白金(Pt)
白金(Pt)は原子番号78の貴金属であり、優れた化学的安定性と耐食性、さらに高温下でも劣化しにくい触媒活性を併せ持つ希少材料である。密度は約21.45 g/cm3と高く、融点は約1768 ℃、面心立方構造による延性・展性の良さから、極細線や薄膜、精密部品へ加工しやすい。自動車の三元触媒、化学工業の酸化反応、PEM型燃料電池の電極、計測用のPt100抵抗温度計やPt–Rh熱電対、さらに医療・宝飾(Pt950等)まで用途は広い。非酸化性酸には侵されにくい一方、王水には可溶で塩化白金酸を生じる。資源は偏在し、副産回収とリサイクル技術が供給安定の鍵である。設計・運用では高価性、ガルバニック腐食の回避、回収設計を前提条件として扱うべき材料である。
概要
白金は元素記号Pt、原子番号78を有する遷移金属であり、密度が高く空気中で酸化されにくい特性を持つ。白金族に属するほかの元素と同様、化学的に安定で腐食耐性が高い一方、延性や展性があり加工しやすい点も特徴とされる。
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歴史
白金は古くから先住民によって装飾品の素材として利用されていたものの、ヨーロッパにおいては16世紀ごろから徐々に知られるようになった。スペインの探検家が南米で発見した際、銀に近い外観を持つものの溶融や鍛造が困難であったことから「小さな銀(platina)」と呼んだのが語源とされる。18世紀半ばにはヨーロッパの化学者たちが科学的に分析を行い、その独自の特性を解明するに至った。以後、錬金術や化学の分野で興味深い研究対象となり、産業革命を機に精錬技術が進歩することで徐々に商業利用が拡大していった歴史がある。白金族元素(Pt, Pd, Rh, Ir, Ru, Os)の中心素材として近代触媒化学や計測技術の発展を牽引した。貨幣・計量標準・化学工業での役割は現在も大きい。
物性
白金の融点は約1768℃であり、貴金属の中でも極めて高温に耐える金属である。硬度はそれほど高くはないものの、加工性や延性が良好で、鍛造や線引きなどさまざまな工法に対応しやすい。大気中での酸化や腐食に非常に強く、ハロゲン系の強酸や王水といった特殊な環境でない限り溶解されにくい。電気伝導性や熱伝導性は銅などに比べるとやや低いが、安定した触媒作用を持つため、化学反応を促進する役割を果たす領域で重要視される。さらに、表面状態や微粒子化によって機能特性が大きく変化することから、ナノテクノロジーの研究対象としても注目されている。
【モンゴル通信】
ホテルのロビーの天井画
現在のロシア、東ヨーロッパを統治していた時代のものらしい
が、余りにも壮大な歴史のため
それがどの時代か、私には不明😵💫
壁の装飾品、全て本物の金、銀
プラチナらしいが、モンゴルには
プラチナという言葉はなく
「白い金」と呼ぶらしい💫 pic.twitter.com/CsM2HBROjN— タエ (@hitorig18475962) February 28, 2023
>原子・物性データ
- 平均原子量:約195.08
- 結晶構造:面心立方(fcc)
- 密度:約21.45 g/cm3
- 融点:約1768 ℃
- 沸点:約3825 ℃
- 熱膨張係数:およそ8.8×10^-6/K
- ヤング率:160–170 GPa
- 電気抵抗率:室温で約1.06×10^-7 Ω·m
- 温度係数:安定
- モース硬度:4–4.5程度
- 冷間加工による加工硬化を示すが、適切な再結晶焼鈍により延性を回復
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化学的性質と反応
白金は常温常圧の大気中で酸化されにくく、塩酸・硫酸などの非酸化性酸に対して極めて安定である。一方、王水には溶解し、六塩化白金(IV)酸(H2PtCl6)を生じるほか、高温でハロゲンと反応してハロゲン化物を与える。触媒としてはH2の吸着・脱離、COの酸化、NOxの還元、さらにはORR/HERなどの電極反応に高活性であるが、S・Pb等の被毒種により活性が低下しうるため、前処理・浄化設計が重要となる。
採掘と精錬
白金は南アフリカ共和国やロシア、ジンバブエ、カナダなど、一部地域に埋蔵量が偏在していることが知られている。鉱床からの採掘には大規模な設備と労働力が必要であり、同時に採掘される白金族元素やニッケル、銅などを分離・精製するためには複雑な湿式精錬技術や火法精錬技術が不可欠である。採鉱・精錬工程では多額の設備投資と環境対策コストがかかり、需給バランスや地政学的リスクによって価格が大きく変動しやすい特徴がある。これらの要因は市場の不安定要素となることが多く、投資対象としての側面も強調されがちである。
