来島大橋|世界初、三連吊り橋が繋ぐ瀬戸内の絶景

来島大橋

来島大橋/strong>(くるしまおおはし)は、愛媛県の今治市と瀬戸内海に浮かぶ大島を結ぶ、世界初の三連吊橋である。西瀬戸自動車道(通称しまなみ海道)を構成する重要な橋梁の一つであり、来島海峡第一大橋、来島海峡第二大橋、来島海峡第三大橋という三つの長大吊橋の総称として知られている。全長は約4,105メートルに達し、海峡の急流と多島美が織りなす壮大な景観の中に位置している。本州と四国を結ぶ交通の要衝であるだけでなく、自動車用道路に加えて自転車歩行者道や原動機付自転車道が併設されていることから、国内外のサイクリストが集う聖地としても世界的にも名高い。

地理的環境と来島海峡

橋が架かる来島海峡は、鳴門海峡や関門海峡と並んで日本三大急潮の一つに数えられる海の難所である。狭い海域に武志島や馬島などの多数の島々が点在し、複雑な海底地形が潮の流れを速くしており、最大潮流速は10ノット(秒速約5メートル)にも達する。同時に、1日あたり約1,000隻もの船舶が行き交う瀬戸内海上交通の最重要拠点でもあるため、架橋にあたっては大型船舶の安全な航行を妨げないよう、海面から橋桁までのクリアランス(桁下高)が約65メートルという十分な高さで確保された。周辺は瀬戸内海国立公園に指定されており、豊かな自然環境と調和するよう、巨大構造物でありながら周囲の景観に配慮した設計が採用されている。

構造と技術的特徴

本橋は、長大な三つの吊橋が海上で連続するという世界初の構造を採用している。それぞれの構成は、大島側から順に、3径間2ヒンジ補剛箱桁吊橋である第一大橋(橋長960メートル)、2径間2ヒンジ補剛箱桁吊橋である第二大橋(橋長1,515メートル)、単径間2ヒンジ補剛箱桁吊橋である第三大橋(橋長1,570メートル)となっている。海峡に吹き抜ける強風や大規模な地震に対する高い安全性を確保するため、橋桁の断面には空気力学的安定性に優れた扁平六角形断面の鋼製箱桁が採用され、スレンダーで優美なシルエットを実現している。また、海塩粒子の影響を受けやすい過酷な海洋環境下にあるため、メインケーブルの表面をS字ワイヤーラッピングで覆い、ケーブル内部に乾燥空気を送り込むシステムなど、長寿命化に向けた高度な防錆技術が導入されている。

建設の歴史と全線供用

架橋に向けた調査や計画は昭和時代から長年にわたって進められてきたが、本格的な着工を意味する起工式は1988年(昭和63年)5月15日に行われ、現地での下部工工事は1990年(平成2年)に開始された。海上の厳しい気象条件や予測困難な急潮流、さらには複雑な海底岩盤という数々の難題を克服しながら、約9年の歳月と当時の最先端の土木技術を結集して建設が進められ、1999年(平成11年)5月1日に全線供用開始となった。この完成により、瀬戸内海を横断する尾道・今治ルートが一本の道で繋がり、物流の効率化や観光産業の振興、地域住民の生活圏の拡大に多大な貢献を果たした。なお、本橋梁群はその優れた技術と景観美が高く評価され、同年の土木学会田中賞(作品部門)を受賞している。

西瀬戸自動車道としまなみ海道

本橋が属する西瀬戸自動車道は、広島県尾道市から愛媛県今治市に至る全長約60キロメートルの自動車専用道路である。「瀬戸内しまなみ海道」の愛称で広く親しまれており、本州四国連絡橋の3ルート(神戸・鳴門ルート、児島・坂出ルート、尾道・今治ルート)のうち、最も西側に位置している。他の2ルートが鉄道や自動車専用の橋梁で構成されているのに対し、しまなみ海道は原動機付自転車や自転車、歩行者が通行可能な専用の側道が併設されている点が最大の特徴である。中でも本橋梁群はルート全体の総仕上げにして最大の規模を誇る橋として建設され、その開通をもってしまなみ海道の全線が開通するという歴史的な意義を持つ。

観光資源と地域の歴史文化

開通以降、その圧倒的なスケールと多島美が織りなす景観から、四国地方を代表する観光名所として定着している。橋上からは瀬戸内海の島々や行き交う船をパノラマで一望でき、中間の馬島には専用のエレベーターを利用して降りることも可能である。夜間には定期的にライトアップが行われ、海峡の暗闇に巨大な主塔とケーブルが浮かび上がる幻想的な姿が人々を魅了する。さらに、周辺海域は中世において瀬戸内海の制海権を握った村上海賊の拠点としても知られ、彼らが活躍した複雑な潮流を上空から観察できる歴史ロマンにあふれる地域でもある。現在ではインフラツーリズムの対象としても高い注目を集めており、普段は立ち入ることのできない主塔の頂上に登る塔頂体験ツアーや、橋の真下をくぐる遊覧船など、海と空の両面から巨大インフラの魅力を体感できる様々な取り組みが活発に行われている。

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