リンク
リンク(節)とは、機械の中で互いに接触しながら力や運動を伝達する棒状の部材である。複数のリンクを対偶(ジョイント)で連結したものを連鎖と呼び、これが一定の拘束条件を満たすとリンク機構として機能する。用語はJIS B 0102(機械要素・機構用語)に定義されており、機構学では「節」の訳語が当てられる。建設機械のバケット駆動、内燃機関のピストン・クランク系、産業用ロボットのアームなど、回転運動と直線運動・揺動運動を相互に変換する場面で不可欠な要素となっている。歯車やカムと並ぶ基本的な動力伝達要素でありながら、構造が単純で軽量・低コストに仕上がる点が特徴である。
リンクの歴史的背景
リンクを用いた運動変換の記録は古く、12世紀の技術者アル・ジャザリが揚水ポンプにクランク要素を図示したことが知られている。近代機構学としての体系化は18世紀以降で、1784年にジェームズ・ワットが蒸気機関の直線案内のために考案した平行リンク(ワットリンク)は有名である。日本国内では明治期の紡績機械や足踏みミシンを通じて四節連鎖の応用が広がった。今日ではCADによる機構解析が普及したが、リンク長の比率で運動特性が決まるという原理そのものは200年以上変わっていない。
リンクの種類
リンクは材質と剛性の観点から三つに大別される。列挙すると剛節・可とう節・流体節であり、それぞれ性質が異なる。剛節は鋼やアルミ合金など変形しない剛体として扱えるリンクで、機構解析の対象は原則としてこれである。可とう節はロープ・チェーン・ベルトのように引張方向にのみ力を伝える柔軟なリンク、流体節は油圧シリンダ内の作動油のように流体を介して力を伝えるリンクを指す。運動上の役割による分類もあり、静止節に対して360°完全回転するリンクをクランク、限られた角度範囲で往復揺動するリンクをてこ(レバー、ロッカー)と呼ぶ。
連鎖と自由度
リンクを回り対偶で連結した連鎖のうち、実用上の基本となるのは三節・四節・五節の三種類である。三節連鎖は1本を固定すると残りが動けない静定構造で、トラスのような骨組として扱われる。四節連鎖は1本のリンクの位置が決まれば残り全部の位置が定まる1自由度の限定連鎖であり、機械が「決まった運動を正確に繰り返す」ために最も多用される。五節連鎖は2自由度の不限定連鎖で、二つの入力を与えて初めて姿勢が確定する。六節以上は運動が複雑化するため、特殊な軌跡生成を除いて採用例は少ない。四節連鎖の回転可能性はグラスホフの条件で判定でき、最短リンク長s、最長リンク長l、残る2本をp・qとするとき、s+l≦p+qを満たせば少なくとも1本のリンクが完全回転できる。
代表的なリンク機構への展開
四節連鎖はどのリンクを静止節に選ぶかで性格が変わる。てこクランク機構はミシンの足踏み機構、両クランク機構は船の水かき機構、両てこ機構は扇風機の首振り機構に応用されてきた。てこクランク機構の揺動リンクをスライダに置き換えたものが往復スライダクランク機構であり、自動車のエンジン本体やプレス機で往復運動と回転運動の変換を担っている。対向するリンク長を等しくした平行クランク機構は、クレーンの水平引込機構やドラフタに利用される。逆転防止が必要な箇所ではリンク系とラチェットを組み合わせる設計も一般的である。
設計・実務上の注意点
リンク機構の性能を左右するのが伝達角である。カップラと従動リンクのなす角が90°に近いほど力の伝達効率は高く、実務では作動範囲全域で伝達角を40〜50°以上に保つことが目安とされる。これを下回るとジョイント部の摩擦負荷が急増し、逆駆動不能や座屈的な挙動(トグル現象)を招く。対偶部のガタも無視できない。ピンとブッシュのすきまは一般に0.02〜0.1mm程度に管理されるが、多段リンクではガタが累積して先端位置精度を悪化させるため、ベアリング入りジョイントの採用や予圧構造で対処する。コスト面では、同じ運動をカム機構で実現する場合に比べ、リンク機構は輪郭研削が不要なぶん加工費を3〜5割程度抑えられるケースが多い一方、任意の複雑な変位曲線の再現には向かないという使い分けが現場の定石である。締結部の緩みは事故に直結するため、ねじの緩み止めや定期的な給脂も欠かせない。
応用分野
応用範囲は広い。油圧ショベルではブーム・アーム・バケットリンクが直線的なシリンダ推力を回転運動へ変換し、掘削力を増幅している。トグル機構を用いた射出成形機の型締装置では、リンクの倍力作用により数百kNの入力から10000kN級の型締力を発生させる例もある。自動車分野ではサスペンションのマルチリンク方式、鉄道分野ではパンタグラフの平行リンクが代表的である。動力の断続を行うクラッチやブレーキの操作系にもリンクは組み込まれており、モータやアクチュエータの発達した現在でも、確実性と応答性を要する箇所では機械式リンクが選ばれ続けている。
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