主にPCモニターやノートPC、産業用ディスプレイ、車載ディスプレイなどで多用されている。組込み分野ではFPGA同士の高速データ伝送や画像処理ボードとの接続に利用されることも多い。さらに自動車の車載カメラやインフォテインメントシステムにおいても高速伝送とノイズ耐性の両立が重要視されるため、LVDSが活用されるケースが増加傾向にある。

ディスプレイインターフェース

ディスプレイ関連のインターフェースとしてよく知られるのがFPD-LinkやMiniLVDSなどである。パネル内部や基板間での高速転送を行う際に、従来のTTL(Transistor-Transistor Logic)方式では信号線が多くノイズも増加しがちだったが、LVDS方式の採用によってノイズを抑制しつつ配線数を削減し、高精細ディスプレイの設計を簡素化している。こうした理由から近年の大画面テレビや車載ディスプレイでは必須の技術と言える。

課題と動向

高速通信が可能である一方で、LVDSはマージン設計に注意を払わなければならない。差動対間の長さやインピーダンス制御、クロックの分配など回路設計の正確性が通信の安定性を大きく左右する。またモバイル機器や自動車などの分野ではさらなる省電力化が求められており、より低い電圧振幅で通信を可能にする技術や新しいシリアルインターフェースとの競合も進んでいる。

広がる実装の可能性

LVDSは比較的実装しやすく、ボード間だけでなくケーブルを介した中長距離の通信にも耐えうる柔軟性を持つ。この特性が産業機器や医療機器など高信頼が求められる領域においても評価され、幅広いシステムで利用が拡大している。今後も高解像度映像伝送やセンサーデータのリアルタイム共有といった用途が増えていく中で、現行の高速インターフェースと共存しながら重要な位置を担い続けると考えられる。

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