C形穴用同心止め輪|穴にスナップして同心度を保つ薄型留め輪

C形穴用同心止め輪

C形穴用同心止め輪とは、筒状または平板状の部品に穿孔された穴に装着し、穴の内周面に沿って固定することによって位置決めや保持を行うための締結部品である。C字型に切り欠かれた形状を持ち、内径側でしっかりと噛み合う構造が特徴であり、自動車部品や工作機械、家電製品など広範な分野で使用されている。スナップリングの一種として分類されるが、同心度の高い取り付けが可能で、取り付けや取り外しが容易であることから、メンテナンス性を重視する現場でも多用されている。薄型のばね鋼製品が多く、部品コストを抑えつつ振動や衝撃に耐える保持力を持つ点が注目される。

定義

C形穴用同心止め輪の定義としては、リング状のばね鋼をC字型に加工し、板や筒などに空けられた穴の内径にスナップさせることで位置固定を行う機械要素を指す。ほかの穴用止め輪と同様に、部品が穴の外側へ抜け落ちるのを防止したり、回転軸を安定させたりする役目を持つ。名前に「C形」とあるように、円形の一部を切り取った構造になっており、この切り欠き部分が取り付け時の弾性変形を担うことで確実な固定力を得られる仕組みになっている。

形状と特徴

C形穴用同心止め輪は、円弧の一部が切り離されたC字型の金属板で構成される。内径側は取り付け対象の穴と密着しやすいよう、丸みを帯びたエッジ処理が行われているケースもある。同心度が高く保たれる設計であるため、部品の回転バランスや位置精度に良好な影響を与える点が注目される。外周部に爪や突起を設ける場合もあり、挿入時のガイドや取り外しの際の把持点として機能する。形状がシンプルである一方、厚みや幅にわずかな変更を加えるだけで保持力や取り付け難易度が大きく変化するため、製品ごとの寸法規格が豊富に存在する。

材質と製造方法

C形穴用同心止め輪の材質には、主に炭素鋼系のばね鋼(SK材やSUP材など)が採用される。これは弾性に優れ、加工後の熱処理によって高い強度と保持力を得られるためである。また、腐食環境や高温下での使用を想定する場合にはステンレス鋼を選択することも多い。製造工程としては、まず薄いばね鋼板をプレスでC字型に打ち抜き、続いて熱処理と研磨加工を施すことで所定の硬度と仕上げ精度を確保する。表面処理としてはリン酸塩処理や亜鉛メッキ、黒色酸化被膜などが挙げられ、耐食性や耐摩耗性の向上に寄与する。

用途

C形穴用同心止め輪の用途は幅広く、自動車や二輪車のブレーキ系統、クラッチ機構、工作機械のシャフト支持部、家電製品のローラー固定部など、多岐にわたる。特に回転や摺動が伴う箇所においては、安定した保持力と軽量性を両立するために重宝されている。穴用であるため、軸用止め輪に比べて回転の中心を厳密に保持する必要がある状況でも同心度を高めやすい利点がある。コスト面でも大量生産が可能なプレス加工品であるため、安価かつ大量に生産され、様々なサイズが手軽に入手できるメリットがある。

取り付け方法

C形穴用同心止め輪は専用のプライヤーや特殊工具を用い、C字の開口部を一時的に広げながら穴の内周部に挿入する。取り付ける際は、穴の寸法精度が適正かどうか、そしてエッジ部分のバリや傷が除去されているかが重要である。誤った姿勢で強引に押し込むと止め輪が変形したり、飛散して怪我や破損に繋がる恐れがある。取り外しの際には、同じくプライヤーやドライバーでC字の一端を持ち上げるようにして外す方法が一般的であるが、繰り返しの着脱によって金属疲労が進行すると弾性や保持力が低下する可能性があるため注意が必要となる。

選定と保守

C形穴用同心止め輪を選定する際は、穴径との適合性や必要な保持力、使用環境を総合的に検討する。大きな振動が発生するアプリケーションでは厚みや材質を吟味し、動作温度が高い場合は耐熱性に優れる材料を選択する必要がある。定期的に点検を行い、摩耗や損傷、金属疲労による割れなどが見られた場合は早急に交換することが望ましい。設計時には安全率を考慮して少し余裕のある寸法規格を選ぶことが事故防止と製品寿命の延長につながる。

