超音波溶接
超音波溶接とは、高周波振動エネルギーを利用して金属や樹脂などを接合する溶接技術である。金属の場合は、接合面に超音波による微小な摩擦力と局所的熱を発生させ、塑性流動を促進することで強固な接合を実現する。樹脂などの熱可塑性材料では分子鎖を振動でこすり合わせて短時間で溶融させ、溶着点を形成する。電気的導通や追加材料を使わずに接合できる点から、自動車産業やエレクトロニクス分野において広く採用されており、軽量化や品質向上を目的とした製品設計でも注目される技術である。
原理
超音波溶接の基本原理は、超音波振動子から発生する高周波振動(一般的には20kHz以上)をホーン(工具)を介して被接合材に伝えることである。接合面には振動エネルギーが集中し、摩擦や表面酸化膜の破壊が起こると同時に塑性変形が生じる。金属では分子間や結晶格子が密着し、樹脂の場合は局部加熱によって材料が溶融・再凝固して接合される。圧力をかけ続けることで、剥離強度やせん断強度に優れた接合部を形成できる特性がある。
Hのつぶやき
一般的なACアダプターは、プラスチックのカバーが上下合わさって作られています。カバーは、接着剤を使わず、超音波のエネルギーを利用した超音波溶接という方法を使ってくっつけます。耳が痛くなるくらいの高い音が発生するので、私は苦手な作業です(^^;; pic.twitter.com/XSSsw86WFL— 林 幸宏 (Yuki Hayashi) (@yhayashifrtt) July 16, 2020
振動と接合
超音波溶接における振動は主に縦方向に伝達されるが、ホーン先端の形状によっては回転振動や横振動に近いモードを利用する場合もある。高周波振動が接合面で激しい摩擦を生み、表面の酸化膜や不純物が除去されて純粋な金属同士、または溶融した樹脂同士が分子レベルで結合する。振動周波数や振幅は素材の特性や形状によって最適化され、適切な溶接時間と圧力の組み合わせが信頼性の高い接合の鍵とされる。
設備
一般的な超音波溶接装置は、発振器(Generator)、コンバータ(Converter)、ブースター(Booster)、ホーン(Horn)から構成される。発振器が高周波電気信号を生成し、コンバータで機械的振動に変換する。ブースターは振動振幅を増幅・減衰させ、ホーンは被接合材に直接接触して振動エネルギーを効率よく伝達する役割を担う。被接合材を載せるジグや固定具も重要であり、正しい位置決めや圧力制御ができるように設計される。
材料と適用分野
超音波溶接はアルミニウムや銅などの軟質金属、熱可塑性樹脂、複合材料など多岐にわたる素材に対応できる。金属薄板の積層接合や銅線の端子圧着などでは、はんだ付けを用いずに電気的導通を確保できるため、電子部品やバッテリ関連の製造で注目される。一方、熱可塑性樹脂に対しては短時間での溶着が可能で、医療機器や家電製品など密閉性や衛生面が重視される分野でも利用される。
フラウンホーファー、世界最大の熱可塑胴体製造に成功
従来比10%軽量化、自動位置決めやレーザー接合など
左側をレーザー溶接、右は超音波で溶接
10台のロボがサブミリ単位で位置合わせhttps://t.co/8CMaKCpnAe#熱可塑 #Fraunhofer #航空機 pic.twitter.com/3x0t7PTO2J— 【公式】航空新聞社 Wing(航空宇宙・防衛業界専門紙) (@wingnews) May 14, 2024
特徴
超音波溶接は他の溶接方式と比較して、接合スピードが速く、追加の接合剤やフィラーを必要としないという利点がある。さらに、接合時の温度上昇が局所的で短時間であるため、素材の寸法変化や熱影響を最小限に抑えられる。また、騒音や粉塵が比較的少なく、作業環境を清潔に保ちやすい点もメリットといえる。その一方で、ホーンの形状や超音波の周波数帯が素材や形状に大きく依存するため、事前の試験や最適化が不可欠となる。
自動車産業
近年の自動車産業では軽量化と信頼性向上が求められているため、アルミやマグネシウム合金などの薄板接合や、バッテリモジュール内のタブ接合に超音波溶接が広く利用されている。車載部品は厳しい振動や温度変化にさらされるが、超音波による接合部は機械的強度と電気特性の両面で優位性がある。また、ロボットアームによる自動化にも適しており、大量生産ラインへ導入しやすい点から高い評価を得ている。
エレクトロニクス産業
超音波溶接は電気的接触が重要となる小型電子部品やフラットケーブル、プリント基板上のコネクタ取り付けなどでも採用される。特にリチウムイオン電池の集電体やタブの接合は、抵抗値を低く抑えつつ安定した導通が必須であるため、高周波振動を用いた金属の緊密な結合が有効である。はんだ付けよりも熱負荷が小さいため、温度に敏感な電子部品やセンサ類を扱う場合でもダメージを最小限に抑えられるメリットが大きい。
安全管理
超音波溶接は高温火花や有害ガスを発生しにくいが、高い音圧レベルを伴う振動を扱う技術であるため、安全管理に注意を要する。ホーン周辺の直接的な接触を避けるためのカバーやフェンス、また作業者を耳障りな騒音から守る防音措置が必要である。超音波振動は機械的ストレスを発生させる場合もあり、長時間の連続使用では装置やホーンに疲労亀裂が生じる可能性がある。そのため定期的な点検やメンテナンスが欠かせない。