E形止め輪|E字型の薄型リングで軸を固定する締結部品

E形止め輪

E形止め輪とは、主にシャフトの溝に装着し、軸方向への動きを制限または防止するために使用される締結部品である。外観はアルファベットのEに似た形状であり、スリットが3か所に入ることで取り付け時に軸溝にスナップさせやすい構造を持つ。工作機械や自動車部品、家電製品など多様な産業分野で利用され、コストパフォーマンスに優れた小型部品ながら、振動や衝撃に対する高い保持力を備えている。取り外しや再利用も比較的容易である一方、溝幅や軸径といった寸法精度が不適切だと脱落や破損のリスクが高まるため、設計段階での正確な寸法管理が重要である。

定義

E形止め輪の定義は、主に円柱状のシャフトに設けられた溝に取り付けることで、隣接する部品の軸方向への移動を規制する機械要素である。一般的にはばね鋼を使用し、弾力を利用して軸の溝に対して弾性的に装着する構造となる。リング状とは異なるE字型の形状を有することで、取り付けがスムーズでありながら、必要十分な保持力を確保している。標準サイズが多種用意されており、市販のカタログ品から選択しやすいのも特長である。

形状と特徴

E形止め輪の外周側は円弧を基調としながらも3か所が切り欠かれた形状となっており、この切り欠き部分をの溝にはめ込むことで固定を行う。配置された3つの歯が溝の角部を押さえ込む形となり、強い摩擦力を生み出すのが特徴である。保持力に優れる一方で、取り外す際には専用のプライヤーやマイナスドライバーなどを用いれば比較的容易に取り外しが可能である。リング全体が薄板状のばね鋼からプレス加工されるため、大量生産やコストダウンがしやすく、部品管理の面でも扱いやすい。

材質と製造方法

E形止め輪に用いられる材質は、一般的に炭素鋼系のばね鋼(SK5やSUP系など)である。これに加え、耐食性が求められる環境ではステンレス鋼が選ばれる場合もある。製造工程では、まず板材をプレスで打ち抜いてE字型に成形し、その後熱処理を行いばね特性と強度を付与する。仕上げとしてはリン酸塩処理や亜鉛メッキ、黒色酸化皮膜などが施され、防錆性や耐摩耗性を高めることが多い。薄板状の材料を正確に打ち抜くため、プレス金型の精度管理が重要視され、量産向けには自動プレスラインが活用されることも少なくない。

用途

E形止め輪の用途は幅広く、自動車やバイクのギアシャフト、ベアリングの位置決め、工作機械や産業ロボットの回転軸など、多様な分野で採用される。軽量かつ薄型であるため、部品全体の寸法を大きく変えずに確実な位置固定を行うことができる。例えば、組み立て工数を減らしたい量産品の製造ラインで特に有用であり、低コストで大量に使われるケースが多い。一方で、高速回転や衝撃が繰り返される条件下でも安定した保持力を示すため、強度とコストパフォーマンスを両立した締結部品として重宝されている。

取り付け方法

E形止め輪の取り付けは、専用のEリングプライヤーやピンセットを使い、切り欠きの一部を拡げながら軸の溝にはめ込むのが一般的である。ドライバーなどでも可能だが、溝に対して斜めに力を加えるとリングが変形したり飛散したりする場合があるため、安全と作業効率を考慮して専用工具が推奨される。取り外し時は溝の背面側からツールを差し込み、リングの一部を押し出すようにして外す方法が多い。組み立てや分解が容易な反面、何度も繰り返すとばね鋼が金属疲労を起こして歯部が折損する恐れがあるため、定期的な交換や検査が必要となる。

活用上の注意点

E形止め輪を用いる際には、溝幅や軸径などのサイズが規格に合致しているかを確認することが欠かせない。溝幅が狭いと圧入が過度に強くなり、リングが変形するリスクが高まる一方、溝幅が広すぎると強度が不足して外れる可能性もある。また、軸端部のバリや傷があると取り付け時にリングが損傷するおそれがあるため、事前の面取り加工や清掃を徹底することが望ましい。さらに、高温や腐食性のある環境下では適切な表面処理や耐久性に優れた材料を選定することで、安全性と信頼性を確保することができる。

E形止め輪(単位 ㎜)0.8-24

E形止め輪の参考値は下記のとおりである。詳細はJISやisoなどの標準規格やメーカカタログを見ること

E形止め輪

呼び 止め輪 適用する軸
(参考)
呼び d D H t b
d₁ d₂ m n
最小
0.8 0.8 2 0.7 0.2 0.3 1をこえ1.4以下 0.82 0.3 0.4
1.2 1.2 3 1 0.3 0.4 1.4をこえ2以下 1.23 0.4 0.6
1.5 1.5 4 1.3 0.4 0.6 2をこえ2.5以下 1.53 0.5 0.8
2 2 5 1.7 0.4 0.7 2.5をこえ3.2以下 2.05 0.5 1
2.5 2.5 6 2.1 0.4 0.8 3.2をこえ4以下 2.55 0.5 1
3 3 7 2.6 0.6 0.9 4をこえ5以下 3.05 0.7 1
4 4 9 3.5 0.6 1.1 5をこえ7以下 4.05 0.7 1.2
5 5 11 4.3 0.6 1.2 6をこえ8以下 5.05 0.7 1.2
6 6 12 5.2 0.8 1.4 7をこえ9以下 6.05 0.9 1.2
7 7 14 6.1 0.8 1.6 8をこえ11以下 7.10 0.9 1.5
8 8 16 6.9 0.8 1.8 9をこえ12以下 8.10 0.9 1.8
9 9 18 7.8 0.8 2.0 10をこえ14以下 9.10 0.9 2
10 10 20 8.7 1.0 2.2 11をこえ15以下 10.15 1.15 2
12 12 23 10.4 1.0 2.4 13をこえ18以下 12.15 1.15 2.5
15 15 29 13.0 1.5
(1.6)
2.8 16をこえ24以下 15.15 1.65
(1.75)
3
19 19 37 16.5 1.5
(1.6)
4.0 20をこえ31以下 19.15 1.65
(1.75)
3.5
24 24 44 20.8 2.0 5.0 25をこえ38以下 24.15 2.2 4
呼び 止め輪 適用する軸
(参考)
呼び d D H t b
d₁ d₂ m n
最小

dの測定には円筒形のゲージを用いる。
受渡当事者間の協定により、t1.6としてもよい。ただし、そのときmは1.75とする。

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