KrFレーザー
半導体リソグラフィなどの微細加工に用いられるエキシマレーザーの一種がKrFレーザーである。KrFレーザーは、希ガスであるクリプトン(Kr)とフッ素(F)の混合ガスによって高エネルギー状態を作り出し、248nm付近の紫外線(UV)を発振するのが特徴である。従来の可視光や赤外光では実現が難しい微細パターンの露光に対応できるため、半導体の集積度向上や微細構造の形成に不可欠な技術となっている。
エキシマレーザーの仕組み
エキシマレーザーは、励起状態でのみ結合する分子(エキシマー)が光を放って基底状態に戻る現象を利用している。KrFレーザーでは、気体放電によってクリプトン原子とフッ素原子が一時的に結合したエキシマー(KrF*)が生成され、このエキシマーが放射遷移を起こして高エネルギー光を放出する。一度レーザー光を発生させるためには高電圧パルスの供給が必要であるが、パルス形状や放電室の設計を工夫することで高速かつ安定した発振が可能となる。
波長と解像度
KrFレーザーが発する248nmの紫外線は、従来のg線(436nm)やi線(365nm)などに比べて波長が短い。その結果、より高い解像度を持つリソグラフィ技術が実現できるというメリットがある。解像度向上が進めば、半導体デバイスの集積度が上がるため、スマートフォンやサーバなどで求められる高性能プロセッサの製造にも役立っている。
半導体リソグラフィへの応用
半導体プロセスではフォトレジストの感度や光学系の設計が露光精度に直接影響する。KrFレーザー用のレジストは248nm付近の紫外光に対応できる特別な材料が使われ、さらにレンズやミラーなども短波長に適したコーティングが施される。これによって0.25µm前後のプロセスノード(あるいはそれ以下)に対応できる高解像度露光が可能となり、微細な回路パターンをウエハへ正確に転写できる。
ArFレーザーとの比較
ArF(193nm)レーザーはより短い波長を活かしてさらに微細なパターンの形成に適している。一方で、KrFレーザーは装置コストや運用の成熟度といった面で利点があるため、多くのメーカーが量産ラインで使用し続けている。ArFほどの微細化は不要だが、十分高い精度が求められる工程では、実績のあるKrFレーザー露光装置を使うほうが安定運転やトラブル対策の観点で望ましい場合も多い。
装置構成
レーザー発振器は放電室、ガス循環系、高電圧電源などから成り、ガス組成比や圧力を厳密に管理することでKrFレーザーの発振特性が保たれる。高出力を安定して得るには、ガスの定期交換や放電室壁面のメンテナンスが欠かせない。また、ミラーやウインドウ素材には耐紫外線特性が高いCaF2(蛍石)などが用いられ、レーザー光の損失を最小限に抑制する設計が施されている。
課題
KrFレーザーは波長が短くなるほどに高価な光学素子が必要となるため、製造装置の初期導入コストが大きい。さらに大気中を光が伝搬する際には吸収や散乱が起こりやすく、ヘリウムパージや真空環境を使うなど、レーザー系への負担が増える。また、微細化の進行に伴いArFやEUV(極端紫外線)への移行が加速している反面、KrFレーザー技術への投資をどの程度維持するかも、半導体メーカーにとっては重要な経営判断となっている。