Vプーリー
Vプーリーとは、断面が台形のVベルトを掛けて動力を伝達するためのベルト車である。外周にV字形の溝を持ち、ベルトが溝にくさび状に食い込むことで両側面に大きな摩擦力が発生し、平ベルト方式に比べて滑りの少ない伝動を実現できる。材質は一般にねずみ鋳鉄(JIS G 5501のFC200~FC250)が用いられ、高速用途では鋳鋼、軽量化が必要な場合にはアルミニウム合金が選ばれる。寸法や溝形状はJIS B 1854(一般用Vプーリ)などで規格化されており、モータから機械への減速伝動、送風機、ポンプ、農業機械、工作機械まで、産業界で最も使用頻度の高い伝動部品のひとつである。日本では1950年にメーカー標準品としてシリーズ化されて以来、標準部品として流通している。
溝角度の原理
Vベルトの断面角度は40°に統一されている。ところが、ベルトがプーリーに巻き付いて曲げられると、断面の外側は幅が狭まり、内側は広がるため、実際の側面角度は40°より小さくなる。この変形を見込んで、Vプーリーの溝角度はベルト角度より小さい34°~38°に設定されている。溝角度はプーリーの呼び径によって使い分けられ、径が小さいほどベルトの曲げ変形が大きくなるため、小径では34°、中径では36°、大径では38°が適用される。この設計により、ベルト側面が溝の両側面に均等に密着し、くさび効果による摩擦伝動が最大限に発揮される。溝底とベルトの間には隙間を残すのが原則である。ベルトが溝底に接触して座り込むと、側面の食い込みが失われて伝達能力が急激に低下するためである。
溝形の種類とJIS規格
一般用Vベルトの溝形は、断面の小さい順にM・A・B・C・D・Eの6種類が規定されている。M形は電動時のベルト1本あたりの伝達容量が小さく家電や小型機器用、A形・B形は汎用機械の大半をカバーし、C形以上は大型送風機や圧縮機などの重負荷用途に使われる。細幅Vベルト用にはJIS B 1855で規定される3V・5V・8Vの溝形があり、同じ伝達容量ならプーリー幅を約30%小さくできるため、装置の小型化に有利である。溝形ごとの主な使い分けを以下に示す。
| 溝形 | 適用ベルト | 主な用途 |
|---|---|---|
| M・A形 | 一般用Vベルト(小断面) | 家電、小型ポンプ、農機 |
| B・C形 | 一般用Vベルト(中断面) | 送風機、コンベヤ、工作機械 |
| D・E形 | 一般用Vベルト(大断面) | 大型圧縮機、破砕機 |
| 3V・5V・8V形 | 細幅Vベルト | 省スペースの産業機械全般 |
材質と製造方法
標準的なVプーリーは鋳造で素形材を作り、旋盤で溝・外周・軸穴を切削して仕上げる。ねずみ鋳鉄が主流である理由は、振動吸収性(減衰能)と耐摩耗性に優れ、複雑なアーム付き形状でも安価に量産できるためである。ベルト速度が30m/sを超える高速用途では、遠心力による破壊を避けるため強度の高い鋳鋼製を用いる。アルミ製は慣性モーメントが小さく、起動停止の多いOA機器や軽負荷装置に適する。溝側面の表面粗さはベルト寿命に直結し、粗すぎればベルトを摩耗させ、逆に鏡面に近すぎるとスリップの原因になるため、適度な仕上げ面の管理が必要である。なお、多溝プーリーでは各溝の径差がベルト間の張力不均一を生むため、メーカーでは外周の不釣合い質量をプーリー質量の0.2%または3g以内に管理するなど、バランス精度が品質の指標とされている。
軸への取付け
プーリーは回転体であるから、軸への確実な固定が不可欠である。伝統的な方法は軸穴にキー溝を加工し、キーによってトルクを伝える方式で、止めねじを併用して軸方向の移動を拘束する。近年はテーパブッシング式が普及しており、軸穴とキー溝加工済みのブッシングをプーリーにねじ込むだけで、六角レンチ1本での着脱と焼きばめ相当の締結力が得られる。在庫のブッシングを交換すれば異なる軸径にも対応できるため、納期短縮と保守性の面で実務上のメリットが大きい。取付け時に重要なのがアライメント調整である。原動側と従動側のプーリーの溝位置がずれていると、ベルトの片側面だけが摩耗して寿命が数分の一に短縮するため、定規やレーザー式アライメントツールで一直線に揃える。
運用と点検
溝の摩耗判定
長期運転したプーリーは溝側面が摩耗して広がり、新品ベルトに交換しても本来の伝達力が出ない状態に陥る。目安として、ベルト上面が溝の外周より沈み込んで見える場合や、溝ゲージを当てて隙間が確認できる場合は、ベルトではなくプーリー側の交換時期である。現場では「ベルトを替えてもすぐ滑る」という症状の原因が摩耗した溝にあるケースが多く、ベルト交換2~3回に対してプーリー点検1回を組み合わせると無駄な部品コストを抑えられる。
張力管理
張力不足はスリップと発熱を招き、過大な張力は軸受の早期損傷につながる。ベルトスパン中央を押してたわみ量を測定する方式が簡便で、スパン長100mmあたり1.6mm程度のたわみを基準に調整するのが一般的である。新品ベルトは初期伸びが生じるため、運転開始から24~48時間後に再調整することが推奨される。
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