絶縁抵抗測定|漏れ電流を抑え設備信頼性向上

絶縁抵抗測定

絶縁抵抗測定とは、電気設備や機器の絶縁体がどれだけ電流を漏らさず耐えられるかを定量化する試験である。主に直流高電圧を印加し、漏れ電流から絶縁抵抗値(MΩ)を求める。新設時の受入検査、定期点検、改修後の健全性確認、トラブルシューティングに用いられ、劣化・汚損・吸湿・配線傷などによる絶縁低下を早期に検出する。計測結果は安全性、信頼性、保全計画の根拠となり、アークや感電、火災のリスク低減に資する。

測定の原理と機器

絶縁抵抗測定は直流印加により絶縁体を流れる漏れ電流(I)を測り、R=V/Iで抵抗値を算出する。使用機器はメガーメータ(megohmmeter)で、250・500・1000 Vなどの定格試験電圧を選択できる。高抵抗を正確に読むため、表面漏れを避けるガード端子付きが有効である。可搬型は配線・盤・電動機の現場試験に適し、据置型は高電圧機器や材料評価で安定した計測を行う。

測定対象と試験電圧の選定

  • 低圧屋内配線・盤(AC 100/200 V系):試験電圧500 Vが一般的
  • 制御回路・電子機器を含む脆弱回路:250 Vを選定し、適合性を事前確認
  • 高圧機器・コイル・ケーブル:1000 V以上を適用することがある(仕様に従う)

選定の基本は、定格電圧や絶縁種別、部材の耐電圧に合致させることにある。半導体素子を内蔵する装置は損傷リスクがあるため、メーカー指示や別法(低電圧漏れ電流法等)を検討する。

測定手順

  1. 遮断・無電圧化:主電源を開放し、ロックアウト・タグアウトを実施
  2. 残留電荷の放電:静電容量性負荷を短絡して安全を確保
  3. 配線分離:相間・対地を区分し、不要結合を外す
  4. リード接続:測定端子を被測定点へ、必要に応じガード端子で表面リークを遮断
  5. 印加・読取り:所定電圧を印加し、初期値と60 s値を読み取る
  6. 放電:印加停止後は必ず放電して次工程へ進む

判定基準と解釈

一般に値が大きいほど健全であるが、判定は規格・仕様に依存する。配線や小型機器では数MΩ以上を目安とし、大形巻線機器・ケーブルでは温度換算(例:20 ℃基準)や容量性の影響を考慮して評価する。経時での低下傾向、相間ばらつき、乾燥後の回復度合いなど、単発値よりトレンドが重要である。

誤差要因と対策

  • 環境:湿度・汚損・塩分が表面漏れを増大させる。清掃と乾燥で改善
  • 温度:温度上昇で抵抗は低下するため、温度補正や同条件再測を行う
  • 表面リーク:汚れ・水膜・端子露出で顕著。ガード端子と清掃で抑制
  • 容量性電流:印加直後の過渡で低めに読まれる。60 s値を採用し安定化
  • 配線結合:並列経路が混入すると値が下がる。回路分離と系統的切り分けが有効

時間依存特性の活用(PI・DAR)

巻線機器など容量性・吸収電流の影響が大きい対象では、時間比による健全性評価が有効である。PI(Polarization Index)はR60s/R10min、DAR(Dielectric Absorption Ratio)はR30s/R60sなどの比で表し、乾燥・清浄な絶縁ほど比が高くなる傾向を示す。定期点検では比のトレンドを管理し、劣化や吸湿の早期兆候を把握する。

配線・機器別の要点

  • 配線系:回路ごとの分離測定で不良区間を特定。照明・動力・情報系は個別評価
  • 電動機:U-V-W相対地・相間を測る。巻線温度と湿度の影響が大きく、乾燥処置で改善する場合が多い
  • トランス:一次・二次・鉄心対地を区分。巻線間の絶縁距離と含浸状態を確認
  • 電子機器:低電圧法や絶縁耐力試験との切替を検討。誤印加防止が最重要

安全対策とリスク管理

絶縁抵抗測定は直流高電圧を扱うため、感電・二次破壊・誤動作のリスクがある。必ず表示・遮断・施錠を徹底し、近接作業者への周知と立入管理を行う。印加後は十分な放電時間を取り、蓄電部の残留電荷を確認する。プローブ先端は被覆損傷や緩みがないか点検し、測定リードの取り回しは導通・接触不良を避ける。締結部材(例:ボルト)周辺の汚損・水濡れは表面リークの原因となるため、清掃・乾拭きを実施する。

品質保証・保全への活用

新設時は竣工検査の受入基準を満たすことを確認し、定期保全では時系列データで劣化傾向を管理する。異常低下が見られた場合は、区間切り分け→視認検査(端末処理・被覆傷)→清掃乾燥→再測の順に対処すると効率的である。計測記録には、試験電圧・値(初期/60 s)・温湿度・機器状態・処置内容を併記し、将来比較に備える。材料選定や防湿・防塵・結露対策、ケーブルルーティングの見直しなど、設計・施工・保守の各段階でフィードバックすることが設備信頼性の向上につながる。

トラブルシュートの勘所

同一系で一括低下する場合は環境・表面汚損、単一区間なら被覆損傷や端末不良を疑う。相間のみ低下する場合は配線混触、対地のみなら湿潤・導電性塵埃の付着が典型である。ガード端子を活用して表面経路を切り、内部劣化か外部リークかを切り分けると原因が絞り込める。

記録とトレーサビリティ

測定票は設備ID・回路名・地点・気象条件・作業者・器差校正情報を含めて管理し、保全システムに時系列登録する。閾値超過はアラート化し、傾向管理図で異常検知を迅速化する。これにより、予防保全・状態基準保全(CBM)への移行が容易となる。