3本ロールベンダー
3本ロールベンダーは、3本のロールで板材や平鋼を挟持・送給しながら塑性曲げを与え、円筒や円錐、アーチ状などの曲面形状を成形する板曲げ機である。上ロールを駆動し、下(または側)ロールを上下・左右に位置決めして曲げ半径を制御する。前加工の「端曲げ(プレベンド)」によりフラットエンドを最小化でき、溶接用の円筒母材づくりに広く用いられる。鋼(SS400 等)だけでなく、ステンレス(SUS304)、アルミ(A5052)にも適用できるが、降伏強さや加工硬化の差を考慮した条件設定が要る。
構造と作動原理
3本ロールベンダーは、一般に上ロールが駆動ロール、下(または左右)ロールが加圧・案内ロールとして働く。板材はロール間で繰り返しわずかずつ曲げられ、累積塑性変形により所定Rに漸近する。側ロールの偏芯量(押し込み量)が曲げモーメントを決め、送りと反転を組み合わせて全周を均一化する。端部は曲げモーメントが不足しやすくフラットが残るため、上ロール近傍でのプレベンド手順を別途実施する。
方式の種類
- 初期ピンチ式:前後の下ロールで材料を強固に挟持し、上ロール押し込みで曲げる。端曲げ性に優れる。
- ピラミッド式:上下1本・下2本の三角配置。構造が簡潔で厚板対応機に多い。
- 駆動・制御:機械式/油圧式があり、位置決めは手動、NC、CNC がある。CNC は多段Rやコニカルの自動化に有利で、データ化により再現性が高い。
加工手順
- 段取り:材料寸法・材質確認、ロール表面清掃、押さえ圧とバックアップ装置の点検。
- プレベンド:一端ずつ端曲げを行い、フラットエンドを最小化。
- 本曲げ:規定の押し込み量で送給・反転を繰返し、目標径へ近づける。
- 校正:オーバーベンドでスプリングバックを見込み、円真円度を整える。
設計・選定の指標
最小内径は上ロール径・板厚・材質(降伏強さ)・ロール負荷能力で決まる。一般に、厚板や高強度材ほど最小内径は大きくなる。経験式として、繊維ひずみε≈t/(2R)を用い、許容ひずみから目標Rを逆算する方法が現場的である。機械の能力表に示される「板厚×幅」「最小巻径」「コニカル角度範囲」は必ず参照し、カタログ値を超える条件は避ける。また、ロール径が小さいほど小径に有利だが、面圧上昇と表面損傷のリスクが増すため、押さえ圧と送りを適正化する。
スプリングバックと品質管理
弾塑性曲げではアンローディングでRが戻るため、オーバーベンドが必須である。戻り量は材質・板厚・曲げ履歴で変動する。試し巻き→測定→補正のPDCAを短サイクルで回し、円径ゲージ、外径テープ、三点法などで実測する。中立軸の移動により板厚方向の伸び縮みが偏在するため、継ぎ手位置の周長差を管理し、開先・タック溶接の準備を整える。表面傷防止にはポリウレタン当てや保護フィルムが有効である。
円錐(コニカル)・多段Rの成形
コニカル成形は左右ロールの差動位置決めと送り条件の差を用いて実現する。展開板が扇形であるため、周方向の線速度差と滑りを許容する段取りが鍵となる。CNC 機ではコニカルプログラムにより押し込み量と送り量を同時制御し、形状再現性を高められる。多段Rは押し込み量を段階切替して連続的に成形し、後工程の研削・仕上げを減らす。
安全と保全
- 安全:巻き込まれ防止の非常停止、フットスイッチ、反転操作のインターロックを点検。手袋の選定や長袖巻き込み対策を徹底する。
- 保全:ロール偏摩耗の点検、軸受潤滑、油圧漏れ確認、位置決めゼロ点校正を定期化。ロール面の打痕・スジは早期補修する。
代表的な不具合と対策
- フラットエンド残り:プレベンド条件不足→押し込み増・当て金位置最適化。
- 楕円度過大:押し込み不足・送り偏り→反転回数増と押し込みの微増。
- 片テーパー:側ロール高さ差・材料偏心→左右位置決めの再調整。
- 重なり段差:周長設定不良→展開長とスプリングバック補正の見直し。
- 縦スジ・表面傷:ロール汚れ・異物→清掃と保護材の併用。
材料・組織に関する留意点
圧延方向により曲げ性が変わるため、可能ならば繊維方向を円周に沿わせる。高強度鋼や析出硬化系ではスプリングバックが大きく、オーバーベンド量を多めに見込む。ステンレスではガリング防止のため低摩擦の当て材が有効で、アルミは表面傷対策を優先する。
能力表の読み方(補足)
能力表は「板厚×有効幅」「最小巻径(材質別)」「ロール径」「押し込みストローク」「速度」を見る。最小巻径は通常、鋼を基準に記載され、SUS・Al は別値となる。周辺装置(コニカル装置、曲げ補助アーム、材料当て)有無で実力が変わるため、実機トライで確認する。
周辺工程との連携
3本ロールベンダーで円筒母材を作成した後は、エッジ部の開先加工、タック溶接、全周溶接、内外面の校正・仕上げへ進む。寸法は溶接収縮を見込んだ目標周長で管理し、溶接後の円度・真円度を再測定して必要に応じて校正巻きを入れる。搬送・段取りの効率化には位置決め治具やクレーン、ローラー台の整備が効果的である。
教育とデータ活用(補足)
オペレータ教育では材料別スプリングバック曲線と押し込み量—径の相関表を整備し、NC/CNC のレシピ化・共有を進める。トライ履歴をデジタル記録すれば、再現性と立上げ時間が大きく改善する。