スーパーチャージャー
スーパーチャージャーは機械式の過給機であり、クランクシャフトからベルトやギヤで直接駆動され、吸気を強制的に圧縮してシリンダーへ送り込む装置である。排気エネルギーを利用するターボチャージャーに比べ、アクセル操作に対する応答が鋭く、低回転域から高い過給を得やすい一方、機械的損失による出力吸収(パラサイトロス)が生じるのが特徴である。代表的な形式にはルーツ式、スクリュー(リショルム)式、遠心式があり、流量特性や熱効率、騒音特性が異なる。過給圧はプーリー比とバイパスバルブ制御で調整し、吸気温上昇に対しては空冷もしくは水冷のインタークーラで対策する。
原理と種類
原理は吸気の体積効率を高め、シリンダー内の新気質量を増やすことで有効平均有圧とトルクを向上させる点にある。ルーツ式は二葉や三葉ロータを同期ギヤで回転させ、正味の容積移送で脈動の少ない大流量を実現する。スクリュー式は雄雌ロータのねじれ溝で連続的に圧縮し、断熱効率が高く吸気温上昇を抑えやすい。遠心式はインペラで動圧化した空気をディフューザで静圧化し、高回転域で高過給を得るが低回転のブーストは小さくなりがちである。
構成要素
- コンプレッサーハウジング:流路形状とクリアランスが効率と騒音を左右する。
- ロータ/インペラ:アルミ合金や高強度鋼で製作され、表面コーティングで摺動損失と摩耗を低減する。
- ドライブプーリー・ベルト・テンショナー:プーリー径で過給圧傾向を定め、ベルト張力でスリップを防ぐ。
- 同期ギヤ(容積式):ロータ位相を保持し、接触回避と気密を実現する精密要素である。
- バイパスバルブ:部分負荷時のポンピングロスと吸気昇温を抑えるため、圧縮前後を迂回させる。
- インタークーラ(空冷/水冷):吸気温を低下させノッキング抑制と充填効率改善に寄与する。
- ベアリング・シール:高速回転を支える玉/ころ軸受と、ブローバイやオイル漏れを防ぐシールで構成する。
性能特性と利点・欠点
利点は、低回転からの即応性と広い実用域でのトルク増強である。特に都市走行や牽引条件において扱いやすい。欠点は機械駆動による出力吸収と、それに伴う燃費悪化の可能性である。断熱効率の面ではスクリュー式が有利で、ルーツ式は構造簡潔・大流量に強み、遠心式は高回転高効率である。吸気温上昇はノッキングや排ガス温上昇を招くため、点火時期やEGR、インタークーラ容量との総合設計が重要となる。
設計と制御
過給制御はプーリー比とバイパス制御の組合せが基本で、ECUはスロットル開度、過給圧、吸気温、ノック信号に応じて点火・燃料・バルブタイミングを統合補正する。電子スロットルと連携したフィードフォワード制御により、要求トルクに対する遅れを抑制しつつ過給過多を回避する。降温目的で水冷インタークーラを採用する場合、冷却水回路の熱容量とポンプ流量の最適化が鍵となる。高出力仕様ではクラッチ付駆動や多段プーリーで効率と応答の両立を図る設計もある。
材料・製造と信頼性
ロータやインペラはCNC加工による高精度プロファイルが要求され、マイクロメートル級のクリアランスが体積効率を左右する。ハウジングはアルミダイカストや精密鋳造が一般的で、熱歪みを抑えるリブ設計を施す。ベアリングは高速域での遠心荷重と軸方向荷重に耐える構成とし、グリース封入または専用オイル循環を採用する。シールはリップやメカニカルシールを使い、オイルミスト流出を抑える。耐久面ではロータ先端コーティングの剥離、ギヤ磨耗、ベルトの亀裂や鳴きが代表的課題で、定期点検と適切なトルク管理が重要である。
適用分野とパッケージング
自動車用ガソリンエンジンで広く用いられ、ダウンサイジングと高トルク化を両立する手段として有効である。縦置き・横置きいずれのレイアウトでも搭載可能だが、吸気ダクト長、冷却器配置、騒音対策の観点からエンジン上部や側方にマウントされることが多い。発電機や船外機、小型航空用ピストンエンジンの過給にも応用実績がある。ハイブリッド車ではモータ補助により低速域の不足を補えるため、より高効率な運用が可能となる。
校正・評価指標
- 過給圧マップ:エンジン回転数とスロットル開度に対するブースト応答を可視化する。
- ポンピングロス:バイパス制御の適否を示し、部分負荷燃費の鍵となる。
- 断熱効率・吸気温:ノック限界と出力再現性を左右する主要指標である。
- NVH:ロータうなり音やベルト鳴きを中心とする音質評価が必要である。
- 耐久:熱劣化、油劣化、ベルト寿命を含む長期信頼性の検証を行う。
保守・故障モード
代表的な故障はベルトスリップ、軸受のガタ・焼付き、ロータ干渉、シール劣化によるオイル漏れ、バイパス固着、インタークーラ目詰まりである。症状として出力低下、吸気温上昇、異音(高周波ホイール音、ベルト鳴き)、アイドル不安定が現れる。対策はプーリー・ベルトの定期交換、軸受・シールの予防整備、吸気系のリーク点検、ECUデータによる過給学習値の確認が有効である。
ツインチャージャーとの関係
ターボとスーパーチャージャーを直列または並列で組み合わせる方式はツインチャージャーと呼ばれる。低回転域は機械式で即応、高回転域はターボで高効率を担う分担により、広範囲で高いトルク曲線を実現できる。一方で配管・冷却・制御が複雑化し、コストと重量の増大を伴うため、用途と目標性能に応じた慎重なトレードオフが必要である。
法規・騒音と排出
機械式過給は急峻なトルク立ち上がりにより駆動力制御の厳格さを要求する。吸気音はインテークレゾネータや遮音材で抑制し、うなり音の高調波対策としてロータ形状最適化とハウジングの剛性向上を行う。排出ガス面では、過給に伴う燃焼温度上昇や加速時の過渡濃度を、点火時期・燃料噴射制御・触媒迅速昇温戦略で抑えることが求められる。