熱応力|温度変化の膨張・縮小による材料内部に生じる応力

熱応力

熱応力とは温度変化によって膨張・縮小が繰り返される材料に対し、材料内部に生じる応力をいう。材料が拘束された状態において、温度上昇に伴い圧縮応力が、冷却に伴い引張応力が発生する。なお、材料の一部加熱などによって温度の不均一分布によって生じる応力熱応力と呼ばれる。

熱による膨張・縮小

材料の温度が上昇していると、原子の振動の振幅が増えるために物体は膨張する。逆に冷えると縮む。このことを利用して、瓶のふたが開けられないときに温めるなど利用される。

気球

気球は、気球内に熱を入れ、空気の熱膨張を利用して空に飛ぶ仕組みとなっている。そのため、ガスバーナーを強くするほど高く飛ぶことができる。

熱応力

両端を固定した鋼棒に生じる熱応力(σ)は、縦弾性係数(E)、線膨張係数(α)および温度変化(t₁-t₀)に比例する。熱応力は、材料の太さや長さには関係なく、材料の特性と温度変化によって決まり、横断面積に関係しない。

熱ひずみ

熱ひずみとは、温度変化により生じるひずみである。面積、体積、長さに関係なく、その材料の線膨張係数(熱膨張係数)と温度変化によってのみで決まる。線膨張係数(熱膨張係数)は材料固有の性質のため、材料によって、ひずみやすい・ひずみにくい材料がある。熱ひずみにヤング率(縦弾性係数)をかけたものが熱応力、長さをかけたものが材料の伸びになる。

熱応力による伸び

熱応力の伸びは、次式で表される。その材料の線膨張係数(熱膨張係数)によって伸びやすい・伸びにくい材料がある。

線膨張係数

線膨張係数(熱膨張係数)とは、温度が1度変化するときのひずみの変化である。+(正)のとき引張応力が働き、-(負)のとき圧縮応力が働く。線膨張係数が同じ材料を使うと、相互に熱応力の影響がおきにくい。下記に示す通り、その材料の固有の性質によるため、材料によって熱応力・伸び・ひずみが出やすい材料や出にくい材料がある。

線膨張係数(×10⁻⁶/K)
黄銅 18-23
ステンレス 17-18
鋳鉄 10-12
10-11
チタン 8.2
コンクリート 7-13
ガラス 9
石英ガラス 0.5

熱応力の例1

熱応力を検討するときの例である。材料は温度が高くなることで伸びていく。温度変化が大きい場合は、どれぐらい伸びるかを考えなければならない。材料の線膨張係数によって異なるため、同じ材料あるいは同じ線膨張係数の材料であれば、そこまで考えなくてもよいが、異なる場合は問題となる。

熱応力の例1熱応力計算

両端の壁に固定されているとき、引張応力ではなく、圧縮応力がかかるため、符号は-になる。

ヒートショック

ヒートショックとは、ガラスのコップに熱湯を入れるように急激な加熱(冷却)を加えたときにその材料が破壊される現象である。瞬間的に大きな熱応力が発生することによるもので、ヒータや高炉など大きな熱が加わるところには注意しなければならない。

異なる材料による破壊

セラミックス金属など線膨張係数が大きく異なる材料を接合する場合は、それが原因で破壊にいたることがあり注意が必要である。

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