技術流出|製造、販売ノウハウや顧客名簿などの営業秘密が社外に流出すること

技術流出

技術流出とは、企業が独自に保有する技術、製造、販売ノウハウや顧客名簿などの営業秘密が社外に流出することをいう。特に近年、日本企業の先端技術が不正に海外に流出するケースが増えており、企業の国際競争力の低下や国の安全保障が脅かされる危険性が指摘されている。

技術流出の概要

経済産業省によれば、技術流出の実態について日本企業の約35%が技術流出した、もしくはその可能性があると回答している。特に大手企業と比べると中小企業では技術流出に対する意識が高くない傾向があり、潜在的にはもっと多くの日本企業から技術が流出している可能性がある。特に技術のデータベースを保有していない企業は熟練技術者の頭の中に熟練技術が蓄積されているため熟練技術者が転職するとすべて流出してしまう。

技術流出とその影響

流出した技術がどのような内容かを調査した結果によれば、最先端技術や基盤技術を開発する企業にとって将来の売り上げをつくる要素となる技術が流出しているという危機的な状態にあることを意味する。流出した場合でも、汎用的な技術に陳腐化するまでには時間がかかるため、流出した技術を手に入れた企業よりも先に商品化・サービス化できれば先駆者としての利益を享受することができるが、商品化・サービス化するための技術ノウハウや活用方法が社内に蓄積されていない場合は、それも難しい。さらに技術ノウハウを保有している人材の流出によって中期的な戦略を実行できなくなる可能性もある。

人材流出

技術者の退職による技術流出が主要なルートの一つである。技術の持ち出しという悪質なケースも多いが、極めて合法的に退職し、転職活動を行い、企業に勤めていくケースもある。たとえばかって半導体では、不況の際に半導体事業部ごと廃止になったため活躍の場を求めて大量の技術者が海外のライバル企業に流れたケースがあった。

提出資料の悪用

交渉の段階で、図面や環境・設備資料、3Dデータを提出することを求められたが、それをもとに競合企業に提出され、安い価格で受注されたケースがある。

技術流出の対策

技術流出の対策は下記の通りがある。

技術流出リスクを想定した契約

企業や人に対して適切な秘密保持契約(漏洩禁止)をしなければならない。一般的な秘密保持義務のほか、秘密管理義務、目的外使用禁止義務などがある。さらに具体的な秘密管理手段の導入を契約で取り決めることも有力である。加工前のキーパーツを提供する場合はその分析を禁止する規定を設ける必要がある。さらに、秘密情報の目的外使用禁止の実効性を担保するために類似品の製造販売を禁止することがあり、その定義を明確にしておくことが求められる。

想定外の技術掲出

ある企業では機械メーカーとの一連の秘密保持契約を行っていたが、機械メーカーの下請企業とは秘密保持契約が不十分であったため、類似品が出回ったケースがある。相対する企業だけでなくその下請企業や協力会社も想定する必要がある。契約以外にもその人の倫理的な側面も強いため、そもそもの技術流出出リスクを想定して分割発注するなど、リスク対策は何十にもかける必要がある。

リバースエンジニアリング

技術が流出したルートを調べた結果によると、技術者の退職による技術流出が一つの主要なルートであるが、それ以上にリバースエンジニアリングによって技術が流出している。日本でも以前から実施されているテアダウン手法などによってリバースエンジニアリングは可能であり、ソフトウェアなどもリバースエンジニアリング用のソフトウェアが販売されており、簡単に実行できる。

ブラックボックス化の重要性

企業としてはリバースエンジニアリングができないように、あるいはできたとしても設計内容が分からないようにブラックボックス化する必要がある。このブラックボックス化も一つの技術であり、ブラックボックス化するための手法や考え方についても技術としてまとめておく必要がある。ブラックボックス化の対象はキーパーツ、知識や技術原理などで二重、三重の対策でブラックボックス化しておく。

技術流出の主な事例

技術流出の主な理由は下記のとおりである。

東芝とサンディスクの事例

2014年、東芝と提携していた米半導体大手サンディスクの元技術者が、NAND型フラッシュメモリーの研究データを韓国のハイニックス半導体に不正に持ち出したとして逮捕された。この技術はスマートフォンやデータセンター向けに需要が高く、東芝はこの技術の世界2位のシェアを誇っていた。事件後、東芝はハイニックス社と元技術者に対して損害賠償を求める民事訴訟を起こし、ハイニックス社とは和解が成立し、約330億円の和解金が支払われた。

新日鉄住金とポスコの事例

2012年、新日鉄住金の元従業員が特殊鋼板の製造技術を不正に取得し、韓国のポスコに流出させたとして損害賠償を求める民事訴訟が起こされた。この元従業員は1980年代半ばから約20年間にわたり技術を提供していた。2015年9月、ポスコと新日鉄住金は和解し、ポスコは約300億円を支払うこととなった。

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