電圧(応用)|電荷を駆動するポテンシャル差

電圧

電圧は電位差を意味し、単位正電荷をある点から別の点へ運ぶために外力がなし得る仕事量を表す量である。静電場では電位の差、回路ではエネルギー源から素子へ移送される単位電荷当たりのエネルギーとして理解できる。記号は一般にV、単位はVolt(V)で、オームの法則V=IRや電力P=VIなど、多くの基本関係式の基盤となる。

定義と物理的意味

電圧は二点間の電位差であり、電場Eの線積分で表される。静電場においては保存力場であるため経路によらない。基準点(グラウンド)を選ぶことで絶対値を扱うが、本質は二点間の差である。正の電荷を高電位から低電位へ動かすときに外部へ放出されるエネルギーが、回路素子で消費または蓄積される。

単位と表記

国際単位系の単位はVolt(記号V)である。ミリ(mV)、キロ(kV)などの接頭語が用いられる。回路図では節点電位としてV1、V2、差としてΔVやVabのように表す。機器の定格では最大許容電圧、動作電圧、絶縁電圧などの表記が見られる。

電位差と起電力(EMF)の違い

起電力はエネルギー源(電池、発電機)が内部で非保存力により電荷へ与えるエネルギーであり、開放端で観測される値が理想EMFである。一方の電圧は二点間の電位差一般を指し、負荷が接続されると内部抵抗により端子電圧が低下する。実務では開放端と負荷時を区別して扱う。

オームの法則と線形抵抗

電圧Vは抵抗Rと電流Iに対しV=IRで結ばれる。材料の微視的関係はJ=σE(局所オーム則)であり、温度や周波数で抵抗値が変化する非線形素子では厳密には成り立たない。回路網では直並列合成と節点法・ループ法で電圧分布を求める。

キルヒホッフの第2法則(KVL)

任意の閉路における電圧の昇降の代数和は0となる。これはエネルギー保存則の回路表現であり、極性の取り方と向きを統一して方程式を立てる。多ループ回路の解析に不可欠である。

直流(DC)と交流(AC)の電圧

DCは時間に対して一定、ACは時間的に変化する電圧である。正弦波では周波数f、角周波数ω=2πf、位相φ、ピークVpなどで表す。方形波・三角波では高調波成分が大きく、測定帯域や負荷特性に依存した応答となる。

実効値・平均値・ピーク値

実効値Vrmsは等価なDC加熱効果を与える電圧で、正弦波ならVrms=Vp/√2、Vavg(半波整流平均)は2Vp/πとなる。波形の尖りを示すクレストファクタはVp/Vrmsであり、計測器のレンジ選定や安全余裕に関わる。

分圧と負荷の影響

理想分圧はVout=Vin×R2/(R1+R2)だが、計器や後段の入力抵抗が有限だと等価並列となり電圧が低下する。テブナン等価(Vth、Rth)で表して、負荷とのマッチングやレギュレーションを評価する。

測定方法と注意点

  • デジタルマルチメータは高入力インピーダンス(例:10 MΩ)を用い、被測定回路への影響を小さくする。
  • オシロスコープは帯域・サンプリング・プローブ減衰比(10:1等)を確認し、グラウンドの取り回しでループを最小化する。
  • 差動プローブやアイソレーションを用いて共通モード電圧を抑制する。
  • CATカテゴリ、測定レンジ、過渡サージ耐量を遵守する。

誤差・ノイズ要因

熱起電力、接触抵抗、ケーブル容量、電磁誘導、広帯域ノイズやエイリアシングが電圧測定を乱す。シールド、ツイストペア、ローパス、ガードリング、温度補償、校正の実施が有効である。

静電場と空間分布

静電容量素子ではE=−∇Vより電圧勾配が電界を与える。誘電体の破壊電圧は材料の絶縁耐力で決まり、すきま(クリアランス)と沿面距離(クリープ)設計が重要である。境界条件の設定によりポアソン方程式で分布を解く。

伝送線路・高周波設計

高周波では電圧は分布定数線路上の進行波・反射波として扱う。特性インピーダンスZ0、終端整合、反射係数Γ、VSWRで設計し、立上り時間と帯域のトレードオフを考慮する。

半導体デバイスのバイアス

PN接合の順逆電圧、MOSのVth、チャネル長変調、ボディ効果、ツェナー・アバランシェ破壊など、素子の強化・保護はバイアス電圧設計で決まる。ESD対策ではクランプやガードリングを用いる。

電力・エネルギーとの関係

瞬時電力p(t)=v(t)i(t)、平均電力P、皮相電力S、無効電力Qの区別が必要である。AC系では力率cosθが重要指標で、同じ電圧でも負荷の位相で実効電力は変化する。

安全と規格

IEC/JISではSELVやFELVなどの安全概念を定義し、感電限界電圧、過電圧カテゴリ、污染度、耐電圧試験方法を規定する。設計ではクリアランス・クリープ、パルスサージ、アーク対策、保護接地を満たす。

基本式の要点

  • 電圧の定義:V=W/q
  • 回路関係:V=RI、P=VI、P=V2/R、I=V/R
  • 空間微分:E=−dV/dx(1次元)
  • 分圧:Vout=Vin×R2/(R1+R2)、負荷ありはRinと並列

代表的な応用

  • ブリッジセンサ出力の微小電圧計測と計装アンプ
  • 電源のリップル・レギュレーション、ドロップアウト解析
  • ロジックレベルとマージン設計、インタフェース適合
  • 絶縁監視・耐電圧試験・部分放電の抑制