管内圧力|配管内圧の基礎・計測・制御

管内圧力

管内圧力とは、配管やダクトなど閉じた導管内部の流体(液体・気体)が管壁へ及ぼす圧力である。設計・運転・安全の三要素を横断する基礎量で、配管強度(肉厚・材質・継手の許容)、流体輸送の動力(ポンプ・ブロワの選定)、計装(圧力計・安全弁)、品質管理(プロセス安定化)に直結する。単位はPaやMPaを用い、基準大気圧との差を示すゲージ圧と真空を含む絶対圧を厳密に区別する。静止流体では深さや密度・重力加速度で決まり、流動時には速度や損失を含めて評価する。実務では設計圧力・最高使用圧力・試験圧力を整理し、過圧・脈動・温度上昇・水撃などの異常を想定した余裕度を確保する。

基本概念と用語

内圧(管内の圧力)と外圧(外気など)との差としての差圧、ゲージ圧と絶対圧、さらに静圧・動圧・全圧を区別する。配管の高さ差が大きい場合は静水頭が効き、密度の高い液体では縦配管の圧力勾配が顕著になる。気体は圧縮性が高く、温度・体積変化の影響が大きい。実務文書では「内圧」「導管圧」「ライン圧」などが併用されるが、規格・図面では定義を明確にする。

ゲージ圧と絶対圧

ゲージ圧は大気圧基準で±を取りやすく現場指示に向く。一方、気体の状態方程式や真空域の評価、チョーク流判定では絶対圧が必須である。計装機器の仕様・演算・アラーム設定で基準の混同は重大な誤差となる。

静圧・動圧・全圧

全圧=静圧+動圧(½ρv²)。流速が上がると動圧が増し、曲がり・絞り・粗さで全圧が損失する。採圧位置やピトー管の向きが測定値を左右する。

支配方程式と圧力損失

理想的にはベルヌーイの定理で位置エネルギー・速度エネルギー・静圧の和が保存されるが、実際は摩擦と局所損失で減衰する。圧力損失の総和は動力要求と直結し、配管径・流速・粗さ・継手数の設計最適化が鍵となる。

Darcy–Weisbach式

直管損失はΔp=λ(L/D)(½ρv²)で表す。λはレイノルズ数Reと相対粗さε/Dの関数で、層流ではλ=64/Re、乱流ではColebrook–Whiteや近似式で求める。長大配管や高粘度流体では圧力降下が支配的となる。

局所損失

入口・出口・エルボ・ティ・バルブ・縮小拡大継手などはζ(½ρv²)の形で表す。開度や形状で係数が大きく変わるため、カタログ値や試験値を用いる。

材料強度と機械設計

内圧を受ける円筒はフープ応力(周方向)と縦応力(軸方向)を生じる。薄肉円筒近似ではσθ≈pD/(2t)、σL≈pD/(4t)。許容応力・溶接係数・腐食代・クリープや脆性破壊の可能性を加味して肉厚を決め、継手(フランジ・溶接)の強度も整合させる。

薄肉円筒と適用限界

t/D≪1で有効だが、高圧や大径・厚肉ではLame式など厳密解や有限要素法を用いる。開先形状や残留応力、熱膨張拘束の影響も無視できない。

耐圧・気密試験

完成後は設計圧力の一定倍率で水圧試験(静的)を行い、必要に応じて空気によるリーク試験を実施する。安全確保のため試験手順・遮蔽・昇圧速度を厳守する。

計測・計装と校正

圧力計にはブルドン管式、ダイヤフラム式、電気式トランスミッタ(ひずみ・ピエゾ・容量)がある。媒体の腐食性や温度に応じてシール方式や隔膜シールを選ぶ。脈動源(容積式ポンプなど)ではオリフィスやダンパで平滑化し、液柱高さ差の補正を行う。

センサ選定の要点

  • レンジ:最大圧の1.3〜2倍程度の定格を選ぶ
  • 精度:総合精度(直線性・ヒステリシス・温度影響)で評価する
  • 材質適合:接液部の耐食・耐摩耗・耐汚染
  • 環境:耐振動・IP等級・防爆

安全計装

過圧保護としてリリーフ弁・安全弁・ラプチャーディスクを配置し、遮断弁の誤操作や機器閉塞を想定したフェイルセーフ設計とする。

流体特性と現象

液体はほぼ非圧縮だが、急激な弁操作やポンプ停止で水撃(ウォーターハンマー)が発生し大きな内圧変動を生む。気体は圧縮性により配管弾性と相まって応答が緩和される一方、臨界流で下流条件が効かない領域がある。

キャビテーションとNPSH

ポンプ吸込で静圧が飽和蒸気圧を下回るとキャビテーションが生じ、騒音・振動・翼の損耗を招く。NPSHa≥NPSHrを満たすよう配管損失を抑え、液温を管理し、吸込高さを低くする。

チョーク流と臨界圧力比

気体のオリフィス・ノズルでは上流絶対圧に対する下流圧の比が臨界以下になると質量流量が上限に達する。配管計画では下流圧変動に対する感度低下を織り込む。

運用・保全とトラブル対策

温度上昇や閉塞、弁の急開閉で内圧が変動する。手順標準化、スロースタート、アキュムレータやエアチャンバの設置、ベント・ドレンの適所配置で異常圧を抑制する。定期校正とドリフト監視で誤検出を防ぐ。

水撃(サージ)対策

弁の開閉時間を管路の固有往復時間より長く設定し、緩閉弁・バイパス・サージタンクを併用する。長距離配管では区間分割と緩衝容積を検討する。

設計例のスケッチ

  1. 設計条件整理:媒体、温度、設計圧力、最大操作圧、配管ルート、許容騒音・振動
  2. 圧力損失見積り:Darcy–Weisbachと局所損失の和から必要揚程を算出
  3. 機器選定:ポンプ・バルブのCvや特性を流量域で検証
  4. 強度確認:薄肉円筒式で一次評価し、必要に応じて詳細解析
  5. 計装・保護:計測点・安全弁・ラプチャーディスクの配置と設定圧
  6. 試運転:エア抜き・昇圧手順・リークチェック・保護ロジック試験

規格・指針と実務の要点

配管・圧力設備はJISやISO、業界規格に準拠し、材料証明・溶接手順・非破壊検査・耐圧試験のトレーサビリティを確保する。計装信号や安全要求はSILやリスクアセスメントで裏付け、運転・保全の標準化文書に反映する。現場では騒音・振動・腐食・スケール・スラリーの堆積が内圧の動的挙動を変えるため、定点観測と傾向監視を継続する。