安全カテゴリ
安全カテゴリは、機械の安全関連制御系の構造的要求を段階化した概念であり、EN ISO 13849-1(旧EN 954-1)においてB・1・2・3・4の5段階で定義される。目的は単一故障や共通原因故障に対する耐性を設計段階で担保し、要求されるパフォーマンスレベル(PL)を達成することである。カテゴリは構造要件を示し、MTTFd・DCavg・CCFと組み合わせてPL(a〜e)を決める。IEC 62061ではSILによる確率論評価を用いるが、現場ではスイッチ、リレー、コンタクタ、安全PLC、セーフティリレー、非常停止、ライトカーテンなどの構成で安全カテゴリを満たす設計が行われる。[/toc]
規格の位置づけ
EN ISO 13849-1は、機械の安全関連部(SRP/CS)の設計・評価法を示し、安全カテゴリ(B/1/2/3/4)と信頼性指標(MTTFd、DCavg、CCF)からPLを導出する枠組みを与える。ISO 12100でリスク評価を行い、目標PLrを決め、構造(カテゴリ)と部品信頼性を合わせて妥当性確認する。IEC 62061はSILに基づきPFHdで評価するが、対象や手法の相違はあれど、最終的な安全達成の考え方は整合的である。
設計要素と評価指標
- MTTFd:検出可能な故障までの平均時間。高・中・低の3段階で扱い、PLに影響する。
- DCavg:診断カバレッジ。自己診断・相互監視・テストパルス等で高める。
- CCF:共通原因故障対策。配線分離、冗長系の多様化、環境制御で点数化。
- PFHd:時間当たり危険故障率。IEC 62061で主に用いる確率指標。
- PL:a〜eの5段階。PLr(要求PL)と一致させる設計が必要。
カテゴリの基本構造と故障対応
カテゴリB
基本安全原則を満たす最小構成。単一チャネルで、単一故障が危険側へ直結しうる。高リスク用途には適さない。
カテゴリ1
カテゴリBに高信頼部品(高MTTFd)を適用。構造は単純だが、故障検出はほぼ持たないため、予防的保全が前提となる。
カテゴリ2
単一チャネルに周期的テスト(自己診断)を追加。故障を発見できるが、テスト間の隙間リスクに注意。入力機器のテストパルスが典型。
カテゴリ3
二重チャネル+相互監視により単一故障で安全機能は維持される。DCavgを中〜高にし、コンタクタのフィードバック監視などで診断性を確保する。
カテゴリ4
二重チャネルの完全冗長に高診断(高DCavg)を組み合わせ、累積故障にも耐える最高水準。高PL(d〜e)達成に用いられる。
典型アーキテクチャ例
- 非常停止:二列押しボタン→セーフティリレー→二重コンタクタ(フィードバック監視)でカテゴリ3/4を実現。
- ガードドア:ロック付き安全スイッチを二重化し、クロスモニタで短絡検出。
- ライトカーテン:OSSD二重出力を安全入力モジュールまたは安全PLCに接続し、自己診断と停止カテゴリに応じた遮断を行う。
選定手順(実務フロー)
- ISO 12100でハザード同定とリスク見積りを実施し、PLrを決定。
- 要求PLrに対応する安全カテゴリ候補(B〜4)とアーキテクチャを選択。
- 部品のMTTFd・DCavg・CCF対策を見積り、PL計算ツールまたは表で検証。
- システム応答時間、停止カテゴリ、要求回数を確認し、余裕度を確保。
- 妥当性確認(テスト、回路レビュー、配線・EMC・環境条件の確認)を実施。
検証・妥当性確認の要点
故障モードの洗い出し(FMEDA相当)、診断試験の実装、コンタクタ溶着・溶断検出、電源断時のフェイルセーフ、配線断線・短絡の検知が要点である。安全出力のアークリスクや残留電圧、停止時間(機械的惰性を含む)の計測も併せて行う。
よくある不適合と対策
- シリーズ接続の乱用でDCavgが低下:センサを分割し、各支線の監視を導入。
- コンタクタのフィードバック未監視:ミラー接点の監視を追加。
- 一般PLCで安全機能を代替:安全PLCやセーフティリレーに置換。
- 共通原因故障:配線ルート分離、電源二重化、部品多様化で低減。
- 要求停止カテゴリ不一致:機械側のブレーキや遮断器と協調設計。
PLとSILの関係理解
PLとSILは評価軸が異なるが、危険故障確率を低減するという目的は同じである。既存設備の改修では、安全カテゴリによる構造確保を足場に、PFHdやPLの整合を確認し、規格間整合(EN ISO 13849-1とIEC 62061の相互参照)で妥当性を説明するのが実務的である。
部品選定の観点
安全認証部品のデータ(MTTFd、B10d、PFHd)を用い、動作サイクル、要求率、環境(温度、振動、汚染度)、EMC、配線方法を総合評価する。二重化では同一ロットや同系統依存を避け、多様化(リレー+半導体、磁気+機械)を取り入れるとCCF低減に有効である。
ドキュメンテーション
リスク評価記録、PL計算根拠、配線図、I/O割付、試験成績、変更履歴を残す。保全時にはテスト手順と許容基準(応答時間、停止距離、毎始業点検)を明記し、変更管理で安全カテゴリの前提を崩さない。
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