BIST|回路に組み込まれた自己テスト技術

BIST

半導体などの集積回路の大規模化に伴い、故障検出や信頼性の向上を図る技術として注目されているのがBISTである。これはBuilt-In Self Testの略称であり、回路内部にテスト機能を組み込み、外部の測定器に依存せずに故障箇所を特定できる仕組みを指す。従来は外部テスターを使い大量の検証時間を費やしていたが、BISTを活用することで効率的かつ自動的にエラーを検知し、低コストでの品質保持を実現可能にする技術として広く採用されている。

歴史的背景

BIST技術の原型は、1970年代頃から大型システムの自己診断プロセスとして研究が始まった経緯がある。当時は回路規模が比較的小さかったために外部テスターで十分対応可能であったが、集積度の向上や故障モードの多様化に伴ってテストの負荷が急増した。そこで内部に検査ロジックを組み込むという発想が生まれ、徐々に具体化されていった歴史がある。

基本構成

一般的なBISTの構成要素としては、パターン生成回路、出力応答解析回路、そして制御用のシーケンサが挙げられる。パターン生成回路は擬似乱数や特定パターンを生成し、テスト対象の回路に与える役割を担う。出力応答解析回路は、テスト後の信号を圧縮し特定のシグネチャとして評価する機能を持つ。これらをまとめて管理するシーケンサが存在することで、全体として効率的なテスト工程を確立する。

テスト方法の種類

内部に搭載されるテスト手法には複数のバリエーションがあるが、大きく分けるとオンラインテストとオフラインテストに区別される。オンラインテストは回路が稼働中に常時チェックを行う方式であり、不具合をリアルタイムに検出してシステムの停止を最小化できる。一方のオフラインテストは、回路停止時に集中的にテストを実施し、高精度な故障検出を可能にする方式である。

設計上の考慮事項

BISTを導入するには、設計時から回路領域の追加やレイアウトの最適化などを考慮する必要がある。パターン生成回路や応答解析回路を組み込むことで、チップ面積や消費電力に影響を与える可能性があるため、システム全体のトレードオフを検討することが欠かせない。さらに、実装の可視性を高めるために、デバッグポートの設置や検査結果の記録メカニズムを備えることも推奨される。

利点

BISTを活用する最大の利点は、外部テスターへの依存度を下げながらテスト効率を高められる点にある。量産段階での歩留まり管理が向上し、製品の信頼性を保ちつつ生産コストを削減しやすくなる。また回路内部で自己診断が可能なため、フィールドでの故障検出にも応用できる。例えば動作中の異常を素早く検知し、必要に応じて予防保守を実施することで、ダウンタイムを最小化できる可能性がある。

課題

一方、BISTを組み込むことは回路規模の拡大や追加の開発工数を伴うため、設計段階でのコストがかさむことが懸念点となりうる。さらにテストパターンの設計が不十分であると、誤検知や検出漏れが起きる恐れがある。複雑な回路構成を抱える大規模チップでは、テスト時間の長期化やテストパターンの生成アルゴリズムの最適化が課題となり、BISTの導入効果を十分に得るためには高度な設計ノウハウを要する。

応用分野

BISTは一般的にLSIASICなどの集積回路分野での利用が多いが、近年ではFPGAやSoCなどのプログラマブルデバイスにも広がりを見せている。さらには自動車や航空宇宙などの高信頼性分野、医療機器などの安全が重視される領域でも自己診断の仕組みが求められている。こうした分野で故障箇所を迅速に特定し、システム停止を最小限に抑える技術基盤として、BISTは今後も重要度を増していくと考えられる。

導入事例

実際に大手半導体メーカーでは、高性能プロセッサやメモリなどの開発に際して早期からBISTを組み込み、歩留まり向上に寄与した報告例が存在する。特にDRAMSRAMのセル特性を素早くチェックできる機能を搭載することで、不良品を効率的に選別できるだけでなく、限界動作の把握にも役立てている。こうした事例は他の集積回路製品にも波及し、BISTの利用範囲が拡大している現状がうかがえる。