WAN|広大な距離を結ぶネットワークインフラ

WAN

WAN(Wide Area Network)は地理的に離れた拠点や都市間を結び、広大な距離をカバーするコンピュータネットワークの形態である。企業の支社間通信や国際間のデータ交換など、長距離を跨ぐ情報インフラを構築する際には欠かせない手段となっている。LAN(Local Area Network)よりも広域を対象とし、専用回線や公衆回線、さらには衛星通信など多様な技術を組み合わせることで、大規模ネットワークを実現する仕組みとして活用されている。

WANの役割と特徴

企業の複数拠点を結合し、一体的なネットワーク環境を提供するという点がWANの最大の役割である。遠隔地にある支社やデータセンターを高速かつ安定的につなげることで、ファイル共有やオンライン会議、クラウドサービスなどの利用を円滑に行えるようになる。LANに比べると通信距離が非常に長いため、回線コストや帯域幅の確保、経路の信頼性など、多角的な視点からの設計が必要となる。一方で拠点間を結ぶルータや通信事業者のサービスを活用すれば、柔軟な拡張や冗長化も実現できる点が特徴である。

主な接続形態

専用線を利用したポイント・トゥ・ポイント接続は、拠点間を直接結ぶ構成として歴史的に広く使われてきた。一方、MPLS(Multi-Protocol Label Switching)を活用したVPNは、複数拠点を仮想的な専用回線で結ぶことで、コスト削減と柔軟なトポロジを両立する。最近ではブロードバンド回線やLTE/5G回線を活用し、SD-WAN(Software-Defined WAN)によってトラフィックを動的に制御する仕組みも普及が進んでいる。これらの手法は拠点の数やデータの種類、セキュリティ要件に応じて使い分けられる。

運用と管理のポイント

拠点の増減や帯域要求の変化に応じて柔軟に対応できるよう、設計段階で冗長性と拡張性を確保することが重要である。さらに通信障害や遅延が発生した場合の影響範囲が広いため、ルーティングやQoS(Quality of Service)の設定を駆使して安定運用を目指す必要がある。加えて障害監視システムや帯域監視ツールを導入し、日常的にネットワークの状態を可視化することで素早いトラブルシュートを行い、拠点間の業務継続性を高めることが可能となる。

セキュリティ対策

WANは長距離かつ多岐にわたる通信経路を含むことから、外部からの不正アクセスや盗聴のリスクがつきまとう。拠点間をVPNで暗号化し、ファイアウォールやIDS/IPSなどを適切に配置することで、情報漏えいや攻撃への耐性を強化することが不可欠である。また、公共回線を利用する場合は特に注意が必要で、回線障害やサービス停止に備えたバックアップ回線の確保も対策の一環といえる。

SD-WANの登場と影響

近年では、ソフトウェア制御により複数のWAN回線を動的に切り替え、最適な経路を自動選択するSD-WANが注目を集めている。拠点ごとのトラフィック状況やアプリケーションの重要度を検知し、運用コストの削減や品質向上を同時に実現するための仕組みである。クラウドサービスの普及によってインターネット経由での業務システム利用が一般的になった現在、SD-WANを導入することで、リソースをフレキシブルに活用できる点が評価されている。

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