IEC 61508
IEC 61508は、電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全を体系化した基礎規格。安全ライフサイクル、リスク低減目標、SILを定め、設計・運用・変更の段階で系統的故障と偶発的故障の管理を求める。
適用範囲と位置づけ
対象は安全関連系と要素(センサ、ロジック、アクチュエータ)。自動車のISO 26262が用いるASILではなく、本規格はSILを用いる。プロセスではIEC 61511、機械安全ではIEC 62061やISO 13849-1がIEC 61508を基盤に領域適用する。
用語と基本概念
安全関連系(SIS)は特定の安全機能(SIF)を実行し、要求時リスクを低減する。許容可能リスクはALARPで表され、リスク評価により必要SILを割り付ける。
SILとリスク低減
SILは1〜4の等級で、PFDavg(低需要)またはPFH(高需要/連続)の目標により定まる。高いSILほどアーキテクチャ、診断、テスト、プロセスの強化が求められる。
安全ライフサイクル
- コンセプトとハザード識別
- リスク評価(リスクグラフ、LOPA)とSIL割付
- SRS作成(機能・性能・診断)
- アーキテクチャ設計と実装(センサ/ロジック/最終要素)
- 検証・統合・妥当性確認
- 運用・保全と変更管理、停止・廃止
リスク評価とSIL割付
起因事象、暴露、回避可能性、重篤度を評価し、リスクグラフやLOPAで必要SILを決める。保護層の独立性を確認し、要求頻度や診断検出率、プルーフテスト間隔の仮定をPFDavg/PFHに反映する。
ハードウェア設計要求
冗長化や多様化で耐故障性(HFT)を確保し、共通原因故障はβファクタで評価する。危険側/安全側の失敗比、診断カバレッジ(DC)、安全故障分数(SFF)を満たす構成を選ぶ。
ソフトウェアとシステマティック能力
計画、レビュー、静的解析、単体〜統合テスト、MC/DCなどで系統的故障を抑制する。要素のシステマティック能力(SC)は達成可能なSILの上限を定め、ツール妥当性やコーディング規約の遵守が求められる。
安全要求仕様(SRS)の要点
- 機能:起動条件、応答、フェールセーフ動作
- 性能:SIL目標、PFDavg/PFH、診断・テスト間隔
- インタフェース:I/O、電源、通信、独立性
- 検証可能性:測定方法、受入基準、トレーサビリティ
検証・妥当性確認と独立性
検証は要件との一致を、妥当性確認は運用での適合性を示す。重要工程では独立したレビューや試験を要求する。
運用・保全・変更管理
プルーフテストで潜在化した危険側失敗を顕在化させる。バイパス等は手順化し、使用中の変更はSRSに反映させる。実績故障率の監視によりSIL維持を確認する。
適用上の留意点
- 機能の独立性を確保し、共通原因故障を設計・配置・運用で低減する。
- 診断カバレッジの過信を避け、危険未検出率とテスト間隔の相互作用を評価する。
- 分野規格へ適切にマッピングし、IEC 61508の意図を逸脱しない。
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