FTA (Fault Tree Analysis)
FTA(Fault Tree Analysis)は、故障の木解析と呼ばれ、ステムの障害や故障を分析するための手法である。品質不具合、システムの信頼性、安全性を評価することが目的とする。FTAは、機能やシステム内の潜在的な故障原因を特定し、それらがシステム全体に与える影響を評価するためのツールである。1960年代、ベル研究所(Bell Telephone Laboratories)によって開発され、工学や製造業において広く使用されている。
概要
FTA(Fault Tree Analysis 故障の木解析)の基本概念は、トップダウン方式の故障解析手法であり、製品やシステムの特定の障害(トップイベント)から出発して、その発生要因を逐次基本原因(問題を引き起こす基本の原因)まで展開し、それ以上分解できない事象(基本事象)まで掘り下げていく。このプロセスは、論理ゲート(ANDゲート、ORゲート)を用いて、個々の要因の組み合わせによってトップイベントが発生する論理構造を視覚的に示す。
故障の木解析(FTA)で現在残っている事象(可能性のある原因の選択肢)
・電源異常の誤検知
・消費電流過大
・PSCやその周辺でのショート
・PNPでのショート pic.twitter.com/m1SMhzWdsz— 大貫剛🇺🇦🇯🇵З Україною (@ohnuki_tsuyoshi) March 16, 2023
FTAの適応
FTAは、航空宇宙、原子力発電、製造業、医療機器、ITシステムなど、さまざまな産業で応用されている。例を挙げると、航空機のシステム故障のリスク評価、原子力発電所の安全性分析、製造ラインの信頼性向上、医療機器の故障リスク管理がある。日本ではトヨタ自動車が積極的に採用している。
歴史と発展
FTAの起源は1962年、当時、ベル研究所(Bell Telephone Laboratories)は、米国空軍のMinutemanミサイルシステムの安全性評価の一環としてこの手法を開発した。航空機や原子力発電所など特に安全が求められる分野で広まる。日本ではトヨタをはじめ多くの分野でFTAが採用されている。
FTAの目的
- システムの安全性評価:FTAは、システムの潜在的な危険を特定し、それに対する対策を講じるための基盤を提供する。
- 信頼性分析:システムが故障する確率を定量的に評価し、改善のための指針を示す。
- リスク管理:FTAは、リスク評価とリスク軽減のための戦略を策定するのに役立つ。
- トラブルシューティング:システムの故障原因を特定し、迅速かつ効果的な対応策を策定する。
FTAの手法とプロセス
人は、事故、障害、品質不具合、故障が発生すると、思い付きや感覚などに頼って短絡的に原因を探そうとする。しかし、そのような場当たり的な対応をしていると、その故障を起こしている直接原因を見つけ出すために無駄な時間と費用がかかる。企業によってオリジナルなノウハウがあるが、大筋、下記のような内容である。
ステップ1:トップイベントの定義
最初にFTAは分析対象のシステムにおける主要な故障事象(トップイベント)を定義する。トップイベントは、システム全体の安全性や機能に重大な影響を及ぼす。
ステップ2: 故障経路の特定
次はトップイベントから下位へと論理的に分解し原因を特定する工程である。トップイベントに至る可能性のある全ての直接的および間接的な原因を特定する。システム内の各コンポーネントやサブシステムがそれぞれが相互にどう作用されるかを詳細に分析する。ステップ3の論理ゲートの一番上に入るイベントである。
ステップ3: 論理ゲートの使用
特定された故障原因を論理ゲートを使い、複数の原因がどのように組み合わさってトップイベントに至るかを明確にする工程である。トップイベントからANDゲートやORゲートを使い展開していく。
事象記号と論理記号
フロー例
ステップ4: 定量的解析
分析結果に基づき、リスクの軽減やシステムの改良に向けた定量的解析の工程である。各基本事象の発生確率や信頼性データに基づき、トップイベントの発生確率を定量的に評価する。
メリット・デメリット
FTAは、開発の段階でシステムの故障原因を体系的に特定し可視化することで包括的な分析ができる。開発段階で行うため、開発前に早期解決することができるのが最大のメリットである。また、複雑なシステムでも対応でき、システム全体のリスク評価支援する事ができる。ただし、分析者はシステムを完全に理解することが必要で、その知識と経験に大きく依存しており極めて困難な業務となる。またリスクのすべてを網羅できるわけはなく、確率的な要素まで対応できない。多大な労力と時間がかかるため、そのコストは大きい。