資源、製錬、リサイクル
白金族金属(PGM)は鉱床の偏在性が高く、ニッケル・銅製錬の副産として回収される比率が大きい。製錬では溶錬・電解精製・溶媒抽出等を組み合わせ、高純度Ptを得る。需要の大宗を占める自動車触媒や燃料電池は寿命末期にスクラップ化され、担体からの回収、精製、再合金化によりクローズドループが形成される。供給リスクと価格変動を緩和するには、製品段階から回収容易性を考慮した設計(容易解体、識別マーキング)が有効である。
機械的性質と加工性
白金は粘り強く、板金加工、線引き、深絞りに適する。TIGやレーザによる溶接、ろう付けも可能で、清浄表面・不活性雰囲気を維持すれば継手性能は安定する。高温ではクリープや粒成長が進みやすいため、長時間使用部材では結晶粒径と析出相の管理が必要である。微細化・均質化加工により疲労強度と耐久性の両立を図れる。
主要用途
- 自動車三元触媒:CO/HC/NOxの同時制御にPt/Pd/Rhを組み合わせ、被毒と熱劣化を抑える担体・拡散設計が要点となる。
- 化学工業触媒:アンモニア酸化(オストワルト法)や部分酸化・水素化反応で用い、選択性と寿命の最適化を図る。
- 燃料電池:PEM型ではカソードORRの過電圧低減にPt/C触媒が標準で、合金化・合金核殻化によりECSAと耐溶出性を両立させる。
- 計測・制御:Pt100抵抗温度計、熱電対R/S/B(Pt–Rh系)、電解・pH参照用の不活性電極。
- 医療・宝飾:生体適合性と変色しにくさからインプラント部品やPt950ジュエリー、放射線マーカー等に用いられる。
#地球にじいろ図鑑 のオビの石🌈
白灰黒の章より「プラチナ」(和名:白金)
装飾品としてだけでなく白金触媒として科学技術に貢献。鉱石1トンあたり3グラムしか採取できません。テーマカラー:灰色
似た色の植物:アケビ、動物:ユキヒョウ
pic.twitter.com/UH68cRibop— 茜灯里 (@AkaneAkari_tw) June 20, 2023
合金設計と特性
- Pt–Ir:硬度・耐摩耗性を高め、電極・医療用ワイヤや計測プローブに適する。
- Pt–Rh:高温強度と酸化安定性に優れ、熱電対・炉材に用いられる。
- Pt–Co/Fe:磁性・触媒特性の制御に活用され、微粒子化で表面活性を拡大できる。
合金化は格子定数・電子構造・拡散係数を調整して活性・耐久性のトレードオフを最適化する手段である。微細構造制御(粒径、テクスチャ、析出分散)は高温クリープ、電極溶出、シンタリング抑制に寄与する。
表面・薄膜・電極設計
薄膜はスパッタや蒸着で形成し、下地との密着にはTi/Crのアンダーレイヤが用いられる。電極では白金黒やメソ多孔質Ptにより活性点密度(ECSA)を増大させ、担体炭素の腐食やPt粒子の粗大化を防ぐために耐酸化性担体(ドープ酸化物等)やイオノマー分布の最適化を行う。被毒除去には電気化学的クリーニングや酸処理が有効である。
電気化学・基準電極としての役割
白金は化学的に不活性な導体として基準反応の担体に用いられ、標準水素電極の実体として機能する。水素吸着・脱離の可逆性、低い接触抵抗、広い電位窓での安定性が強みである。実務では表面の清浄度管理(火炎焼成、酸洗浄)、微量不純物の制御、溶液撹拌と拡散制御が再現性を左右する。
環境・安全・規制
金属Pt自体の毒性は低いが、塩化白金酸など一部の可溶性錯体は感作性を示し得るため、粉じん・溶液の取り扱いには保護具と局所排気を要する。回収工程では還元剤や高温設備を用いるため、防爆・排ガス処理・排水中のPt回収が必須である。サプライチェーン上の盗難・紛失対策として、識別マーキングとトレーサビリティを設計段階から組み込むのが望ましい。
- 異種金属接触腐食:Ptは電位が貴で、接触相手(鋼・Al等)が犠牲側になりやすい。電気的絶縁や表面処理で対策する。
- 高温・被毒対策:触媒はS・P・Pb等を回避し、熱劣化を抑える担体・微細構造を設計する。
- リサイクル前提設計:回収しやすいモジュール化、材料表示、容易解体を採り入れる。
経済的側面
白金は希少性の高さから資産的価値を持ち、金や銀と同様に現物資産や先物取引の形で取引されることが多い。特に自動車や化学工業などの主要消費セクターにおける需要量が世界経済の変動と連動するため、需給バランスが崩れると価格が急騰・急落しやすい。さらに、主要産出国の政治情勢や地政学的要因にも左右されやすく、長期的な安定供給を図るためにリサイクル技術の開発や代替素材の研究が進められている。とはいえ、優れた触媒特性や装飾価値は他の金属では代替しがたく、依然として国際市場で高い注目を集める貴重な資源である。