FDMA|周波数を複数チャネルに分割して同時接続を実現

FDMA

通信技術の発展とともに、多数のユーザが同時に無線伝送を行う手段として多元接続の仕組みが不可欠である。なかでもFDMA(周波数分割多元接続)は、周波数帯を複数に分割して異なるチャンネルとして割り当てる方式であり、古くからセルラーネットワークをはじめさまざまな場面で利用されてきた。この手法では各ユーザに固有の周波数チャネルを与え、重ならないように帯域を割り振ることで相互干渉を最小限に抑えることができる。さらに、周波数計画を行い隣接チャネルとの分離を確保することで、通信の安定性と品質を向上させることが狙いとなる。複数の端末が同じ時間に異なる周波数を使って情報を伝送するため、タイミング制御の複雑さを軽減できる一方、周波数帯域の設計やチャネル間のガードバンド確保などがシステム全体の性能を左右する要素となる。こうした特徴から、デジタル通信の黎明期からアナログ音声通信の時代に至るまで、幅広い分野でFDMA(周波数分割多元接続)は採用されてきた。

原理

この方式の基本的な原理は、与えられた周波数帯域を複数のチャネルに分割し、それぞれのチャネルに異なるユーザを割り当てる点にある。たとえば10MHzの帯域を複数の1MHzチャネルに区切るとき、各チャネルは異なる中心周波数で運用されるため、送信信号同士が重なることはない。結果として、ユーザ間の相互干渉を抑えながら同時通信を実現できるわけである。しかし、周波数の区割りを細かくするとチャネルあたりの帯域幅が小さくなり、データレートが制限されやすい。逆にチャネル幅を広げれば帯域利用効率が下がるおそれがあり、利用可能な周波数リソースとの兼ね合いが重要となる。よって、この割り当て計画は通信用途やシステム設計の要件に応じて最適化が求められる。古典的な無線電話システムやアナログテレビの時代から、周波数帯の限界を意識した設計は通信品質と安定性を保つための基本的な考え方であった。

メリット

第一に各ユーザへ専用チャネルを割り当てることで、データ伝送量や通信内容が異なる複数の端末があっても相互の時間管理が不要であることが大きな利点である。これは、たとえばTDMAのように時間スロットを厳格に振り分ける手法と比較すると制御の簡易化につながる。第二に、チャネル間の分離が明確であるため、干渉対策が比較的取り組みやすい点が挙げられる。もちろんガードバンドをどの程度設定するかといった課題はあるが、周波数スペクトラムの合理的な配置によって複雑な信号処理を要せず実装可能な場合が多い。アナログ音声だけでなくデジタル音声やデータ通信にも応用できるため、幅広い伝送方式に合わせた設計が行われてきた経緯がある。このように、構成要素が比較的明快で実装が容易な点は、初期のセルラーネットワークから衛星通信システムまでFDMA(周波数分割多元接続)が広まった大きな理由である。

デメリット

しかし、一度割り当てられた周波数チャネルは固定されてしまうため、同時接続数が増加すると周波数リソースが不足しやすい。また、各ユーザが一定の周波数帯を独占的に利用することになるため、実使用データレートが低くてもその周波数を他のユーザと共有しにくいのが弱点である。さらに、時間的に通信要求が少ないユーザが多数存在する状況では、有効帯域が浪費される可能性が高い。システム全体としては、使用効率を高めるために周波数割り当ての柔軟化や動的な割り当てメカニズムを導入しようとすると、管理の複雑さやシステムコストが増大しがちである。このような事情により、周波数帯の有効活用が切実に求められる現代では、より効率を重視した多元接続方式が競合する状況となっている。

用途

初期のセルラーネットワークで広く用いられた背景には、アナログ技術との親和性が高く、特別な信号処理が少なくて済んだことがある。また、船舶や航空機などに設置された衛星通信設備でも、限られた周波数帯を効果的に使うためにFDMA(周波数分割多元接続)が採用されてきた。さらに、レーダーシステムやマイクロ波通信などでも類似の考え方をベースとしたチャネル割り当て方式が使われている。近年ではLTEや5Gなどの規格が登場して、OFDMAなどの洗練された手法が主流となりつつあるが、単純明快な構成と周波数設定の容易さから、特定用途やバックアップシステムとして利用される場合が少なくない。結局のところ、限られたリソースを有効活用しつつ、安定した品質を確保するという課題は、通信方式が世代を問わず抱える根本的なテーマなのである。

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