風荷重|基準・風圧係数・設計式を要点化

風荷重

風荷重とは、風による流体力が構造物表面に与える荷重であり、主に静的な「速度圧」と形状に依存する「外圧係数」によって評価する。基本式はF=q・Cp・Aであり、q=0.5ρV2を速度圧、Cpを外圧係数、Aを受風面積とする。さらに開口部の有無による内部圧、乱流の瞬間的増加(ガスト)、渦励振などの動的効果を考慮する。設計では、地域の基準風速、地表面粗度、高さ補正、ガスト影響係数を組み合わせて等価静的荷重として置換するのが一般的である。

基礎式と物理的背景

速度圧qは空気密度ρ≒1.2kg/m3と風速Vからq=0.5ρV2で求める。平均風速の鉛直分布はU(z)=Uref(z/zref)αの指数則で近似し、αは地表面粗度で変化する。角柱や屋根では剝離と再付着により正圧・負圧が分布し、隅角部で局部的な負圧が卓越する。したがって風荷重の空間分布は一様ではなく、パネル固定具や接合部の設計で注意を要する。

設計手順(静的等価換算の例)

  1. 地域の基準風速V0を取得し、高さ・地表面粗度で設計用風速Vに補正する。
  2. 速度圧q=0.5ρV2(実務ではq≒0.6V2)を算出する。
  3. 部位ごとの外圧係数Cpと内部圧係数Cpiを選定し、合成係数Cnet=Cp−Cpiを求める。
  4. 等価静的荷重F=q・Cnet・Aを各パネル・フレームに配分し、部材応力・変形を照査する。

外圧係数と内部圧

風上壁ではCp>0、屋根や側壁の剝離域ではCp<0となる。開口が大きい建物では内部圧が増幅し、合成で外向きの吸い上げが支配的となる。局部負圧はパネル端部で最大化し、ねじ・リベットやボルトの引抜き耐力がボトルネックとなりやすい。隅角や端部の係数は中央部と異なるため、割増係数を適用して風荷重を配分する。

風応答の分類

  • 準静的応答:ガストを統計的に取り込んだ等価静的風荷重で評価する。
  • 渦励振:角柱・塔状物で後流のストローハル渦が固有振動数に同調して振幅が成長する。
  • バフェッティング:乱流により広帯域の励振を受ける。
  • ギャロッピング・フラッター:断面形状や連成で自励的に発散する。

建築・土木要素への影響

薄板屋根では吸い上げが卓越し、母屋・タイトフレーム・固定金物の設計が重要となる。外壁カーテンウォールはパネル単体と躯体への伝達経路を分けて照査する。看板・煙突・仮設足場はスレンダー比が大きく、渦励振と基部の曲げが支配的である。梁スパンが長い庇は片持ち梁として扱い、変形は梁のたわみ照査を行う。枠組みは支点や拘束が効くため、支持条件の設定が耐風性能を左右する。

設計例(簡易計算)

例としてV=34m/sとするとq=0.6×342=0.6×1156=693.6N/m2(0.694kPa)である。風上壁10m2、Cp=0.8ならF=q・Cp・A=693.6×0.8×10=5548.8N≒5.55kNとなる。これをフレーム節点へ分配し、部材応力は主応力と許容応力度の比較、接合部は引抜き・せん断・座屈で照査する。

地形・周辺環境の補正

海岸・河川敷など開豁地では粗度が小さく、同じ高さでも風荷重は大きくなる。市街地密集域では平均風速は減るが、局所的なビル風やコーナーの負圧が増大しうる。尾根・谷では地形収束で強風帯ができるため、設計用風速の選定に地形補正を導入する。屋根端部・隅角部は係数を区分し、躯体の境界条件と合わせて安全側に評価する。

評価指標と性能設計

終局限界状態では耐力と破断・引抜きを、使用限界状態ではドリフト・たわみ・加速度を評価する。高層建物では居住性が制約となり、沿風・横風の応答加速度を評価して内装・設備の機能を確保する。面外座屈やパネル座屈に対しては局部の補剛と固定ピッチの最適化が有効である。

解析と試験

風洞試験は縮尺模型で平均・変動圧を計測し、相関や同時作用を取得できる。数値解析はRANSやLESなどのCFDで流れ場と圧力分布を可視化し、形状最適化や通気・開口条件の影響を評価する。設計の初期段階では等価静的風荷重、重要構造では風洞・CFD・実測のハイブリッドが有効である。

基準類と係数の読み方

係数表は部位区分(中央・端部・隅角)や屋根勾配、アスペクト比で整理される。内部圧は開口率と風向で変わり、正圧・負圧の両側ケースを評価する。応力分布は一様でなく、端部でのピークが危険側であるため、配筋・座屈補剛・アンカー配置を局所的に強化する。

よくある誤りと対策

①内部圧の見落としによりパネル吸い上げが過小評価となる。②隅角・端部の係数を中央部で代用して破損に至る。③固定具の引抜き・座屈照査が不十分で破断を誘発する。対策として、部位区分係数の適用、接合詳細の強化、流力的不安定への制振(TMD/TLD)、躯体の荷重条件支持条件の明確化、応力ピークの把握に応力集中係数の視点を導入する。部材は許容応力度に加え、たわみ制限で機能を守る。必要に応じて梁のたわみや局部の応力集中係数評価を併用する。