機能系統図
機能系統図(きのうけいとうず)とは、その製品に対して、すべての機能について機能面のつながりを明確化し、設計仕様に至るまでの機能のつながりを展開していく図解手法である。製品やサービス、あるいは業務プロセスが果たすべき様々な「機能」を抽象的に抽出し、それらの相互関係を論理的な階層構造として体系的に整理・可視化していく。主に価値工学(VE:Value Engineering)の分野において、製品の本来の目的を達成するための必要不可欠な機能を明確化し、コストダウンや性能向上に向けた設計の最適化を図るための強力な分析ツールとして広く用いられている。全体の構造は「目的(Why)」と「手段(How)」の連鎖関係によって結ばれており、最上位に位置する基本機能から、それを実現するための二次機能、三次機能へと木の枝が広がるように細分化されて展開されるのが特徴である。この図解を用いることで、開発チームは物理的な形状や既存の部品構成にとらわれることなく、本質的に何が必要なのかという根本的な問いに立ち返り、革新的なアイデアを創出するための土台を構築することが可能となる。
価値工学における位置づけと目的
この分析手法を導入する最大の目的は、現状の設計や仕様に潜む無駄な機能や過剰な品質を洗い出し、最小の原価で最大の顧客価値を生み出すための道筋を明らかにすることにある。複雑な製品を構成する要素を物理的な素材の集まりとしてではなく、「光を放つ」「熱を逃がす」「動力を伝える」といった名詞と動詞の組み合わせによる純粋な機能として定義し直すことで、既存の構造に対する先入観を完全に排除できるのが大きな利点である。また、複数の技術者や部門が参加するプロジェクトにおいては、製品全体の機能の全体像と個々の機能の重要度を客観的に共有できるため、共通認識を形成するためのコミュニケーションツールとしても極めて有効に働く。特定の機能に過剰なコストがかかっているボトルネックを発見し、それを代替する安価で効率的な別の手段へ置き換えるための発想を促すトリガーとなるのである。
私もドライバーの機能を機能系統図を使ってひもといてみました。機能系統図って、何にでも使えて便利ですね!! #機能 #機能系統図 #VE #問題解決 清水い pic.twitter.com/FmeR7FtrlN
— 価値デザイン向上委員会 (@VEmarketing2023) June 2, 2024
基本機能
基本機能から機能を細分化していくが、それぞれの基本機能を成立させるためには複数の機能が求められる。シンプルな構造の製品であっても単一の技術で成立していることはなく、複数の機能を複合して基本機能を実現している。機能系統図ではそれぞれに対してそれを実現するための具体的な構造、制御、評価、それぞれを検討していく。
現在ちょうど、ガラパゴス化されている部門の機能系統図の作り直しを行なっています。
改めて、端的に機能を明文化していくことに苦戦中です。
地道に進めていきたい次第です。— Satoru.K@パパ6年目エンジニア (@192Sato) June 29, 2023
論理展開
機能系統図における論理の組み立ては、一般的に左から右、あるいは上から下へと展開される厳密な因果関係のルールに基づいている。ある特定の機能に着目した際、「なぜ(Why)その機能が必要なのか」と問いかければ上位の目的機能に到達し、「どのように(How)その機能を実現するのか」と問いかければ下位の手段機能へと分岐していく。この連鎖関係を視覚化した代表的なフォーマットが「FAST(Function Analysis System Technique)」と呼ばれる手法である。FASTダイアグラムでは、製品の存在理由そのものである「基本機能」を左端に配置し、そこから右に向かって具体的な構成要素レベルの機能へと展開していくことで、設計の妥当性を一目で検証できるよう構成されている。このHow-Whyの論理チェックを繰り返すことで、本来不要であるにもかかわらず習慣的に組み込まれていた機能や、目的と手段の関係性が破綻している矛盾箇所を確実に見つけ出すことが可能となる。
作成の具体的な手順とプロセス
- 対象となる製品やシステムを構成するあらゆる要素を洗い出し、それぞれの働きを名詞と動詞の組み合わせによる簡潔な表現で純粋な機能として言語化するブレインストーミングを徹底的に実施する。
- 抽出された無数の機能をカードなどに書き出し、類似の働きを持つもの同士をグループ化して整理し、機能間の依存関係を厳密に分析して重要度に応じて基本機能と補助機能に分類していく。
- 上位の目的から下位の手段へと「なぜ(Why)」「どのように(How)」の論理で矛盾なく繋がるようツリー状に結びつけて図解を完成させ、抜け漏れや論理的な飛躍がないかをチーム全体で再検証する。
コア技術
コア技術は複数の技術の中でも、もっとも重要な核心的な技術であるが、これを正確に把握することが重要である。機能系統図ではコア技術を体系化することで、自らの技術のなにが強みかを理解することができる。
コア技術の要素
- コア技術名
- 実現可能な機能
- 具体内容
- 製品例
- 設計内容評価内容
類似手法との比較と使い分け
しばしば混同される類似の手法としてロジックツリーやマインドマップが存在するが、それらとは明確な適用範囲と目的の違いがある。前者が主にビジネス上の問題解決において原因究明や解決策を網羅的(MECE)に分解していくのに対し、機能系統図はあくまで工学的な「機能」の因果関係の整理に特化している点が大きな特徴である。また、マインドマップが中心のテーマから放射状に自由な連想を広げていく柔軟な思考法であるのとは対照的に、本手法は厳格な論理的整合性が求められるため、高度なシステムエンジニアリングが要求される大規模な開発プロジェクトでの仕様策定において、その真価を最大限に発揮する。
【製造業あるある】
創作するとき
・品質機能展開を使い、どういう基本設計がコスト的に妥当か考える
・各国の政治力から規格争いなどの背景を考える
・保全性やユーザーフレンドリーを考慮した設定を考える
・技術発展史を考え、旧世代からの技術系統図を考える
ですかね https://t.co/pz3d5vrwc5— 円宮模人@ 新社会人×バディ×ロボアクション小説掲載中 (@madomohito) December 27, 2023
製造現場や製品設計での活用事例
現代の日本の製造業において、グローバル市場での熾烈な価格競争と品質要求の両立を実現する上で、この図解手法の重要性はますます高まっている。例えば、自動車のエンジン冷却システムを見直す際、「ラジエーターを取り付ける」という部品単位の思考ではなく、「温度を下げる」という抽象化された機能レベルからシステム全体を俯瞰し直すことで、部品点数の劇的な削減や、従来とは全く異なる新しい冷却機構の発明へと繋がるケースが少なくない。さらに、各機能が全体に占める重要度と、そこに投下されている実際のコストを対比させることで、重点的にコスト削減に取り組むべき領域を定量的に特定できる。このように、単なる図表の作成にとどまらず、組織全体の価値創造プロセスを根本から変革し、製品競争力を飛躍的に高めるための戦略的なエンジニアリング手法として定着しているのである。
機能の系統図を作る時に大事なことは、自社製品だけで作らない事だと思う。多くの中小企業はB to Bの製品を作っているだろうから、その場合は最終形の形もしくは、自社製品が組み込まれた形は広げて系統図を作るべき。そうする事で自社製品に求められる要求を推測する事が出来るんじゃなかろうか
— 熊野コミチ@実験計画法の伝道師 (@gRDQJkozHInWFxI) February 9, 2025
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