DRBFM(Design Review Based on Failure Modes)
DRBFM(Design Review Based on Failure Modes)とは、故障に基づく設計審査で、トヨタが開発した品質不具合の未然防止手法である。製品設計の初期段階で市場での使用方法を確認し、潜在的な失敗モード(Failure Modes)を特定し、リスクを未然に抽出する。設計の「変更点」や、製品が使われる環境や仕向地などの「変化点」に着目し、徹底的に議論することが重要である。
DRBFMの目的
DRBFMの主な目的は潜在的な失敗モードの特定、設計の改善、品質の向上である。潜在的な失敗モードの特定とは、製品やシステムがどのように失敗する可能性があるかを予測し、その原因と影響を分析する。設計の改善とは、特定された失敗モードに基づき、設計上の改善策を検討・実施する。品質の向上とは、失敗モードの事前対策することで、製品の品質と信頼性を向上させる。
トヨタにおけるDRBFMの位置づけ
DRBFMはトヨタが開発した品質管理ツールである。新製品の開発時には社内関係部門だけでなく部品メーカーも交えて議論される。
GD4
DRBFMの哲学は、GD3(Good Design, Good Discussion, Good Dissection)の3つの概念に重点を置いている。優れた設計(Good Design)、優れた議論(Good Discussion)、優れた観察(Good Dissection)を通じて改善・改良を進めていく。
DRBFMのメリット
- 早期問題発見:設計段階で潜在的な問題を発見し、対策を講じる。
- 品質の向上:事前に失敗モードを特定し、対策を講じる
- コスト削減:問題発生後の修正コストやリコールコストを削減
- 顧客満足度の向上:高品質な製品
DRBFMのプロセス
DRBFMでは、実施設計の変更点や条件・環境の変化点に着眼した懸念事項に関する事前検討を設計者が行った上で、さらにデザインビュー(DR)を通して、設計者が気づいていない懸念事項を洗い出す。この結果得られる改善などを設計や評価、製造に反映することにより、問題の未然防止を行う。流用元があるときは流用元と比較して抽出する。
DRBFMのワークシート
DRBFMでは、設計者が設計の根拠や変更点、心配点を記入するワークシートが用いられる。一般的に「変更点・変化点」「目的」「役割」「心配点」「要因」「影響」「設計」「評価」といった欄があり、これらを基に積極的な議論が進められる。
設計の変更点の特定
設計変更が行われる際に、まず、設計変更点を特定し、その変更が他の部分にどのような影響を及ぼすかを考慮する。機能だけでなく性能も含めて議論を進める。責任者や設計者など比較的小さなチーム内で行われることが多い。
変更点に関する議論
設計者、製造、保守、生産技術、品質管理、検査担当者など、関連するすべての部門が参加し、変更点に関する詳細な議論を行い、変更点について深く掘り下げる。この時点で問題をクリアーしておくことで、後工程で効率のよいフローが実現できる。
失敗モードの特定と分析
ワークシートに基づいた議論を通じて、設計変更によって引き起こされる可能性のある失敗モードを特定する。これには、変更点がどのように製品全体に影響を及ぼすか、どのような条件下で失敗が発生するかを考慮する。流用元がある場合は過去の類似する部品の故障モードや要因の調査を行う。
改善策の検討と実施
特定された失敗モードに対する改善策を検討・実施する。設計の変更、材料の見直し、製造プロセスの改善などが含まれる。
DRでのフィードバック
最後に、DR(デザインビュー)を実施し、改善策の効果を評価し、フィードバックをもとにさらに改善を行う。特に設計者が気づいていない故障モードの議論を中心に行うべきである。ここのサイクルを継続的に繰り返すことで、品質向上を行う。
DRBFMの注意点
DRBFMは、設計変更が大きすぎると障害原因になる可能性があるため、少しずつ行われることが推奨される。変更が速すぎると障害が発生する可能性が高まる。変更を可視化し、設計の根拠について詳細に議論することで、品質トラブルを未然に防ぐことができる。