サーボドライブ
サーボドライブは、サーボモータに電力を供給しつつ電流・速度・位置の各ループを高帯域で制御する電力変換装置である。一般に「サーボアンプ」とも呼ばれ、PWMインバータと制御プロセッサ、エンコーダ等のフィードバック系で構成される。工作機械、産業用ロボット、包装機、半導体製造装置などで高速・高精度の追従性と安定性を両立させ、軌跡制御やトルク制御を実現するのがサーボドライブの役割である。
動作原理と制御ループ
サーボドライブの制御は階層的である。最内周に電流(トルク)ループ、中間に速度ループ、最外周に位置ループを配置し、FOC(Field-Oriented Control)でdq軸電流を制御する。電流ループは数kHz〜十数kHzの帯域でPI制御を行い、速度・位置ループはPI/PIDやフィードフォワードで応答性を高める。エンコーダのA/B/Zや絶対値信号をPLL等で位相整合し、PWMでIGBTやMOSFETを駆動して三相出力を生成する。
主な構成要素
電力部(DCリンク、スイッチング素子、ゲートドライバ、回生抵抗)、制御部(DSP/MCU、A/D、制御ファームウェア)、フィードバック部(インクリメンタル/絶対エンコーダ、レゾルバ)、入出力部(デジタルI/O、アナログ±10V、パルス/ディレクション)、保護・安全(過電流・過電圧検出、STO)で構成される。EMI対策としてフィルタやシールド、アース設計が重要である。
制御モードとモーション機能
- トルク(電流)制御:モータの発生トルクを直線性良く指令する。張力制御や巻出しに有効。
- 速度制御:回転数指令に追従。加減速プロファイルやS字加減速で機械応力を低減。
- 位置制御:パルス列やフィールドバスからの位置指令に追従。電子カム、ギアリング、内挿(補間)で多軸同期を実現。
チューニングと安定化手法
機械剛性や負荷慣性に応じてゲインを設定し、位相余裕・ゲイン余裕を確保する。オートチューニングは慣性推定とゲイン初期化を自動化する。共振対策としてノッチフィルタ、ローパス、加速度/速度フィードフォワード、摩擦補償、DOB(Disturbance Observer)、微小振動抑制機能などを用いる。パラメータは温度・負荷・摩耗で最適点がずれるため、保全時の再調整が有効である。
通信・インターフェース
サーボドライブは多様な上位接続に対応する。高速同期用途ではEtherCAT、PROFINET、EtherNet/IP、MECHATROLINK、CANopen等の産業ネットワークを用いる。簡易制御ではパルス列やアナログ指令を使用する。エンコーダはTTL、HTL、Sin/Cos、BISS-C、EnDatなどがあり、分解能と遅延が位置決め精度に直結する。安全機能はSTO、SS1、SS2、SLSなどが普及しており、IEC 61800-5-2等に基づく設計が行われる。
電源・回生・多軸構成
電源はAC 200V/400V三相やDCバスを用いる。加速時はDCリンクから電力を供給し、減速時は回生エネルギーが発生する。回生抵抗で熱として消費する方式のほか、AFE(Active Front End)で電力系統へ回帰させる方式もある。多軸機では共通DCバスで回生エネルギーを他軸が再利用し、省エネと小型化に寄与する。
選定ポイント
- 定格・ピーク電流と過負荷率:動作サイクルのトルク要求と熱設計に整合。
- 慣性比:モータと負荷の慣性比は応答性と安定性の鍵。高分解能エンコーダは高ゲイン化を助ける。
- 機械特性:剛性、バックラッシ、ベルト/ボールねじの固有振動数。
- 環境条件:温度、粉塵、振動、IP保護等級、冷却方式。
- 機能安全・EMC:安全カテゴリやノイズ耐性、配線の容易性。
代表的な用途
- 工作機械:高速主軸のオリエンテーション、送り軸のナノレベル位置決め。
- 産業用ロボット:関節軸のトルク制御と軌跡精度の両立。
- 搬送・包装:電子カムでカッタ・シーラの同期制御。
- 半導体・FPD:ステージの微細ステップ移動と速度リップル低減。
- 巻取り・張力:トルク制御と径推定による一定張力化。
- 医療・検査:スキャン軸の等速性、衝撃レス停止。
トラブルシューティングと保全
過電流・過電圧・過速度・エンコーダ異常・過熱等のアラームは、電源品質、配線、冷却、シールド、アース不良に起因することが多い。配線のツイストペア化、モータケーブルとエンコーダケーブルの離隔、接地一点化でノイズを低減できる。電解コンデンサやファンは寿命部品であり、予防交換とファームウェア更新、パラメータのバックアップ運用が有効である。
用語の整理
サーボシステム全体はサーボドライブ、サーボモータ、フィードバックセンサ、上位コントローラ(PLC/モーションコントローラ)で構成される。「サーボアンプ」はサーボドライブの同義であり、ACサーボが主流である。近年は高分解能エンコーダと高帯域制御により、微小送り時のスティックスリップ抑制や速度リップル低減が進む。
法規・規格・設計の留意点
機能安全はIEC 61800-5-2、EN ISO 13849等を参照し、リスク評価に基づきSTO等を実装する。EMCは伝導・放射ノイズの評価とフィルタ選定、シールド接地、盤内レイアウトが肝要である。熱設計では周囲温度・設置方向・放熱パスを確認し、余裕率を確保することが望ましい。配線長・終端処理・フェライトの適用は通信安定性に寄与する。
最新動向
モデルベース制御や適応制御、デジタルツイン、状態監視(CBM)といった高度化がサーボドライブに実装されつつある。エッジAIによる異常兆候検知、共通DCバスとAFEの併用による回生最適化、ハーモニック抑制型PWMや高効率スイッチング素子による損失低減も進む。サイバーセキュリティや遠隔保守、パラメータ管理のトレーサビリティは今後の実装要件として重要性が高い。