設計品質|要求適合と信頼性をつくり込む

設計品質

設計品質とは、要求仕様を満たしつつ、安全・信頼性・コスト・生産性・保全性・環境適合などの多面的な品質特性を、設計段階で作り込む度合いである。製造で検査して良否を振り分けるのではなく、設計で不良を未然排除することが本質であり、Q(品質)・C(コスト)・D(納期)の同時最適化を狙う。そのために、要求定義から構想・基本・詳細・検証・移管までの設計プロセスを通して一貫した品質保証を組み込む。製品の価値最大化という観点では、企画段階からの製品設計と連続して考えるべき概念である。

目的と位置づけ

設計品質の目的は、ユーザー要求(機能・性能・使い勝手)と規制要求(安全・法規・規格)を満たし、かつ量産で安定再現できる「作りやすい」設計解を得ることである。ここで言う品質は出来栄えだけでなく、設計意図の明確化、図面やBOMの一貫性、検証計画の妥当性などのプロセス品質も含む。成果物としての仕様書・図面・3Dモデル・試験成績は、設計ドキュメントとして統制し、変更の履歴と根拠を追える状態にする。

品質特性の体系

  • 機能・性能:定格・許容差・ダイナミクス・効率など。
  • 信頼性・耐久性:MTBF、寿命、環境耐性、誤使用耐性。
  • 安全・法規:リスク低減、フェールセーフ、関連規格適合。
  • ユーザビリティ:操作性、保全性、誤操作防止、表示。
  • 製造性・組立性:DFM/DFA、公差設計、部品点数最適化。
  • 検査性:測定点の設計、治具前提、合否基準の明確化。
  • コスト・資源:材料・加工・治具・物流・在庫の最小化。
  • 環境適合:省エネ、リサイクル、RoHS/REACHなど。

プロセスと方法論

要求展開にはQFD、創造段階ではTRIZやモーフォロジー解析、潜在不具合の先取りには設計FMEAやFTA、設計妥当性はV&V(Verification & Validation)で確認する。検証は解析(CAE/公差解析)→試作試験→量産トライの順に強化し、節目ごとのDR(Design Review)でステークホルダーと合意形成する。レビューのエビデンスは設計レビュー記録に残し、是正・予防のクローズまで追跡する。

測定指標と可視化

  • 要求カバレッジ率:要求項目と設計・試験のトレーサビリティ。
  • 不具合密度:設計段階/試作段階/市場での発見数の推移。
  • 初回合格率:試験・量産トライの一発適合度。
  • 変更指示率:ECR/ECO件数、根本原因の分類(要件・設計・製造)。
  • リスク残余:FMEAのRPN合計、重大度×頻度×検出度の低減量。

可視化はカンバンやヒートマップでボトルネックを示し、ゲート審査で客観指標に基づく可否判断を行う。指標はプロジェクトの成熟度に合わせ定義し、定常運用で継続学習させる。

リスクと変更の管理

設計品質を脅かす主要リスクは、要求の曖昧さ、設計前提の齟齬、サプライチェーン制約、検証不足である。初期にリスク登録簿を作成し、FMEA・FTAで重要度順に対策する。設計段階での変更はECR(要求)→影響解析→ECO(実行)→検証→反映の順に統制し、BOM・図面・作業標準へ一貫反映する。

変更管理の要点

  • 影響範囲の明確化(機能、性能、コスト、納期、認証)。
  • コンフィグ管理(版数、適用時期、適用ロット)。
  • 再検証の定義(回帰試験、限界試験、代表性)。

製造・調達との連携

同時並行でのDFM/DFA検討、治具・測定設計の先行実施、調達可用性の確認は量産の安定性に直結する。設計と製造の早期協業は手戻りを大幅に減らし、トータル原価を下げる。具体的には設計製造連携と原価企画、工程能力による公差配分、代替材料の事前承認などを行う。価値向上の観点ではバリューエンジニアリングも有効である。

標準・規格との関係

品質マネジメントの枠組みはISO 9001に準拠し、設計・開発の計画、インプット/アウトプット、レビュー・検証・妥当性確認、変更管理を定義する。安全関連ではISO 12100、機能安全ではISO 26262/IEC 61508など、対象ドメインの規格を参照する。規格要求は設計要求として冒頭から取り込み、適合証跡を成果物に結び付ける。

データとツールの基盤

PLMで要求・BOM・図面・3D・試験を一元管理し、MBSEで要求—機能—論理—物理のトレーサビリティを確立する。CAD/CAEは解析条件・材料物性・メッシュなどの再現性を保ち、スクリプト化で属人性を下げる。成果物の体系化は設計ドキュメントに準拠し、検索性・再利用性を高める。

設計レビューと成熟度

ゲート型のDR(概念、基本、詳細、試作、量産)の各段で、論点リスト・チェックリスト・エビデンスを準備し、第三者視点での合意を得る。論理の飛躍や前提の齟齬を排し、重要仮説には実証を要求する。成熟度はTRL/DRLなどの指標で管理し、未達リスクは残課題として次段に持ち越さない。

用語上の注意

「品質」は結果品質とプロセス品質を含む概念であり、検査での合否や出来栄えだけではない。設計の妥当性は、解析・試験・レビューの三位一体で示す。また、構造の健全性や形状の合理性は構造設計形状設計の良否に依存するため、上流での設計意図の明確化が重要である。

以上の枠組みを通じて、設計品質は単発のチェックではなく、要求展開から妥当性確認、量産移管に至るまでの体系的マネジメントとして実現される。価値創出の観点からは、機能発想や原理選定を扱う創造設計と連動させ、早期の技術・コスト仮説検証を繰り返すことが効果的である。