拡散層|半導体構造における重要な領域

拡散層の基礎

半導体プロセスにおいて、拡散層はデバイスの動作特性や信頼性を大きく左右する重要な領域である。シリコンウェハに不純物を導入する際、その分布と濃度勾配を制御することによってMOSFETやダイオード、バイポーラトランジスタなど多様なデバイスの特性を最適化できる。このように拡散層は半導体デバイスの電気的特性を根本的に支える要素であり、高性能化や微細化の流れの中でますます重要性を増している。本稿では拡散層の形成原理やプロセス技術、デバイス特性との関係などについて概観する。

拡散の基本原理

半導体製造における拡散層の生成は、基本的に熱拡散によって行われる。不純物原子は高温下でシリコン原子格子の空孔や格子間を通って移動し、特定の深さまで侵入する。一般に、この拡散量は温度と時間に強く依存し、拡散係数というパラメータで定量化される。また、不純物の種類(B, P, Asなど)によって拡散挙動が異なるため、狙ったデバイス特性を得るには適切な温度条件や拡散時間を設定することが必須となる。近年では高濃度ドーピングを実現するためにイオン注入工程が併用されることが多く、イオン注入後のアニール処理によって拡散層を形成・調整する手法が一般的となっている。

ドーピング濃度とプロファイル

拡散層の特性は不純物濃度分布(プロファイル)によって大きく左右される。拡散中に不純物濃度が深さ方向に連続的に変化するため、その分布形状を正確に把握することがデバイス設計のカギとなる。例えばMOSFETの場合、ソースやドレインの形成に用いられる拡散プロセスは、オン抵抗やしきい値電圧、寄生抵抗などに影響を及ぼす。また、デバイス間のばらつきを低減するためには、不純物ドーピングの均一性や再現性が求められる。量産ラインではウェハ全面にわたって均質な拡散層を形成するため、反応炉内の温度分布を厳密に制御し、複数枚のウェハに対しても安定した拡散プロファイルを実現する技術が重要である。

CMOSデバイスへの応用

CMOSデバイスにおいてはpMOSとnMOSの両方を同一基板上に形成する必要があるため、複数種類の不純物拡散を使い分けることになる。たとえば、pMOSのソース・ドレインにはボロン系の不純物を拡散し、nMOSにはリンやヒ素といった不純物を用いる。これら異なる拡散プロセスを並行して行う際には、プロセス温度や拡散時間の微妙な差異に注意を払いながら、双方の拡散層が最適な深さと濃度になるよう設計しなければならない。微細化が進む現代のCMOSプロセスでは、チャネル長の短縮に伴いしきい値制御が難しくなるため、拡散深さの抑制や寄生抵抗の低減を両立するプロセス技術が検討されている。

ゲート構造への影響

微細化したMOSデバイスでは、ゲート電極の形状や高誘電率膜(High-k膜)の導入によってしきい値電圧やリーク電流を制御する一方、ソース・ドレインの拡散層がゲート近傍まで精密に形成される必要がある。ゲート下部のチャネル領域とソース・ドレイン側のジャンクションの位置関係が不適切だと、短チャネル効果やドレイン誘起バリア降下(DIBL)が顕著になり、デバイス性能が大きく損なわれる。このため、先端プロセスではシリサイド技術やHaloドーピングなどを組み合わせ、ジャンクション形成を高度に制御するアプローチが一般化している。これらは全て厳密な拡散層の制御が前提となっており、歩留まりを確保するための重要課題である。

拡散層と信頼性

半導体デバイスの長期的な信頼性にも拡散層の品質が深く関係している。拡散過程では高温環境にさらされるため、格子欠陥や不純物の再分配などの物理現象が同時進行で生じる可能性がある。さらに、高集積化や多層配線が進む中で、拡散による熱ストレスが局所的に大きくなることがある。こうしたストレスを原因とする格子欠陥やボイドの発生は、デバイスの寿命や動作不良の原因となるため、プロセス工程全体を通じて拡散条件とウェハ構造を最適化する必要がある。高い信頼性を要求されるパワーエレクトロニクスや車載用デバイスほど、この拡散層の管理がきわめて重要となる。

温度管理と先端技術

拡散工程は高温アニールを利用するため、温度管理がプロセス品質を決定づける要因の一つといえる。ウェハの反応炉内での位置や装置特性によって温度分布に偏りが生じる場合、同じ工程レシピを適用しても拡散層の濃度プロファイルや深さに差異が出る可能性がある。近年では、プロセス空間全体をリアルタイムでモニタリングしながら局所的に温度を制御する装置が開発され、より精密な拡散層の形成が可能になりつつある。また、瞬間的に高温を与えるラピッドサーマルアニール(RTA)は、深い拡散を抑えながら表層付近のみを高濃度化する技術として注目されており、先端ノードのCMOSや次世代パワーデバイスへの適用が進んでいる。