オルダムカップリング|偏心軸を許容する三枚構造の軸継手

オルダムカップリング

オルダムカップリング(Oldham coupling)とは、平行にずれた2本の回転軸の間で動力を伝達するための軸継手であり、2個のハブと1個のスライダ(中間ディスク)から構成される機械要素である。ハブとスライダは互いに直交する凸部と溝でかみ合い、スライダが半径方向に摺動することで偏心を吸収する。1820年代にアイルランドの技術者ジョン・オルダムが蒸気船の外輪駆動機構のために考案した構造に由来し、200年を経た現在もFA装置やサーボモータの軸連結に広く採用されている。3部品が分離できるため組み付けが容易で、リジッドカップリングと並んで低コストな点も普及の背景にある。

構造と動作原理

オルダムカップリングは、駆動側ハブ・スライダ・従動側ハブの3部品で成立する。各ハブの端面には直線状の凸部(またはキー溝)が設けられ、スライダの表裏には互いに90°ねじれた位相で溝が加工されている。駆動軸が回転するとトルクはハブの凸部からスライダへ、そしてもう一方のハブへと伝わる。ここで両軸に偏心があると、スライダは回転1周につき2回、直交する2方向へ往復摺動しながら回転を伝える。スライダの中心は両軸心を結ぶ線分の中点を半径とする円軌道を、軸回転数の2倍の角速度で描く。この幾何学的性質により、ユニバーサルジョイントのような角速度変動を生じず、入力と出力の回転が完全に等速となる点がオルダム機構の本質である。かみ合いが面接触であるため単位体積あたりの伝達トルクが大きく、外径20mm程度の小型品でも定格1〜3N・m級を確保できる。

他のカップリングとの比較

たわみ軸継手には多くの方式があり、吸収できるミスアライメントの種類と量が異なる。オルダムタイプの最大の強みは偏心(平行ずれ)の許容量であり、外径30mm前後のクラスで0.5〜2mm程度と、ディスクタイプ(同クラスで0.1〜0.2mm程度)の数倍から10倍に達する。摺動によってずれを逃がすため偏心反力が小さく、軸受への負担を軽減できるのも特長である。主要方式の傾向を下表に示す。

方式 偏心許容 バックラッシ 特徴
オルダムタイプ 大(0.5〜2mm級) 樹脂スライダでゼロ化可能 低反力・低コスト・分解可能
ディスクタイプ 小(0.1〜0.2mm級) なし 高剛性で位置決め精度に優れる
スリットタイプ 小〜中 なし 一体構造で慣性が小さい
ジョータイプ 中 予圧構造でほぼなし 振動・衝撃の吸収に優れる

材質と使用条件

ハブにはアルミニウム合金(A2017など)やステンレス鋼が用いられ、スライダにはポリアセタール(POM)やナイロンといったエンジニアリングプラスチックが標準的である。樹脂スライダに予圧を与えた製品ではバックラッシがゼロとなり、ステッピングモータやエンコーダの連結に適する。ただし樹脂の耐熱性が使用温度を制約し、POMスライダ品の許容温度はおおむね−20〜80℃にとどまる。金属スライダ品はこれより高温・高トルクに対応するが、摺動面への給脂が必要になる。軸への締結はセットスクリュータイプとクランピングタイプが主流で、軸径はφ3〜φ32程度まで各社が標準品を展開している。スライダが電気絶縁体を兼ねるため、モータからの迷走電流を遮断してセンサ側を保護できる副次的な利点もある。

主な用途

代表的な用途は、サーボモータとボールねじや送りねじを連結する位置決め軸である。組立時の芯出しに時間をかけられない量産設備や、フレームの熱変形で偏心が経時的に変化する装置では、偏心許容量の大きいオルダムタイプが選ばれやすい。3部品が分離する構造は保守面でも有利に働く。装置に両軸を固定したままスライダだけを差し替えられるため、モータ交換時に軸継手全体を外す必要がなく、段取り時間を短縮できる。実務では、ディスクタイプより2〜4割安い価格帯であることから、剛性要求が極端に高くない搬送装置や検査装置で標準採用し、繰返し位置決め精度が数μm単位で問われる軸のみディスクタイプに切り替える、という使い分けが一般的である。

選定・運用上の注意点

摺動で偏心を吸収する構造上、スライダの摩耗は避けられない。摩耗が進むとかみ合い部に隙間が生じ、バックラッシゼロの性能は失われる。偏心量が大きいほど摺動距離と発熱が増えるため、カタログの許容偏心はあくまで上限値と捉え、実機では許容値の1/3以下に芯出しするのが寿命確保の目安となる。高速回転にも注意を要する。スライダは回転中に遠心力と往復慣性力を受けるため、許容回転速度は同サイズのディスクタイプより低く設定されている製品が多い。トルク選定では、負荷変動を見込んで必要トルクに1.2〜1.5倍の安全率を乗じるのが通例である。なお、スライダが軸方向に拘束されない構造のため、押し引きの力(スラスト荷重)を伝える用途には適さない点も設計段階で確認しておくべき事項である。

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