段ボール|軽くて丈夫な紙製の梱包材

段ボール

段ボールは、波形に成形した中しん原紙の片面または両面にライナを貼り合わせた板紙であり、それを箱に加工した包装容器の総称としても使われる。軽量でありながら緩衝性と剛性を兼ね備え、輸送包装の主役として食品・家電・通販商品などあらゆる分野で利用されている。日本国内の生産量は年間およそ140億m2に達し、その大部分が古紙を原料として再生される循環型の資材でもある。

名称の由来と歴史

波形の紙の起源は1856年のイギリスにさかのぼる。エドワード・ヒーリーとエドワード・エリスが、シルクハットの内側に入れる汗取り用の波状紙で特許を取得したのが始まりとされる。1871年にはアメリカのアルバート・ジョーンズがガラス瓶の保護材として片面段ボールの特許を取り、1874年にはオリバー・ロングがライナを貼った改良品を考案した。日本での国産化は1909年(明治42年)のことである。井上貞治郎が東京で三盛舎を創業し、のちのレンゴー株式会社へとつながる事業を興した。当時は「なまこ紙」「波形紙」などと呼ばれていたが、井上は階段状の「段」とボール紙の「ボール」を組み合わせ、段ボールと名付けたと伝えられている。

ライナと中しんの構造

構成材料は2種類しかない。表裏の平らな紙「ライナ」と、波形に加工された「中しん」である。ライナはクラフト紙系の強い原紙で、品質はJIS P 3902に規定され、坪量は160〜280g/m2程度のものが多い。中しんはJIS P 3904で規定され、120〜180g/m2前後が標準的な範囲となる。貼り合わせの組み合わせにより、片面段ボール、両面段ボール、複両面段ボール(ダブルフルート)、複々両面段ボール(トリプルフルート)に分類される。断面を見ると、波形の中しんが連続したアーチを描いている。このアーチが荷重を分散するため、薄い紙の積層体でありながら高い圧縮強度が得られるのである。

フルートの種類と使い分け

波形の山を「フルート」と呼び、その高さと密度によって記号が付けられている。代表的なものを次の表に示す。

フルート 段の高さ(目安) 30cmあたりの段数 主な用途
Aフルート 約4.5〜4.8mm 約34段 一般的な外装箱、重量物
Bフルート 約2.5〜3.0mm 約50段 青果物箱、内装箱、仕切り
Cフルート 約3.5〜3.7mm 約40段 欧米の外装箱(国内では少数)
Eフルート 約1.1〜1.6mm 約93段 化粧箱、通販用の個装箱
ABフルート(W) 約8mm — 機械部品、輸出梱包

国内の外装箱はAフルートが主流で、段が細かいBフルートやEフルートは表面が平滑なため印刷の仕上がりがよい。設計の現場では「強度が足りなければWフルートへ」と安易に切り替えがちである。しかしWフルートは材料費が単一フルートの1.5倍を超えることも珍しくなく、まずライナの坪量を上げて対応できないかを検討するのが実務上の定石とされる。

コルゲーターによる製造工程

シート状の段ボールは、コルゲーターと呼ばれる全長100mを超える連続ラインで製造される。高速機では毎分300m以上の速度で生産でき、おおまかな工程は次のとおりである。

  1. ロール状の原紙を蒸気で予熱し、水分と温度を整える
  2. シングルフェーサで、約170〜180℃に加熱した段ロールに中しんをかみ込ませて波形を付ける
  3. 段の頂部にでんぷん系の接着剤を塗り、片面ライナと貼り合わせる
  4. ダブルフェーサで反対側のライナを貼り、熱板上で糊を糊化・乾燥させる
  5. スリッタースコアラで罫線を入れ、カッターで所定の長さに切断する

この後、製函工程で印刷・打ち抜き・糊付けを行って箱に仕上げる。印刷には水性インキのフレキソ印刷が広く採用されている。

箱の形式とJIS規格

箱の形式はJIS Z 1507で体系化されており、欧州のFEFCOコードと同じ4桁の番号で表される。最も普及しているのは0201形の「溝切り形」で、一般に「A式」や「みかん箱」と呼ばれる。上下のフラップを折り込んでテープで封をするだけの単純な構造で、材料取りに無駄が少ない。ふたと身が分かれる0300番台の「かぶせ式」、1枚のシートで商品を包み込む0400番台の「組立式」も用途に応じて使われる。外装用の材質についてはJIS Z 1516が規定しており、破裂強さや厚さなどによって種類が区分されている。

現場での形式選定

自動製函機や封函機を導入している工場では、設備が対応する形式やサイズ範囲が限られる。新製品の梱包を設計するときは、ライン側の対応寸法を先に確認しておかないと、手作業での組み立てが残ってしまう。

強度設計と湿度の影響

倉庫で箱を段積みする場合、最下段の箱には上の箱すべての重さがかかる。そこで設計では、JIS Z 0212に基づく箱圧縮試験の値をもとに、次のような考え方で必要強度を見積もる。

Preq = W × (n − 1) × k
Preq:必要な箱圧縮強度、W:1箱あたりの荷重、n:段積み段数、k:安全率

安全率kには3〜5程度を見込むのが一般的である。理由は湿度にある。紙は吸湿すると急激に弱くなり、相対湿度が50%から90%に上がると、圧縮強度は標準状態のおよそ半分近くまで落ちることがある。冷蔵倉庫や梅雨時の輸送では含水率の上昇を前提に設計しなければならない。パレットからのはみ出しや、フォークリフトでの荷役時の衝撃も強度を目減りさせる要因で、計算上は余裕があっても実際の物流現場で潰れる例は少なくない。

古紙回収とリサイクルの仕組み

使用済みの段ボールは回収率が95%を超え、国内でも特にリサイクルが進んだ資材の一つである。回収された古紙は離解してパルプに戻され、再びライナや中しんに抄き直される。段ボール原紙に占める古紙の割合は90%を上回り、新たな木材パルプの投入はごくわずかで済む。ただし、ロウ引きの耐水段ボールやアルミ蒸着品、ラミネート加工品は製紙工程で異物となるため、通常の古紙回収には出せない。発送側の企業でも、粘着テープや送り状を外す運用を徹底すれば、回収業者からの評価が上がり、引き取り単価にも影響する。

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