耐久消費財
耐久消費財とは、家計が購入する消費財のうち、1年以上にわたって繰り返し使用でき、比較的高価な商品を指す。代表例は自動車、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビ、家具などである。食品や日用品のように購入後すぐに消費される非耐久財と区別され、経済統計では個人消費の動きを分析する重要な指標として扱われる。購入頻度が低いぶん景気や税制の影響を受けやすく、製造業にとっては需要の波が大きい製品群でもある。
三種の神器から3Cへ――普及の歴史
日本で耐久消費財が家庭に広まったのは高度経済成長期である。1950年代後半には白黒テレビ・電気洗濯機・電気冷蔵庫が「三種の神器」と呼ばれ、生活水準の向上を象徴した。1960年代後半になると、カラーテレビ・クーラー・カー(自動車)の「3C」が新たな憧れの対象となる。内閣府は1957年から「消費動向調査」で主要品目の普及率を継続的に調べており、カラーテレビの普及率は1970年代半ばに90%を超えた。電気洗濯機や冷蔵庫はその後ほぼ100%に近い水準で推移している。
統計上の区分と他の財との違い
総務省の「家計調査」や内閣府の国内総生産(GDP)統計では、家計の支出を財の耐久性によって分類している。区分の考え方は次の表のとおりである。
| 区分 | おおよその使用期間 | 主な品目 |
|---|---|---|
| 耐久財 | 1年以上・高価 | 自動車、家電製品、家具、パソコン |
| 半耐久財 | 1年以上・比較的安価 | 衣類、靴、食器、スポーツ用品 |
| 非耐久財 | 1年未満 | 食料品、電気・ガス、医薬品 |
| サービス | 形のない消費 | 外食、交通、教育、医療 |
なお、同じ機械でも企業が事業のために購入すれば生産財や設備投資として計上される。営業車として買われた乗用車は減価償却の対象となり、家庭で使われる乗用車とは統計上の扱いが異なる点に注意したい。
景気変動との結びつき
買い替えを先送りしやすい。これが耐久消費財の大きな特徴である。所得の見通しが悪化すると家計はまず高額品の購入を控えるため、販売額は景気の先行きを映す鏡となる。内閣府の景気動向指数でも、耐久消費財出荷指数が一致系列に採用されている。
政策や税制による需要の山谷も顕著に現れる。2009年から2011年にかけて実施された家電エコポイント制度では、地上デジタル放送への移行と重なり薄型テレビの販売が急増した。消費税率が5%から8%に上がった2014年4月、8%から10%に上がった2019年10月の前後にも、自動車や白物家電で駆け込み需要とその反動減が観測されている。
買い替えサイクルの目安
内閣府の消費動向調査によると、主要家電の平均使用年数はおおむね10年前後で、乗用車は新車で13年を超える水準まで延びている。普及率が飽和した品目では、新規購入ではなく買い替え需要が市場の大半を占める。
メーカー側から見た製品寿命の設計
製造業の現場では、製品をどれだけ長く使ってもらうかが設計段階から問われる。家電メーカーは業界の公正競争規約に基づき、製造打ち切り後も補修用性能部品を一定期間保有しなければならない。期間は品目によって異なり、おおむね6〜10年程度に設定されている。この保有義務は在庫コストを押し上げる要因となるため、実務では複数機種で基板やモーターを共通化し、保管点数を抑える工夫が広く行われている。
安全面の規制も強化されてきた。2009年4月に施行された改正消費生活用製品安全法により、長期使用製品安全点検制度と長期使用製品安全表示制度が導入された。扇風機、換気扇、エアコン、洗濯機、ブラウン管テレビの5品目には「設計上の標準使用期間」の表示が義務づけられ、経年劣化による事故への注意喚起が図られている。部品の材料選定や耐久試験の条件設定は、この標準使用期間を前提に組み立てられることが多い。
近年は半導体の需給逼迫が完成品の生産計画を直撃する場面も目立った。2021年前後には車載用マイコンの不足で自動車メーカー各社が減産を余儀なくされ、給湯器や家電の納期も大幅に遅れた。部品点数の多い耐久財ほどサプライチェーンの寸断に弱く、調達先の分散や安全在庫の見直しが進んでいる。
廃棄とリサイクルの仕組み
使用期間が長い製品は、廃棄時の処理量も大きい。2001年4月に全面施行された家電リサイクル法は、エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目を対象に、小売業者の引き取り義務とメーカーの再商品化義務を定めた。排出者である消費者はリサイクル料金を負担する。自動車についても2005年施行の自動車リサイクル法により、シュレッダーダストやフロン類、エアバッグ類の処理費用を新車購入時に前払いする方式が採られている。
メーカーにとって、これらの法律は解体しやすい構造や再生材を使いやすい樹脂の選定を促す契機となった。ねじの種類を減らす、異種材料の接着を避けるといった易解体設計は、リサイクルプラントでの作業時間を短縮し、結果的に再商品化コストの低減にもつながる。
日用品との違いが生む市場の特性
消費財のなかでも耐久消費財は、価格に占める付加価値の比率が高い。省エネ性能や操作性、ブランドへの信頼が購入判断を大きく左右し、値下げ競争だけでは差別化が難しい分野である。たとえばエアコンでは通年エネルギー消費効率(APF)が比較の目安とされ、JIS C 9612などの試験規格に基づいて性能が表示される。冷蔵庫の年間消費電力量もJIS C 9801で測定方法が定められており、同じ容量帯でも機種ごとの差が数字として示される。
販売後の関係が長く続く点も見逃せない。修理、定期点検、延長保証、下取りといったアフターサービスは収益源であると同時に、次の買い替え時の指名購入につながる。B2Bの視点では、量販店との取引条件や延長保証の原価をどう見積もるかが、製品単体の利益率と同じくらい重視されている。
コメント(β版)