バイブロハンマー
バイブロハンマーは偏心回転体が生む高周波の起振力を杭や矢板に伝達し、地盤との相互作用を変化させて貫入・引抜きを行う建設機械である。静的打撃を用いず、連続振動で周面摩擦を低減し、貫入抵抗のピークを回避するのが特徴である。港湾・河川・基礎工・止水壁施工で幅広く用いられ、鋼矢板、H形鋼杭、鋼管杭、仮設ケーシングなどに適用される。
原理
バイブロハンマーは一対の偏心重錘を互いに逆回転させ、鉛直方向の合成振動力を杭頭へ連続的に与える。周面摩擦は振動により動的に低下し、土粒子の再配列や間隙水圧の一時的上昇によって抵抗が減少する。起振力は等価偏心モーメントMeと角速度ωに依存し、概念的にF≈Me·ω²に比例して増加する。周波数f(Hz)と振幅の組合せは杭‐地盤系の動的特性に適合させる必要がある。
主要構成
- バイブレータ本体:偏心重錘・軸受・ケーシングを内蔵し起振力を発生
- クランプ装置:油圧で杭フランジ・ウェブ・管外周を把持
- サスペンション(スプリング/ダンパ):上部構造への振動伝達を緩和
- パワーパック:油圧ポンプ・エンジン/モータ・冷却器を備え流量/圧力を供給
- 吊り装置:クレーンまたはバックホウ先端リンクに連結
種類
バイブロハンマーは吊下式と建機先端装着式に大別される。吊下式は大型矢板・長尺杭に適し、施工自由度が高い。バックホウ装着式は都市内狭小地での取り回しに優れ、サイドクランプ形は壁際・既設構造物近傍で有効である。さらに、可変モーメント形(Variable Moment)は起動・停止時の合力を相殺する「共振回避(Resonance-free)」機能を持ち、周辺振動の抑制に寄与する。高周波形は固結度の高い砂礫層での摩擦低減に有効である。
性能指標
- 起振力:定格起振力(kN)はMeと回転数により決まり、貫入力の基礎尺度となる
- 周波数f:一般に20–60 Hzの範囲で運用。高周波は周辺振動の低減に有利な場合がある
- クランプ力:把持の信頼性に直結し、安全・品質の根幹となる
- 質量・寸法:吊能力や施工空間制約と整合させる
- 必要出力:油圧流量/圧力、エンジン/モータ定格(kW)
適用と限界
バイブロハンマーは砂質土・緩い粘性土で高い効率を示す。一方、玉石混じり砂礫やN値の高い地盤では貫入が難しく、先行削孔(プレボーリング)や先端ビット併用、あるいはハンマグラブ等との組合せを検討する。支持層への根入れ精度が要求される場合は、貫入管理(貫入速度・入力電流・油圧など)を指標化して制御する。
機種選定の要点
- 杭種・断面と長さ:鋼矢板の継手耐力、H形鋼の座屈余裕を確認
- 地盤条件:粒度分布・地下水位・N値から必要起振力と周波数帯を推定
- 周辺環境:近接構造物の固有振動数を避ける運転計画を立案
- 施工設備:クレーン能力、バックホウ質量、到達高さを満足させる
- 騒音・振動規制:規制法・条例・発注者基準に整合
施工手順(概略)
- 据付:吊り上げ後にサスペンションの水平を確認
- 把持:クランプ面を清掃し、規定油圧で把持力を検証
- 予振:低出力で当て振りし、杭姿勢を修正
- 貫入:周波数・流量を段階的に上げ、貫入速度を監視
- 仕上:設計高で停止し、停止時は可変モーメントで共振回避
- 検査:鉛直度・天端高・継手状態を確認
品質管理
貫入速度(m/min)・入力電流/油圧・振動加速度(m/s²)などを常時計測し記録する。鋼矢板の継手開き・曲がりは施工中の共振や障害物で発生しやすく、段取り替えやプレボーリングで対処する。引抜時は土圧変化による周囲沈下に留意し、段階的に操作する。
環境対策
可変モーメント機で起動停止時の低周波成分を抑えるほか、防振マット、地中遮断溝、作業時間帯配慮、振動・騒音の常時モニタリングを行う。都市域では近接建物の微動計測や事前調査を実施し、苦情リスクを低減する。
安全
クランプ未把持での起振は厳禁である。油圧ホースの損傷・漏洩は火災・環境事故の要因となるため、耐圧・耐磨耗の規格品を用い、定期点検を実施する。吊り具の使用荷重(WLL)と安全率を満足させ、立入禁止範囲を明確化する。
関連機械との使い分け
バイブロハンマーは高速で経済的な貫入が可能だが、硬質地盤や岩盤では打撃式リーダーハンマやダウンザホールハンマの適性が高い。止水精度や剛性が重視される場合は施工管理の厳密化や補助工法を併用する。
法規・基準(日本)
施工に際しては振動規制法・騒音規制法、各自治体の公害防止条例、発注者仕様書の管理基準に適合させる。モニタリング計画は測点配置・評価指標・是正基準を明記し、第三者影響を最小化する。