アングルプレート
アングルプレートは、工作物を機械加工時に直角(90°)に保持するための治具であり、L字形の高剛性ブロックである。ベース面と垂直面の二つの基準面を備え、フライス加工、穴あけ、リーマ加工、面取りなどで、工作物を立て付け・側面支持・直角度基準の供与に用いる。別名「直角定盤」とも呼ばれ、ベース側をテーブルに固定し、立ち上がり面に工作物や補助治具を固定して用いる。高精度品では平面度・直角度が研削またはスクレープ仕上げで確保され、安定したクランプが可能である。
用途と機能
アングルプレートの主目的は、工作物の姿勢を確実に直角へセットし、加工基準を明確化することである。ボール盤やフライス盤のテーブルTスロットに固定し、立壁面にワークをクランプして側面加工や端面加工、穴位置決めを行う。平面基準が必要な検査工程では、ベース面を定盤に当て、立壁面の直角をスコヤやダイヤルゲージで確認する。重切削用途ではリブ補強型を用いて曲げ・ねじれを抑え、軽加工や測定用途では肉薄・軽量タイプが取り回しに優れる。
治具としての典型例
- 側面穴加工:立壁面にワークをボルト締結し、側面から穴あけ→リーマ仕上げ
- 端面フライス:基準側を固定し、端面をエンドミルで直角に仕上げ
- 検査用保持:ベースを基準面に置き、立壁面で部品の直角度を確認
構造・材質・表面仕上げ
アングルプレートは一般にねずみ鋳鉄(FC)やダクタイル鋳鉄(FCD)で鋳造され、時効処理や応力除去焼なまし後に基準面を精密研削する。重量対剛性と制振性のバランスから鋳鉄が主流であるが、薄肉・小型では鋼板溶接構造もある。ベース・立壁ともTスロットや長孔を備え、ボルト類やクランプが多様に使える。精密級はスクレープ仕上げを施し、微小な面当たりを増やして据付け安定性を高める。開口型やリブ型は軽量化と切粉排出性に優れ、洗浄・メンテナンスが行いやすい。
穴・スロットの配置
ベース面にはテーブル固定用の長孔、垂直面にはワーク固定用のTスロットやタップ孔を設ける。長孔は芯ずれ補正や段取り替えを容易にし、大型ワークにも対応する。精密アライメント時はシムや調整ブロックを併用し、締結順序でひずみが出ないよう配慮する。
精度と検査
基準は平面度と直角度である。平面度はベース面を定盤に置き、シックネスゲージやダイヤルゲージで走査して確認する。直角度は基準面に密着させ、スコヤあるいはゲージヘッドで立壁を測定する。微小うねりは青ニス転写やスクレーパー痕の分布で評価できる。信頼性の高い判定にはゲージブロックを用いて基準段差を作り、指示計で比較測定すると良い。
- 平面度確認:基準据付→全面走査→最大振れ記録
- 直角度確認:スコヤ当て→透かし光・ゲージ読み→締結後再確認
- 再仕上げ:打痕・バリ除去→局所スクレープ→軽研磨
選定ポイント
サイズはワークの外形と刃物到達性から決める。ベース長はテーブルTスロット間隔とクランプ治具の届きを考慮する。剛性は立壁厚とリブの配置が影響し、重切削にはリブ補強型が有利である。取扱重量は段取り安全に直結するため、吊り穴や把手の有無も確認する。表面仕上げは研削級かスクレープ級かで据付け挙動が異なり、測定・基準用途は高級仕上げが望ましい。スロット規格とボルト・ナット類の互換性も重要で、手持ちのボルト・ナット・クランプセットに合致させたい。
取り付け・クランプ方法
まずベース面・テーブル面・座金面の油膜・切粉を清掃し、必要に応じ薄紙シムで微調整する。Tナットにスタッドを通し、段付きブロックやクランプで均等に締結する。立壁面へのワーク固定は、押し当て→仮締め→直角確認→本締めの順で行い、締結で姿勢が崩れないよう対向配置とする。振動源に近い加工ではクランプを増やし、工具送り方向に対して滑りが出ないよう摩擦条件を整える。ベンチ作業ではバイス併用で段取り時間を短縮できる。
注意事項
過大トルクは変形や基準面の荒れを招くため、締結は規定範囲で行う。打痕・バリは接触剛性を著しく低下させるので、使用前後に面取り・バリ取りを習慣化する。切削液や湿気は鋳鉄の錆を誘発するため、作業後は清拭・防錆油の塗布を行う。
保守・保管
保管は乾燥環境で、基準面同士が触れ合わないように当て木・保護紙を挟む。長期保管後の再使用時は、平面度・直角度の再点検を行い、必要に応じ軽スクレープで面当たりを整える。搬送時は角欠けを防ぐため専用ケースや養生を用い、重量物は二人以上または吊り具で安全に扱う。加工現場・検査室のいずれでも、アングルプレートは基準設定と段取りの再現性を担保する中核治具であり、適切な選定・取扱い・保守が加工品質と稼働率の向上に直結する。