荷重条件|実務で用いる許容応力と解析指針

荷重条件

荷重条件とは、構造物や機械要素に作用する外力・外圧・慣性力・温度差などの作用の内容、大きさ、分布、時間変化、組合せ規則を体系的に定める前提条件である。幾何形状・材料特性・支持条件(境界条件)と並ぶ設計の基本入力であり、これが不適切であれば解析や試験の結果は直ちに信頼を失う。設計基準では代表値、特性値、部分係数、組合せ係数を用いて常時・稀時などの状態を定義し、許容応力度設計や限界状態設計に接続する。実務では荷重ケースを明確に命名し、検証可能な根拠(仕様書、規格、実測、統計)で裏づけることが肝要である。

定義と位置づけ

荷重条件は、作用の種類(例:重力、圧力、熱)、作用点・作用面・作用線、空間分布(集中・線・面・体)、時間特性(定常・準静・時刻歴)、確率的性質(代表値、上限・下限)、組合せ規則(同時作用、排反、主・従)を含む概念である。評価指標は最大応力、たわみ、反力、座屈荷重、固有値変化、疲労損傷度などであり、サービス性(SLS)と終局(ULS)で要求が異なる。符号規約や座標系を事前に定め、誰が扱っても同じ解釈となるよう仕様書化する。

主な荷重の区分

  • 静的荷重:自重(死荷重)、搭載物・人荷(活荷重)、締結予荷重、内圧・外圧、面外圧力。
  • 動的荷重:地震、風、振動、衝撃、流体励起、移動荷重。時刻歴やスペクトルで表す。
  • 熱荷重:温度上昇・降下、温度勾配、熱膨張拘束による相当応力。
  • 回転由来:回転数に比例する遠心力、アンバランス、ジャイロ効果、トルク変動。
  • 磁気・電気・その他:電磁力、摩擦、毛細管力、真空差圧、製造時の組立応力。

用途ごとに支配的な作用が異なる。圧力容器では内圧と熱、回転機ではアンバランスと熱、電子機器では落下衝撃と熱サイクルが重要となる。

モデル化と表現

  • 空間分布:集中荷重(点・節点)、線荷重、面荷重、一様・台形・三角分布、体積力(重力)。
  • 時間特性:定常値、ランプ、矩形・正弦波、ランダム(PSD)。衝撃は等価静荷重やインパルスで近似する。
  • 数学表現:荷重ベクトル、モーメント、圧力(面正規方向)、慣性項(m・a)や減衰項(c・v)。
  • 境界入力:温度境界、変位・回転の強制入力、基礎加速度入力(地震)。

FEMでは圧力→節点等価荷重の換算、複数荷重の同時付与、スケーリング、位相差を明示する。符号と座標はモデル内で統一する。

設計における組合せ

荷重条件は単独ではなく組合せで評価する。常時(自重+常時温度)、風時(自重+風)、地震時(自重+地震)などのケースを定義し、限界状態設計では荷重係数γ、材料係数γm、組合せ係数ψを適用する。許容応力度設計では安全率で設計応力≦許容応力とする。片寄せ、偏心、局所効果の重畳は見落としやすいため、作用線・モーメント中心を図示して確認する。

支持条件・境界条件との関係

同じ荷重条件でも支持条件が違えば応答は変わる。固定端・ピン支持・ローラー支持・ばね支持・すべり拘束などの境界条件は、反力の流れと剛性分配を決める。過拘束は二次応力を生み、逆に拘束不足はたわみ過大を招く。設計段階で支持条件を過度に理想化しないこと、実機の柔らかさをばね要素で近似すること、熱膨張の逃げを考慮することが重要である。

解析手法と指標(手計算・FEM)

  • 梁・柱:集中荷重、等分布、三角分布、端モーメントに対するたわみ・曲げ応力・せん断応力を公式で評価。
  • 板・殻:面外圧力・面内荷重・座屈。境界条件に応じた近似解や数値解を使う。
  • FEM:荷重ステップ、サブケース、線形静解析、非線形(大変形・接触)、固有値、周波数応答、時刻歴。

評価指標は最大主応力、相当応力(von Mises)、たわみ、反力、接触圧、座屈固有値比、疲労損傷度(S-N、Miner則)などである。

設定手順の実務ポイント

  1. 要求仕様の読解:使用条件、環境、寿命、法規・規格の適用範囲を明確化する。
  2. 荷重リスト化:根拠、代表値、作用位置、分布、時間特性、発生頻度を表にまとめる。
  3. ケース編成:常時・稀時・試験時・輸送時を分け、命名規則とバージョン管理を行う。
  4. 座標・符号の統一:右手系、回転正方向、モーメント向きを図で固定する。
  5. 感度確認:代表荷重を±10〜20%振って応答変化を把握し、支配因子を特定する。
  6. トレーサビリティ:計算書・モデル・荷重根拠資料のリンクを残し、再現性を担保する。

よくある誤りと対策

  • 自重の二重適用:材料密度で重力を与えた上に別途重力荷重を入れてしまう。→どちらか一方に統一。
  • 分布→集中換算の誤り:等価節点荷重の配分をメッシュに適合させていない。→形状関数に基づき配分。
  • 熱の取り扱い:温度境界と熱荷重の混同。→温度場解析と構造解析の連成手順を整理。
  • 回転体の近似:アンバランスとジャイロ項の無視。→回転数依存の剛性・減衰をモデル化。
  • 衝撃の準静近似:インパルスが短いのに静解析で済ませる。→時刻歴解析または等価動的係数。
  • 組合せ漏れ:排反と同時作用を取り違える。→組合せ表で網羅し、レビューで確認。

根拠と規格の扱い

荷重条件は規格・ガイドライン・社内標準に依拠する。機械では取扱説明書・試験規格、建築・土木では設計基準、配管・圧力機器では圧力・温度・地震・熱膨張の組合せが定められる。根拠の明示と最新化、実測データの反映、保守運用フェーズのフィードバックにより、荷重設定の妥当性を継続的に高めることができる。