超音波厚さ計|配管や板材の厚さを非破壊で測る

超音波厚さ計

超音波厚さ計は、材料内部を伝搬する超音波の往復時間から厚さを算出する非破壊測定器である。母材に探触子(プローブ)を当て、結合材で音響結合を確保し、反射エコーの到達時間を高精度に計時する。塗膜や片側しかアクセスできない配管・タンクでも適用しやすく、減肉管理、品質保証、保全点検に広く用いられる。基本原理は単純だが、音速設定、表面状態、曲率、温度、減衰など実務要因の影響が大きく、適正な方式と探触子の選定、校正、測定手順の統制が精度を左右する。

測定原理

最も一般的なパルスエコー法では、探触子から短パルスを送信し、裏面で反射して戻るエコーの時間差から厚さを求める。理想化すれば厚さdは音速v、往復時間tを用いて d = v·t/2 で表される。音速は材質・温度に依存するため、既知厚さの標準片でゼロ調整と音速設定を行うか、規格値・材料表で初期値を与え現場温度に合わせて補正する。塗膜分離機能(multiple-echo)を備える機種では、塗装越しでも母材のみの厚さを抽出できる。

主な測定方式

用途に応じ方式が異なるが、保全や製造現場では次の類型が多い。

  • パルスエコー(接触法):片側アクセスで一般材に適用。厚板から薄板まで汎用。
  • デュアルエレメント:送受信素子分離で近表面感度を高め、粗面・腐食面で有効。
  • ディレイライン:樹脂延長体で近距離死角を縮小し、薄板や小曲率にも適合。
  • 高温用:耐熱ウェッジや特殊結合材で高温運転中のオンライン測定に対応。
  • B-scan出力:走査方向に沿った断面プロファイルを簡易表示し、減肉傾向を把握。

探触子と結合材

探触子は周波数と振動子径が性能を規定する。一般に2〜10 MHz帯を用い、薄板・高分解能は高周波、厚板・高減衰材は低周波が有利である。小径は狭所・小曲率向きだが音響出力は低くなる。結合材はグリセリン、プロピレングリコール、ゲル、オイル、専用高温タイプなどを使い、気泡を避けて薄く均一に塗布する。粗面や錆は軽研磨で鏡面化し、酸洗や過度の研磨で母材を減らさない。

校正と音速設定

計量トレーサビリティの観点から、厚さ既知の標準片でゼロ調整・音速設定・直線性確認を行う。実務では次の手順が有効である。

  1. 清浄化:測定点の汚れ・錆・塗膜の扱い方針を決め、必要に応じて塗膜分離機能を使用。
  2. ゼロ調整:機器のゼロ点を標準片または付属ブロックで補正。
  3. 音速設定:材質・温度に合わせて音速を入力し、既知厚さで微調整。
  4. 再現性確認:同一点で複数回測定し、ばらつきとドリフトを評価。

測定手順と実務上の注意

探触子を垂直に安定保持し、グリッド化した測定点を順番に記録する。曲面では最小曲率半径に注意し、必要なら小径・高周波の探触子へ切替える。塗装品は塗膜分離または塗膜除去後に母材を測定する。腐食減肉では局所的最薄部が重要で、サーチ走査と最小値ホールド機能を活用する。測定後は結合材を拭き取り、耐食性や衛生要件のある設備では残渣が残らぬよう清掃する。

誤差要因と補正

主な誤差は、音速の誤設定、温度勾配、表面粗さ、曲率、塗膜の影響、粒界散乱・減衰、カプラ不足、斜め入射などである。対策として、温度補正、表面仕上げの標準化、適正周波数とウェッジ選定、ゲートの最適化、複数エコーの整合確認、基準片での逐次点検を行う。腐食ピットでは超音波ビーム径より小さい凹みが平均化されることがあり、細かいピッチでの走査やB-scan表示で見落としを抑制する。

適用分野

超音波厚さ計は、配管・圧力容器・ボイラ・熱交換器・貯槽・船体・橋梁部材・鋳鍛造品・板金などで活躍する。製造では受入検査・工程内検査・出荷検査に、保全では経年減肉の傾向管理や余寿命評価に用いられる。非接液・片側アクセスの利点により、停止時間を最小化した点検計画を立てやすい。

仕様と選定ポイント

機種選定では、測定範囲、分解能、表示桁、直線性、最小測定可能厚さ、最小曲率、対応材質、塗膜分離有無、高温対応、データロガ・統計機能、B-scan、インタフェース(USB、Bluetooth)、保護等級、電池寿命、現場視認性(バックライト、アラーム)などを確認する。一般的な分解能は0.01 mmクラスで、薄板用途や研究用ではより高分解能のモデルもある。

データ管理とトレーサビリティ

多数点を測る現場では、測定点の座標・環境条件・探触子型式・音速設定・オペレータ情報を記録し、再測定時に同条件で比較できるよう管理する。グリッド測定、トレンド解析、しきい値アラーム、ヒートマップ化などの機能は、劣化の空間分布と時間変化を可視化し、保全意思決定を支援する。校正史・標準片のトレーサビリティを維持し、監査に耐える記録体系を構築することが望ましい。

関連知識(補足)

同じ超音波系でも探傷(欠陥検出)と厚さ測定は最適条件が異なる。厚さ管理では裏面反射の安定捕捉と時間計測精度が最重要で、近表面死角や粗面適合性を重視した探触子が有効となる。現場ではNDT教育、手順書、リスクアセスメントを整備し、装置の健全性と測定者の技能の両輪で品質を担保する。