四角ナット|四角い穴で締まる部品

四角ナット

四角ナットは、外形が正方形をしたナットである。六角ナットと同じくボルトと組み合わせて締結に用いられるが、角が四つしかないため、レンチの掛かり代が広く、材料の歩留まりや座面の安定性に特徴がある。JIS B 1163では「四角ナット」として規定され、日本では主に木造建築の金物、古い工作機械、鉄道設備などで見かける。現在の主流は六角ナットであり、四角ナットは用途が限られた部品になっている。

六角に主役を譲るまで

ねじ部品の歴史をたどると、初期のナットはほとんどが四角形だった。鍛冶屋が棒材を叩いて角を落とし、穴を開けてねじを切る方法では、四角形がいちばん作りやすかったためである。19世紀に入り、1841年にジョセフ・ホイットワースがねじ規格を提案し、工作機械による大量生産が進むと、レンチの回し角度が小さくて済む六角形が広まった。四角ナットは、スパナを60度ずつ持ち替えられる六角ナットに比べて、90度ずつしか回せない。狭い場所では不利である。

四角ナットが選ばれる理由

四角ナットの利点は、座面が広く、ゆるみにくい点にある。面で受けるため、木材や薄い鋼板に取り付けたときも食い込みにくい。また、溝やスロットにはめ込んで回り止めに使えることが大きな強みである。たとえばアルミフレームのTスロットや、C形鋼のレール内では、四角形が溝の側壁に当たって空回りを防ぐ。六角ナットではこの動きを得にくい。

主な用途

木造建築では、土台と基礎をつなぐアンカーボルトや、柱と梁を固定する羽子板ボルトに、四角ナットが組み合わされることがある。鉄道では、レールとまくら木をつなぐ部材で、振動に耐える座面の広さが評価されてきた。古い旋盤やフライス盤のテーブルにあるTスロットでも、四角ナットが活躍している。

製造現場での使い分け

製造業の購買担当者から見ると、四角ナットは六角ナットより単価が高く、同じM10サイズで1.5倍から2倍になることも珍しくない。流通量が少なく、在庫を置く店が限られるためである。そのため、治具や装置を設計するときは、まず六角ナットで済むかを検討し、回り止めが必要な場面に限って四角ナットを指定するのが実務の流れである。納期が数週間かかる特注品もあるので、図面段階での確認が欠かせない。

製造方法

四角ナットの多くは、冷間圧造で作られる。鋼線を所定の長さに切り、パンチで四角形に成形してから穴を開け、タップでめねじを切る手順である。材質は炭素鋼のS10CやS45Cが主流で、強度区分は4、5、8などが指定される。屋外では、亜鉛めっきやユニクロ処理で防錆する。ステンレス製のSUS304は海沿いの設備に使われるが、鋼製より3倍ほど高い。

取り付け時の注意点

レンチを掛けるときは、スパナの口が四角の二面にきちんと当たるよう、サイズを確かめる。六角ナット用のレンチを流用すると、口がゆるんで角を傷めることがある。締め付けトルクはM10の強度区分4で約20N・m前後が目安だが、実際の値はボルトの材質や潤滑状態で変わるため、設計図面の指示に従う。

形状と寸法の特徴

四角ナットの形は単純である。上から見ると正方形で、中心にめねじが切られている。呼び径M10の場合、二面幅は17mm、厚さは8mm前後が一般的な寸法だ。同じM10の六角ナット(二面幅17mm)と二面幅は揃うものの、対角寸法は四角ナットのほうが約24mmと大きくなる。角が張り出すため、周囲に他の部品が近いと干渉しやすい。

四角ナット

ねじの呼び
(d)
おねじ
の外径
m s e d’k
基準
寸法
許容差 基準
寸法
許容差
約 約
上 中 並 上 中 並
M3 3 2.4 0
-0.25
0
-0.4
– 5.5 0
-0.2
0
-0.5
– 7.8 5.3
M4 4 3.2 0
-0.3
0
-0.48
– 7 0
-0.2
0
-0.6
– 9.9 6.8
M5 5 4 0
-0.3
0
-0.48
– 8 0
-0.2
0
-0.6
– 11.3 7.8
M6 6 5 0
-0.3
0
-0.48
±0.6 10 0
-0.2
0
-0.6
0
-0.6
14.1 9.8
M8 8 6.5 0
-0.36
0
-0.58
±0.8 13 0
-0.25
0
-0.7
0
-0.7
18.4 12.5
M10 10 8 0
-0.36
0
-0.58
±0.8 17 0
-0.25
0
-0.7
0
-0.7
24.0 16.5
M12 12 10 0
-0.36
0
-0.58
±0.8 19 0
-0.35
0
-0.8
0
-0.8
26.9 18
(M14) 14 11 0
-0.43
0
-0.7
±0.9 22 0
-0.35
0
-0.8
0
-0.8
31.1 21
M16 16 13 0
-0.43
0
-0.7
±0.9 24 0
-0.35
0
-0.8
0
-0.8
33.9 23
(M18) 18 15 0
-0.43
0
-0.7
±0.9 27 0
-0.35
0
-0.8
0
-0.8
38.2 26
M20 20 16 0
-0.43
0
-0.7
±0.9 30 0
-0.35
0
-0.8
0
-0.8
42.4 29
(M22) 22 18 0
-0.43
0
-0.7
±0.9 32 0
-0.4
0
-1
0
-1
45.3 31
M24 24 19 0
-0.52
0
-0.84
±1 36 0
-0.4
0
-1
0
-1
50.9 34

ねじの呼びにかっこをつけたものは非推奨
ねじ部の穴面取りはその直径がめねじの谷の径よりもわずかに大きいものとする。
ねじの呼びM10以下のナットは特に指定のない限り四角部の面取りは省略してもよい。
特に必要がある場合は、指定によって高さ(m)をおねじ外径の寸法にとることがある。

関連する規格

  • JIS B 1163:四角ナット(並形)
  • JIS B 1181:六角ナット(比較の基準として参照される)
  • JIS B 0205:一般用メートルねじの基準寸法
  • ISO 262:一般用メートルねじの選択サイズ
  • JIS B 1256:平座金

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