転がり軸受
転がり軸受は 軸に接する部分の摩擦を減らすために玉やころを用いた軸受である。摩擦係数が小さいために動力の損失が少ないため、潤滑やメンテナンスが容易である。複雑な構造をしているが、大量生産がすすみ、規格品も豊富で安価で販売される。高速で回転するため騒音や振動の原因になることが多いため、それが問題になる場合はすべり軸受を使うとよい
転がり軸受の構成
転がり軸受は、玉やころなどの転動体、転動体を取り囲んで玉やころが飛び出ないように一定間隔で配置・保持をする保持器、そしてその内外にあって転動体が転がる軌道輪で構成されている。中央部に軸を差し込むと摺動(しゅうどう)面が回転が伝わるが、摩擦が小さいためなめらかに軸が回転することができる。なお、軌道輪と転動体は、主に高炭素クロム軸鋼が使用されている。
転がり軸受の種類
転がり軸受は、単列深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、自動調心玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受、針状ころ軸受、スラスト玉軸受、スラスト自動調心ころ軸受などがある。
- 単列深溝玉軸受:一般的に使われている軸受。構造がシンプルで摩擦トルクが小さく、高速回転する箇所や低騒音、低振動が要求される用途に適している。ラジアル荷重と両方向のスラスト荷重を受ける
- アンギュラ玉軸受:ラジアル荷重と一方向のアキシアル荷重を同時に受けることができる軸受である。接触角(5°,25°,30°,40°) が小さいほど高速回転に適し、大きくなるほどアキシアル荷重の負荷能力は大きくなる。
- 自動調心玉軸受:外輪の内側が球面であるため、軸心が多少傾いても使用することができる。
- 円筒ころ軸受:転動体が円筒状のころを使用した軸受で、重荷重・高速回転に適している。
- 円すいころ軸受:転動体が円すい状のころを用いた軸受で、ラジアル荷重と1方向のスラスト荷重を受けることができ、重荷重・衝撃荷重に適している。
- 針状ころ軸受:直径が小さい針状のころを用いた軸受のため、省スペースで負荷にたえることができる。
- スラスト玉軸受:玉を転動体として用いた軸受で、単列のものは一方向の、複列のものは両方のアキシアル荷重を受けることができる。高速回転には向いていない。
- スラスト自動調心ころ軸受:自動調心性があり、また多少のラジアル荷重を受けることができる。
軸受ユニット
軸受ユニットとは、転がり軸受を立てて使用できるようにするためのユニットで動力伝達に広く利用されている。2か所のねじ止めを行うピロー形ユニットは一般に広く使われている。また、平面に取り付けるものをフランジ型ユニットという。
ピロー形ユニット
フランジ型ユニット
呼び番号
呼び番号は、軸受につけられている番号である。軸受系列記号・内径番号・補助記号からなる。
軸受系列記号
軸受系列記号は、形式記号(単列深溝玉軸受の最初の数字やころ軸受などの軸受の種類)と寸法系列記号(幅記号と直径系列記号)からなる。
軸受系列記号の例
内径番号
内径番号は軸受が取り付けられる軸の直径(軸受の内径)を表す記号である。内径番号04は、軸受が取り付けられる軸の直径が20mmであることを示している。(※内径番号20㎜以上500㎜未満では、内径番号を5倍としたものとなる。)(参考:軸受の内径番号)
補助記号
補助記号は、止め輪付き(NR)やシールド形(片シールド記号Z、両シールド記号ZZ)などを指定する記号である。たとえば、6204の軸受で止め輪付き両シールド形は、6204ZZNRのように表す。
仕様 | 内容または区分 | 補助記号 |
---|---|---|
内部寸法 | 主要寸法およびサブユニットの寸法が ISO 355に一致するもの |
J3 |
シール・シールド | 両シール付き | UU |
片シール付き | U | |
両シールド付き | ZZ | |
片シールド付き | Z | |
軌道輪形状 | 内輪円筒穴 | なし |
フランジ付き | F | |
内輪テーパ穴 (基準テーパ比 1/12) |
K | |
内輪テーパ穴 (基準テーパ比 1/30) |
K30 | |
輪溝付き | N | |
止め輪付き | NR | |
軸受の組合せ | 背面組合せ | DB |
正面組合せ | DF | |
並列組合せ | DT | |
ラジアル内部すきま | C2すきま | C2 |
CNすきま | CN | |
C3すきま | C3 | |
C4すきま | C4 | |
C5すきま | C5 |
精度等級
仕様 | 内容または区分 | 補助記号 |
---|---|---|
精度等級 | 0級 | なし |
6X級 | P6X | |
6級 | P6 | |
5級 | P5 | |
4級 | P4 | |
2級 | P2 |
基本定格寿命
基本定格寿命とは、同じ種類の軸受を同じ条件で個々に回転させたとき、90%の軸受が疲労による破損を受けないで回転できる総回転数(または一定回転速度における総運動時間)をいう。破損とは、内輪・外輪の軌道面または転導体表面にフレーキング(疲労によって表面がうろこ状にはがれる壊れ方)を示す。
基本動定格荷重
基本動定格荷重(Cr[N])とは、外輪を固定し、内輪を回転したとき、基本定格寿命が100万回転に耐えるような、方向と大きさが変動しないラジアル荷重(半径方向の荷重)である。
基本静定格荷重
基本静定格荷重(C₀r[N])とは、転がり軸受が静止した状態でラジアル荷重(半径方向の荷重)を受けるとき、接触している転動体(玉やころ)と軌道輪の永久変形の和が、転動体の直径の1万分の1になる荷重である 軸受の滑らかな回転を保証するために、軸受に加わる最大荷重がC₀rを超えないようにする。
動等価ラジアル荷重
ラジアル荷重Frとアキシアル荷重Faが、同時に軸受にかかっているとき、両者をラジアル方向の荷重に換算して寿命を計算する。このラジアル方向に換算した荷重を動等価ラジアル荷重という。
静等価ラジアル荷重
静等価ラジアル荷重P₀r[kN] は次のようになるが、基本静定格荷重C₀r[kN] より小さくなければならない。
基本定格寿命
基本動定格荷重Cr[kN]の軸受に、ラジアル荷重 (動等価ラジアル荷重) Pr[kN]が作用したときの基本定格寿命 L₁₀[単位10は10⁶回転] は次式で表される。
時間単位の基本定格寿命
時間単位の基本定格寿命は、L[h: hour,時間]で表す。L は、回転速度を n [min-1] とすれば、次のようになる。
許容回転速度
転がり軸受には、長時間運転ができる許容回転速度がある。
潤滑
保持器と転動体の摩擦などのために潤滑を行う。一般的に使われるグリース潤滑の他、油浴潤滑、滴下潤滑、噴霧(オイルミスト) 潤滑がある。
潤滑の種類
- グリース潤滑グリースによる潤滑
- 油浴潤滑最下点にくる転動体の半分を油に浸す潤滑
- 滴下潤滑 油をためるオイラから適量の油を滴下する潤滑
- 噴霧(オイルミスト) 潤滑:霧状の油を含む圧縮空気を吹きつけて、高速回転する軸受の冷却と潤滑を行う
転がり軸受の製図
転がり軸受の製図は下記の通り簡略図を用いる。