応力分布|材料内部の応力の空間的変化と解析

応力分布

応力分布とは、外力や温度差などの作用により部材内部で生じる応力の空間的な広がりを指す概念である。幾何形状、材料特性、荷重の載せ方、支持方法によって同じ合力でも内部の応力のかかり方は大きく異なる。たとえば急激な断面変化や穴・切欠きの周辺では応力が局所的に高まる現象(応力集中)が現れ、破壊や疲労寿命に強く影響する。設計・解析では、与える荷重条件や境界での拘束条件(境界条件支持条件)を明確化し、目的と安全率に適したメッシュ分割と数値手法で応力分布を把握することが重要である。

基礎概念と支配関係

連続体力学では、点ごとの応力はCauchyの応力テンソルで表し、平衡方程式、適合条件、構成式(弾性ならHookeの法則)を満たす解として応力分布が決まる。弾性域では応力とひずみの関係が線形で扱いやすいが、塑性化やクリープ、粘弾性が関与すると非線形問題となる。設計現場では有限要素法(FEM/FEA)により3Dあるいは2Dモデルを用いて節点変位から応力を後計算するのが一般的である。解析精度は要素選択、メッシュ密度、そして与えた境界条件支持条件の妥当性に強く依存する。

代表形状における応力分布

  • 軸荷重棒:一様断面・中心軸上の引張では断面内応力はほぼ一様となる。ただし端部・段差・穴周辺では応力が乱れ、局所的に高くなる。
  • 片持ち梁:先端集中荷重では曲げ正応力は中立軸を基準に板厚方向へ線形分布、せん断応力は断面内で放物線状に分布する。
  • 両端支持梁:中央集中荷重ではスパン中央で曲げモーメントが最大、支点近傍でせん断が卓越し分布が入れ替わる。
  • 穴あき板(Kirsch解):無限板の円孔周りは遠方公称応力の約3倍まで上がりうる。設計では半径比や面取りで集中を緩和する。
  • 接触(Hertz):面圧は接触楕円内で特有の分布をとり、表層直下で最大となる場合がある。転がり疲労ではこの深さの繰返し応力が重要である。

境界近傍と特異性

鋭い切欠きや逆L形状の内角では理論上の特異挙動(尖り)が現れうる。実材では微小な丸み・加工影響層・材料微視構造により有限化するが、数値解析では局所メッシュの細分化や応力集中低減策(フィレット付与、テーパ遷移)が有効である。定量評価には応力集中係数による補正が実務的である。

材料非線形と時間依存が与える影響

塑性域に入ると荷重経路に依存して応力分布が再配分され、ピーク応力が鈍化して耐力が上がる場合もあれば、局所座屈や延性破壊を招く場合もある。高温ではクリープにより時間とともに分布が変化し、粘弾性体では負荷速度で応答が変わる。溶接・熱処理・表面改質に起因する残留応力は外力と重畳し、疲労や割れ発生位置を左右するため、工程設計段階から考慮するのが望ましい。

残留応力と応力分布

残留応力は無荷重でも存在し、外力負荷時の総応力場を歪める。X線回折、穴あけ法、磁気的方法などで評価し、必要に応じショットピーニングや熱処理で分布を再設計する。

測定・解析手法と品質保証

FEAで応力分布を評価する流れは、(1)幾何と材料物性の定義、(2)荷重・拘束の設定、(3)メッシュ戦略の選定、(4)収束と誤差評価である。メッシュ独立性の確認としてピーク応力やエネルギー指標の収束を確認する。実験ではひずみゲージやDIC(Digital Image Correlation)、光弾性、モアレ干渉が有効である。評価指標は最大主応力、相当応力(von Mises)、せん断応力、接触面圧など用途に応じて選ぶ。設計限界は材料強度だけでなく、座屈・不安定現象も含むため、必要に応じ構造安定性スナップスルーの観点でも検討する。

設計指針(実務の要点)

  • 断面変化は緩やかにし、フィレットやテーパで集中を低減する。
  • 孔や溝は縁部に面取り・丸みを与える。必要なら応力集中係数で補正設計する。
  • 荷重の伝達経路を短く明快にし、不要な曲げ・ねじりを避けるため取り付けの支持条件を適正化する。
  • 製造起因の残留応力を把握し、工程での緩和策を講じる。
  • 疲労・クリープ・環境影響(腐食)を見越し、許容応力だけでなく寿命評価を行う。