タイヤローラ
タイヤローラ(Pneumatic Tire Roller)は、複数の空気入りタイヤによって広い接地面積と「練り効果」を与え、アスファルト混合物や路床・路盤材料を均一かつ緻密に締め固める転圧機械である。鋼輪の静荷重や振動による転圧と異なり、タイヤの弾性により粒子間へ塑性的に圧入し、材料のつぶれ・ずれを抑えながら空隙を減少させる点が特徴である。舗装ではブレークダウン後の中間〜仕上げ転圧、土工では含水比管理下での表層緻密化に適する。
概要と作用原理
タイヤローラの接地圧は、タイヤ内圧と機体総重量(バラストを含む)で制御する。タイヤは重なりを持つ配置で列設され、重ね踏みにより局所的な高応力を繋ぎ合わせて面全体へ応力を分散する。弾性接地による「練り(Kneading)」は、粗骨材とアスファルトモルタルを再配列させ、表層のラベリングや骨材浮きを抑制する。
構造と主要部品
- タイヤ部:前後アクスルに3〜6本ずつ(計7〜11本が一般的)。空気圧と温度で剛性が変化する。
- バラスト室:水・砂・鉄材を積載し作業質量を可変化。
- 駆動・操舵系:油圧駆動、前後独立懸架や中央折れ式フレームを採用する機種もある。
- 散布装置:離型剤散布や清水散布でアスファルトの付着を防止。
- 計測・表示:タイヤ内圧、温度、走行速度、パス回数などの指示・記録。
仕様と性能指標
代表値として、作業質量は10〜30t、作業速度は2〜8km/h、移動速度は15〜25km/h程度である。タイヤ内圧は300〜800kPaが目安で、材料や層厚、目標空隙率に応じて設定する。性能評価は、密度比、表面テクスチャ、わだち掘れ抵抗性、骨材の破砕・飛散の有無などで行う。
種類と用途
- 舗装用:アスファルト混合物の中間〜仕上げ転圧に最適。温度管理と均一内圧が要点。
- 土工用:路床・路盤の表層緻密化や粒度調整材の締固めに用いる。含水比の適正化が鍵。
- 軽量・小型機:狭い法面肩や舗装補修での機動性を重視。
アスファルト舗装での転圧工程
- フィニッシャ敷均し直後のブレークダウン(通常は振動ローラ)で骨材骨格を形成。
- 混合物温度が十分に高い段階でタイヤローラを投入し、練り効果で空隙を減少。
- 表面のテクスチャと平坦性を確認し、必要に応じて静振切替の鋼輪で仕上げ。
タイヤ圧の影響
内圧上昇は接地圧増大につながるが、過剰な内圧は材料の移動・押し出しを招く。層厚、骨材最大粒径、目標空隙率に応じて段階的に調整する。
離型剤と表面品質
アスファルト付着防止には清水や専用離型剤を散布する。油分過多は表面欠陥や早期損傷の原因となるため、必要最小限の散布量とする。
土工での活用
タイヤローラは、砂質土や粒度調整材の表層緻密化で効果的である。細粒分が多い場合は最適含水比に近づけ、轍や表層の乱れが出ない速度・パス数を選定する。粗粒材では内圧をやや高め、重ね踏み幅を広く取る。
バラスト調整
バラストで作業質量を可変とし、必要接地圧と層厚に見合う転圧エネルギーを確保する。運搬時は過積載・制動距離増を避けるためバラスト減載が望ましい。
運用と調整手順
- 事前確認:路面温度・材料温度、層厚、目標密度を共有。
- タイヤ内圧整備:全輪を同一圧にし、温度上昇時の圧力変動を見越して設定。
- 走行パターン:1/3〜1/2の重ね幅で直線走行を基本とし、急ハンドル・急制動を避ける。
- パス管理:密度試験(コア、密度計)と見合いで最小必要パス数を確定。
オフセットと重なり
前後輪のオフセット配置により重なり率を確保する。端部は車輪を外へやや張り出させ、段差や舗装端の押し出しを抑える。
安全管理と法規
- 作業帯の立入管理、死角監視(誘導員配置)。
- 熱傷・挟まれ防止の保護具着用、離型剤の皮膚付着防止。
- 公道移動時の灯火・標識、積載バラストの落下防止。
日常点検・保守
- タイヤ:摩耗・亀裂、異物刺さり、内圧・温度を始業前点検。
- 油脂類:エンジン・油圧・冷却水の量と漏れ。
- 散布装置:ノズル閉塞と吐出量の均一性。
- 清掃:付着材の除去により偏摩耗と振れを防止。
トラブル対処
表面の押し波・しわが生じた場合は内圧を下げ、速度を落とし、温度条件を見直す。骨材飛散がある場合は内圧やバラストを下げ、パス数を最適化する。
選定の要点
舗装の層構成と施工能力に対して、作業質量、内圧可変範囲、タイヤ本数・重なり率、散布機能、記録機能を総合評価する。現場の温度条件と品質管理手段(密度・温度計測)を組み合わせることで、タイヤローラの練り効果を最大化し、耐久性と平坦性の高い舗装品質を実現できる。