合金鋼|炭素鋼に合金元素を加えた素材

合金鋼

合金鋼とは、炭素鋼を基準に合金元素「主要元素(炭素、ケイ素、マンガン、リン、イオウ)以外の元素」を添加した材料である。特殊鋼とも呼ばれる。代表的な元素としてクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、タングステン(W)、コバルト(Co)があげられるが、これらを添加することにより、目的とした機械的性質を得ることができる。大きく機械構造用合金鋼には強靭鋼と高張力鋼の二種類があり、一般的に一般構造用圧延鋼材(SS400など)より引張強さや粘り強さが強い。

主要5元素

鋼の製造工程で主要5元素である炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、イオウ(S)が混入する。これらの混入は鋼の製造にとってプラスにならないことが多く、材料試験証明書(ミルシート)に含有量が記載されている。

  • 炭素(C):硬さや強さを増加させる。炭素鋼に代表される
  • ケイ素(Si):溶鋼中の酸素を取り除く働きをし、引張強さや硬さを増加させる
  • マンガン(Mn):溶鋼中のケイ素(Si)を取り除く働きをし、熱処理を良好にし、鋼に粘り強さを与える
  • リン(P):鋼にとって有害な元素であり、低温時に鋼をもろくする性質がある。
  • イオウ(S):鋼にとって有害な元素であり、赤熱状態のときに鋼をもろくする性質があ
    る。

合金元素

    代表的な合金元素は、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、タングステン(W)、コバルト(Co)であり、合金鋼の添加物として使われる。合金元素は、一般に機械的性質、とくに引張強さを高め、靱性を改善し、結晶粒度を改善する、焼入性を改善する、鋼内部で炭化物、窒化物、酸化物などの化合物を形成する、などの特徴がある。
  • 脱酸:Si,Mn,Al,Ti
  • 硬さ:Si,Mn,C,Cu,Al,、Ti
  • 有害:P,S
  • 耐食性:Cr,Ni,Cu
  • 耐熱性:Ni,Cr,Mo,W,V
  • 粘り強さ:Ni,Mn,Cr
  • 焼入れ性:Mn,Ni,Cr,Mo,W,Si,Co
  • 有害:P,S

クロム(Cr)

クロム(Cr)は焼入れ性、耐食性を増加させる働きがある。Crを13%以上添加したものをステンレス鋼という。

モリブデン(Mo)

モリブデン(Mo)は鋼の中に炭化物をつくり、耐摩耗性をよくする。また、焼戻し後の粘り強さも大きくし、高温状態での硬さを増加させるはたらきもある。ステンレス鋼では、耐食性に優れた性質を持たせることができる。

バナジウム(V)

バナジウム(V)は鋼の中に炭化物をつくり、耐摩耗性をよくするはたらきがある。また、鋼の中の結晶粒を微細にするはたらきがあり、脱炭防止効果もある。

タングステン(W)

タングステン(W)は鋼の中にクロム(Cr)やバナジウム(V)と複炭化物を作り、耐摩耗性をよくするはたらきがある。また、耐熱性を向上させるはたらきがある。

コバルト(Co)

コバルト(Co)は焼入れ組織(マルテンサイト)を強くし、鋼からの炭化物の脱落を防ぐ。高温状態でも硬く、強度に耐える材料となるはたらきがある。

強靭鋼

強靭鋼とは炭素鋼よりも引張強度や粘り強さが大きく、歯車ボルトなど負担の大きな部分に使われる。

  • Cr鋼(JIS記号:SCr)
  • Cr-Mo鋼(JIS記号:SCM)
  • Ni-Cr鋼(JIS記号:SNC)
  • Ni-Cr-Mo鋼(JIS記号:SNCM)
  • Mn鋼(JIS記号:SMn)
  • Mn-Cr鋼(JIS記号:SMnC)

高張力鋼

高張力鋼は、引張強さが490MPa以上と炭素鋼のSS400(引張強さ400MPa)より強く、軽量化が必要な自動車部品、高層建築物、長大橋などに使用される。近年では590MPaや780MPaが多く使われるが、1GPaが超えるものがある。

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