活用上の注意点

C形穴用同心止め輪を効果的に活用するためには、取り付け対象の穴径や厚み、面取り処理などが規格通りであることを確認することが不可欠である。工具の誤使用による変形や傷の発生、またばね鋼特有の反発力による飛散事故に注意しながら着脱を行うことが大切となる。特に高速回転部や高負荷が想定される箇所では、振動試験や耐久試験を実施し、設計段階でリスク評価を行うことで長期的に安定した性能を確保できるようになる。

C形軸用同心止め輪(単位 ㎜)20-68

C形穴用同心止め輪

呼び 止め輪 適用する穴(参考)
1 2 d₃ t b r d₁ d₂ m n最小
20 21.3 1 2 0.3 20 21 1.15 1.5
22 23.3 1 2 0.3 22 23 1.15 1.5
25 26.7 1.2 2 0.3 25 26.2 1.35 1.5
28 29.9 1.2 2 0.3 28 29.4 1.35 1.5
30 31.9 1.2 2 0.3 30 31.4 1.35 1.5
32 34.2 1.2 2 0.3 32 33.7 1.35 1.5
35 37.5 1.5(1.6) 2.8 0.5 35 37 1.65(1.75) 2
37 39.5 1.5(1.6) 2.8 0.5 37 39 1.65(1.75) 2
40 43.1 1.75 3.5 0.7 40 42.5 1.9 2
42 45.1 1.75 3.5 0.7 42 44.5 1.9 2
45 48.1 1.75 3.5 0.7 45 47.5 1.9 2
47 50.1 1.75 3.5 0.7 47 49.5 1.9 2
50 53.8 2 4 0.7 50 53 2.2 2
52 55.8 2 4 0.7 52 55 2.2 2
55 58.8 2 4 0.7 55 58 2.2 2
56 59.8 2 4 0.7 56 59 2.2 2
62 65.8 2 4 0.7 62 65 2.2 2
63 66.8 2 4 0.7 63 66 2.2 2
68 72.1 2.5 5 0.7 68 71 2.7 2.5
呼び 止め輪 適用する穴(参考)
1 2 d₃ t b r d₁ d₂ m n最小

※本寸法は目安であり、正確の形状はJISやISO、メーカーカタログを参考すること。
呼びは1欄のものを優先し、必要に応じて2欄の順とする。
受渡当事者間の協定より、t1.6としてもよい。ただし、そのときmは1.75とする。

C形穴用偏心止め輪(単位 ㎜)72-200

C形穴用同心止め輪

呼び 止め輪 適用する穴(参考)
1 2 d₃ t b r d₁ d₂ m n最小
72 76.1 2.5 5 0.7 72 75 2.7 2.5
75 79.1 2.5 5 0.7 75 78 2.7 2.5
80 85 2.5 5 0.7 80 83.5 2.7 2.5
85 90 3 6 0.7 85 88.5 3.2 3
90 95 3 6 0.7 90 93.5 3.2 3
95 100 3 6 0.7 95 98.5 3.2 3
100 105 3 6 0.7 100 103.5 3.2 3
105 111.2 4 8 1.2 105 109 4.2 4
110 116.2 4 8 1.2 110 114 4.2 4
115 121.2 4 8 1.2 115 119 4.2 4
120 126.3 4 8 1.2 120 124 4.2 4
125 131.5 4 8 1.2 125 129 4.2 4
130 136.5 4 10 1.2 130 134 4.2 4
140 146.5 4 10 1.2 140 144 4.2 4
150 157.5 4 10 1.2 150 155 4.2 4
160 167.7 4 10 1.2 160 165 4.2 4
170 178.2 4 10 1.2 170 175 4.2 4
180 188.2 4 10 1.2 180 185 4.2 4
190 198.2 4 10 1.2 190 195 4.2 4
200 208.2 4 10 1.2 200 205 4.2 4
呼び 止め輪 適用する穴(参考)
1 2 d₃ t b r d₁ d₂ m n最小

※本寸法は目安であり、正確の形状はJISやISO、メーカーカタログを参考すること。
呼びは1欄のものを優先し、必要に応じて2欄の順とする。
受渡当事者間の協定より、t1.6としてもよい。ただし、そのときmは1.75とする。

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