ISA(Instruction Set Architecture)
ISA(Instruction Set Architecture)は、コンピュータが理解し実行できる命令の集合と、それらが処理される基本ルールを定義する、ハードウェアとソフトウェアの間のインタフェースである。ISAは、CPUが解釈する命令形式、レジスタ構成、メモリアクセス方法、例外処理などの仕様を明確化し、プログラムやコンパイラはこの抽象化レベルを前提に動作する。つまり、ISAはハードウェア実装を隠蔽しつつ、命令レベルでの互換性を提供し、異なる実装のプロセッサでも同じプログラムバイナリを実行可能にする。また、ISAはCISC、RISCなど異なる設計哲学を持つアーキテクチャスタイルを内包し、それぞれが独自の設計理念に基づいて命令集合やアドレッシングモードを構築する。
ISAの役割
ISAは、ハードウェア(プロセッサ)とソフトウェア(コンパイラ、オペレーティングシステム、アプリケーション)の接点となる仕様である。これにより、異なるマイクロアーキテクチャを持つCPU実装であっても、同一のISAをサポートすれば、同じバイナリコードが動作可能となり、ソフトウェア資産の再利用性が高まる。
ISAの要素
ISAは、命令形式(オペコードやオペランドフィールドの配置)、レジスタ数やサイズ、メモリアドレッシングモード、データ型、特権命令や割込み処理方法など、多岐にわたる事項を規定する。これらを統合的に定義することで、開発者はISA上で動作するプログラムを規格化できる。
CISCとRISC
CISC(Complex Instruction Set Computer)は、複雑で多機能な命令を多数持ち、1命令で多段階の処理を行う傾向がある。一方、RISC(Reduced Instruction Set Computer)は、命令を単純で等長な形式にまとめ、高速なパイプライン化や並列化を重視する。ISAはこれら設計哲学の違いを反映し、実行効率やプログラム記述効率などに影響を与える。
ISAとマイクロアーキテクチャ
ISAはハードウェア実装を直接限定しない。あるISAを異なるマイクロアーキテクチャで実装することができ、パイプライン化、分岐予測、スーパースカラ、アウトオブオーダー実行などの技術を用いて性能を向上できる。つまり、ISAは互換性の枠組みを提供しつつ、内部実装に関しては柔軟性を与える。
ISAの標準化と拡張性
x86、ARM、RISC-Vなど、一部のISAは標準化され、業界全体で広く採用されている。中には拡張命令セットを追加可能なISAもあり、ベクトル演算や暗号処理など特定分野の要求に応じて機能を強化できる。こうしたISAの拡張性は、専用プロセッサ開発やカスタムSoC設計において有用である。