接点
接点とは、電気回路の中で導体どうしを機械的に接触・開離させ、電流を流したり止めたりする部分を指す。リレーや押しボタンスイッチ、電磁接触器、配線用遮断器など、開閉機能をもつ電気機器のほとんどに組み込まれている。接触面は平らに見えても、ミクロに観察すると表面の突起どうしが点で触れ合っているにすぎない。このため接触抵抗、アーク放電、表面皮膜の生成といった特有の現象が起こり、材料と負荷条件の組み合わせが製品寿命を大きく左右する。理論面では、スウェーデン出身の物理学者ラグナー・ホルムが1946年に刊行した『Electric Contacts』が、現在も電気接触工学の基礎文献として参照されている。
a接点・b接点・c接点の違い
動作のしかたで分けると、接点は3種類に大別される。操作されていない状態で開いており、コイルの励磁やボタンの押下で閉じるものがa接点(メーク接点、NO:Normally Open)である。逆に、ふだんは閉じていて操作時に開くものをb接点(ブレーク接点、NC:Normally Closed)と呼ぶ。c接点(切換接点)は共通端子1本に対してa側・b側の端子をもち、合計3端子で回路を切り替える。図記号はIEC 60617と整合したJIS C 0617で定められ、シーケンス図では「無通電・無操作」の状態で描くのが約束になっている。非常停止回路にb接点を使うのは、配線が断線しても停止側へ倒れるフェールセーフを確保するためで、IEC 60947-5-5は非常停止用押しボタンに直接開路動作を備えたb接点を要求している。照明制御で使われるタイマー付スイッチも、内部ではリレーのc接点で負荷側を切り替える構造が多い。
接触抵抗はどこから生まれるのか
2枚の金属を押し付けても、電流が実際に通る「真実接触面積」は見かけの面積の1%に届かないことが珍しくない。電流は微小な接触点へ絞り込まれて流れ、そこで集中抵抗と呼ばれる成分が生じる。表面に酸化膜や硫化膜があれば皮膜抵抗も上乗せされる。接触力を高めると突起がつぶれて接触点の半径が広がり、抵抗は下がる。小形リレーのカタログでは初期接触抵抗を「100mΩ以下(DC6V・1A電圧降下法)」のように表記するのが一般的である。箱開閉器のナイフスイッチでは、刃と刃受のばね圧が接触力を担っており、刃受の焼けや変形はそのまま発熱につながる。接触抵抗がわずか10mΩでも、30Aを流せば発熱は9Wに達する。端子台や遮断器の締付不良が盤内焼損の典型原因とされるのは、この電力損失が局所に集中するからである。半径aの円形接触点が1つだけある場合、集中抵抗Rcは次式で近似できる。
Rc = ρ / (2a) (ρ:接触材料の抵抗率)
アーク放電と接点の消耗
通電中に接点を開くと、離れる瞬間の微小ギャップに電流が集中し、金属蒸気を介したアーク放電が発生する。銀の場合、最小アーク電圧は約12V、最小アーク電流は約0.4Aとされ、これを上回る条件ではアークを避けられない。交流は50Hzなら10msごとに電流ゼロ点が訪れるため、アークは自然に消えやすい。直流にはゼロ点がない。同じリレーの定格が「AC250V 10A」なのに「DC30V 10A」に抑えられているのは、このためである。ソレノイドやモータなどの誘導負荷では、遮断時の逆起電力がアークを長引かせるので、DC回路ならダイオード、AC回路ならCRアブソーバを負荷側に並列接続して保護するのが現場の定石となっている。直流ではアーク熱で材料が片側へ移る「転移」も起き、陽極側にクレーター、陰極側に突起が育って最終的に溶着を招く。
接点材料の選び方
材料は導電性、耐アーク性、耐溶着性、皮膜のできにくさのバランスで選ばれる。代表的な材料の特徴を下表に示す。
| 材料 | 長所 | 弱点 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 純銀(Ag) | 導電率が金属中で最高 | 硫化しやすく、溶着も起こりやすい | 小〜中容量リレー |
| 銀ニッケル(AgNi) | 耐消耗性が高く加工しやすい | 大きな突入電流には不向き | 汎用リレー、マイクロスイッチ |
| 銀酸化すず(AgSnO2) | 耐溶着性に優れ、突入電流に強い | 接触抵抗がやや高い | 電磁接触器、ランプ負荷用リレー |
| 金・金合金 | 酸化皮膜ができにくい | 軟らかく、大電流で消耗が速い | 信号用リレー、コネクタ |
| タングステン(W) | 融点約3,400℃で耐アーク性が高い | 酸化しやすく接触抵抗が高い | 高電圧開閉、点火装置 |
かつて電力用で主流だった銀酸化カドミウム(AgCdO)は、2006年施行のEU RoHS指令でカドミウムが規制対象となり、AgSnO2への置き換えが進められた。LED照明の普及で電源のコンデンサ充電による突入電流が増え、耐溶着性の高い材料の需要はむしろ伸びている。
クラッド接点とめっき接点
リレーの接点は、銅合金のばね材に銀合金をリベットかしめやクラッド圧延で接合するのが一般的である。信号用途では、その表面に金めっきを0.1〜1μm程度重ねる構成が多い。コネクタ端子では銀めっきやすずめっき、パラジウムめっきが使い分けられ、摺動回数の多いスリップリングには硬さを生かしたロジウムめっきが選ばれる。調達の立場では、金めっき厚を0.1μmから1μmへ上げると部品単価が目に見えて跳ね上がるため、必要な挿抜回数と使用環境から厚さを逆算し、図面で下限値を指定するのが実務的なやり方である。
微小負荷で起こる接触不良
大電流用の銀系接点を、PLC入力のようなDC5V・1mA程度の微小負荷に流用すると、表面の硫化膜を電気的に破壊できず導通不良が起こる。各社のカタログに「最小適用負荷(参考値)DC5V 10mA」などと記されているのはこの現象への注意喚起で、これより小さい負荷では金クラッドやツイン(二股)構造の製品を選ぶのが基本となる。温泉地の工場や下水処理設備の制御盤では硫化水素による銀の黒変が速く、通常の数分の一の期間で不良が出た例もある。シリコーン系シーラントから揮発する低分子シロキサンも厄介で、アーク熱で分解して絶縁性の二酸化けい素を表面に堆積させる。盤内のコーキング材を選ぶ段階から配慮しておけば、こうしたトラブルの多くは防げる。
寿命の考え方と故障解析
リレーの寿命は、無負荷で開閉させる機械的寿命と、定格負荷をかけた電気的寿命に分けて表示される。機械的寿命が2,000万回でも、電気的寿命は10万回程度にとどまる機種は珍しくない。現場で回収された不良品は、おおむね次のモードに分類できる。
- 皮膜生成による接触不良(硫化・酸化・シロキサン付着)
- アーク熱による溶着(開放しない故障)
- 材料の消耗によるギャップ拡大と接触力低下
- 直流負荷での転移によるクレーター・突起の成長
- 摩耗粉や異物の噛み込みによる断続的な導通不良
原因を特定するには、まず実体顕微鏡で外観を確認し、続いてSEM観察で溶融痕や異物の形態を調べる。皮膜の正体を突き止める段階では、XPS分析で硫黄やけい素の化学結合状態を確認する手順がよく採られる。故障モードが分かれば、材料変更、保護素子の追加、負荷条件の見直しのどれが有効かを判断でき、同じ不具合の再発を防ぐ対策につながっていく。
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