寸法測定|公差と品質を保証する計測の基礎

寸法測定

寸法測定とは、製品や部品の長さ・直径・厚さ・角度・位置などの量を、基準に対して定量的に求める行為である。設計図面で規定された公差内に収まっているかを確認し、製造品質を保証するための根幹である。寸法測定は受入検査、工程内検査、出荷検査の各段階で実施され、生産性や信頼性、コストに直結する。対象物の材質・形状・表面状態、必要精度、測定スループットを考慮し、適切な測定手段と条件を選定することが重要である。

基本概念と目的

寸法測定の目的は、図面で定義された寸法・幾何特性が要求通りであるかを客観的に示すことにある。評価対象は寸法公差、はめあい、公差域、幾何公差(真直度、平面度、円筒度、同心度、位置度など)であり、データは合否判定のみならず工程のばらつき解析やフィードバック制御にも用いられる。測定では基準面・基準軸(データム)を適切に設定し、測定の繰返し性・再現性を確保することが欠かせない。

測定機器の種類

  • ノギス:汎用性が高く外径・内径・段差を手早く測れる。最小読取値は0.02〜0.05mm程度。
  • マイクロメータ:外径・厚さの高精度測定に適し、最小読取値0.001mm級が一般的である。
  • ダイヤルゲージ・インジケータ:変位や振れを比較測定するのに用いる。
  • ハイトゲージ・定盤:高さ・段差・直角度の基準測定に有効である。
  • 三次元測定機(CMM):プローブで点群を取得し、形状・位置を総合評価する。
  • 光学式(レーザ・画像測定機・プロファイル):非接触で微細形状や柔らかい素材に向く。

ねじ部品の外径や首下長さの確認など、例えばボルトの検査でも上記機器を組み合わせて用いるのが通例である。

測定原理と不確かさ

寸法測定では、系統誤差(ゼロ点ずれ、器差、温度影響)と偶然誤差(繰返しのばらつき)を区別する。不確かさは分解能、繰返し性、再現性、直線性、バイアス(真値からの偏り)などの要素で構成される。結果の有効桁は装置の分解能だけでなく、不確かさの合成結果で決めるのが適切である。

校正とトレーサビリティ

信頼できる寸法測定のためには校正とトレーサビリティが不可欠である。ゲージブロック、リングゲージ、プラグゲージといった標準器で機器の指示を定期確認し、国家計量標準へ遡れる体系を維持する。校正周期は使用頻度・要求精度・環境変動を勘案して設定し、校正記録と不確かさの記載を残す。

環境条件と測定準備

長さ計測の基準温度は20℃であることが多く、ワーク・治具・機器を同温に馴染ませる。温度差による熱膨張は鋼で約11.5×10^-6/℃であり、100mmなら5℃差で約5.8µmの誤差となりうる。清浄な定盤上でバリ・油分・粉塵を除去し、測定力は規定値に合わせる。治具で位置決めと姿勢を安定化し、オペレータ間のばらつきを低減する。

図面・公差の読み方

図面は尺度だけでなく、公差記入(例:±0.1、H7/g6)、幾何公差の記号、データム構成、表面粗さ指示などの情報を持つ。寸法測定では、最大実体条件(MMC)等の修飾子や、評価フィルタ、母線・母面の定義を正しく解釈する。CMMでは測定戦略(点数、走査速度、フィルタ設定)が結果に大きく影響する。

サンプリングと工程内測定

量産では抜取検査と全数検査を使い分ける。工程能力(Cp、Cpk)を監視し、統計的工程管理(SPC)で外れを早期検出する。工程内のインライン計測や自動ゲージはタクト重視で、基準となるオフライン計測(マスターゲージやCMM)と整合を保つ。立上げ時は初品検査(FAI)で図面特性の網羅確認を行う。

データ処理とMSA(測定システム解析)

MSAではGRR(繰返し性・再現性)を評価し、%GRRが10%以下を目標、30%超は改善検討とするのが通例である。加えてバイアス、直線性、安定性を評価し、寸法測定データの信頼性を定量的に担保する。結果はヒストグラム、管理図、箱ひげ図などで可視化し、工程改善へ活用する。

よくある誤差要因と対策

  1. ゼロ点ずれ:測定前後でゼロ合わせと基準器チェックを行う。
  2. パララックス:視線を直角にし、デジタル表示を活用する。
  3. 過大な測定力:一定力機構やラチェット付き工具を用いる。
  4. 当て面の汚れ:測定面・ジョー・アンビルを清掃する。
  5. 温度差:20℃基準で温度平衡を待つ。
  6. 不適切な位置決め:治具でデータム拘束を再現する。
  7. 面粗さ・バリ:事前の面取りと測定方法(接触/非接触)の選択を最適化する。

接触式と非接触式の使い分け

接触式は形体定義に忠実で測定力の管理が肝要である。非接触式は微細・柔軟素材、微小穴、熱・力に弱い対象に有利だが、反射・透過・表面粗さの影響を受けやすい。目的精度、表面状態、サイクルタイムを踏まえ、ハイブリッドに使い分けるのが実務的である。

測定計画と運用の勘所

寸法測定は「何を(特性)」「どこで(データム)」「いくつ(サンプル数)」「どのように(機器・条件)」「誰が(訓練度)」「いつ(頻度)」を明確化した測定計画書で運用する。特性重要度をABCなどで分類し、クリティカル特性は高度機で二重確認とする。記録はトレーサブルに保管し、変更管理と連動させることで品質保証の実効性が高まる。