半水系洗浄剤|油汚れも水も落とす万能剤

半水系洗浄剤

半水系洗浄剤とは、炭化水素系や高沸点の有機溶剤に界面活性剤を配合し、水によるすすぎ工程を組み合わせて対象物の油脂や加工残渣を除去する洗浄液の総称である。溶剤単体の高い洗浄力と、水系洗浄の安全性・経済性を折衷した位置づけにあり、電子基板のフラックス残渣除去や精密機械部品の脱脂などで広く用いられている。単に「セミアクアス洗浄剤」と呼ばれることもある。

開発の経緯

半水系洗浄剤が普及した背景には、オゾン層破壊物質の規制がある。1987年に採択されたモントリオール議定書により、それまで精密洗浄の主力であったCFC-113(フロン113)や1,1,1-トリクロロエタンの生産が段階的に制限され、先進国では1996年までに全廃された。代替として水系洗浄剤への転換も進んだが、金属表面の乾燥性や樹脂・ゴム部品への攻撃性で課題が残った。そこでテルペン系溶剤や炭化水素系溶剤に界面活性剤を加え、洗浄後に水ですすぐ半水系の手法が電子部品業界を中心に広まっていった。

洗浄の仕組み

洗浄プロセスは大きく二段階に分かれる。まず溶剤成分がロジンフラックスや切削油などの有機汚れを溶解し、界面活性剤が油膜を乳化させて対象物表面から引き離す。続いて温水または常温水によるリンス工程で乳化した汚れと残留溶剤を洗い流し、最後に乾燥させて仕上げる。単槽で処理する場合と、洗浄槽・リンス槽・乾燥槽を分けたインライン装置で処理する場合があり、生産量や対象物の形状に応じて設備構成が選ばれる。超音波洗浄機のキャビテーション作用を併用すると、狭小部や複雑形状部の残渣除去率が高まる。

主な組成

半水系洗浄剤の主成分は大きく三系統に分類できる。テルペン系はd-リモネンを主体とし、柑橘由来で生分解性に優れる一方、引火点は約48℃と低めで防爆対策が必要になる。グリコールエーテル系はブチルカルビトールなどを用い、水への溶解性が高く二段リンスとの相性が良い。高沸点炭化水素系はイソパラフィンを主体とし、金属への攻撃性が低いため精密部品向けに適する。

系統 主成分の例 引火点の目安 主な用途
テルペン系 d-リモネン 約48℃ フラックス除去、樹脂洗浄
グリコールエーテル系 ブチルカルビトール 約77℃ 金属加工品の脱脂
高沸点炭化水素系 イソパラフィン 60℃以上 精密機械部品、光学部品

界面活性剤の役割

配合される界面活性剤は非イオン系が主流であり、油分を微細な粒子として水中に分散させる乳化作用を担う。添加量はおおむね数パーセントから10パーセント程度で、多すぎると泡立ちが増えてリンス性を損ない、少なすぎると洗浄後に油膜が再付着しやすくなる。薬液としての濃度管理は導電率や比重の測定で行われることが多い。

溶剤系洗浄剤・水系洗浄剤との比較

洗浄手法の選定では、洗浄力・乾燥性・設備コスト・環境負荷を天秤にかける必要がある。有機溶剤単体の洗浄は油分への溶解力が高く乾燥も速いが、VOC規制や引火性への対応が重い。水系洗浄剤は安全性が高い反面、乾燥に時間を要し、鉄系部品では防錆処理が別途必要になる。半水系洗浄剤はその中間に位置し、フラックスのような複合的な汚れに強い。

方式 油脂への洗浄力 乾燥性 設備・ランニングコスト
溶剤系(有機溶剤単体) 高い 速い 防爆設備で高め
半水系洗浄剤 中〜高 中程度 中程度
水系洗浄剤 中程度 遅い 比較的低い

適用分野

半水系洗浄剤は次のような工程で採用例が多い。

  • 電子基板におけるフラックス残渣の除去
  • 切削・研削後の金属部品からの油分除去
  • 航空機・自動車部品の精密脱脂
  • 光学レンズやセンサー部品の表面洗浄

フラックス残渣の除去

プリント基板のリフローはんだ付け後には、ロジン系やRMA系のフラックス残渣が部品周辺に残る。これを放置するとイオン性残渣が絶縁抵抗を低下させ、長期使用時の腐食やマイグレーションの原因となる。半水系洗浄剤はロジンの溶解性が高く、狭ピッチ部品下の隙間にも浸透しやすいため、洗浄後の表面抵抗値やイオン残渣量(IC測定)で管理されるケースが多い。仕上げ乾燥にIPA乾燥を組み合わせ、水分残留によるウォーターマークを防ぐ工程設計も見られる。

取り扱い上の注意点

テルペン系や炭化水素系は消防法上の第四類危険物に該当するものが多く、貯蔵・取り扱いには防爆エリアの指定や換気設備が求められる。作業環境では有機溶剤中毒予防規則に基づく局所排気装置の設置と作業環境測定が必要になる。塩酸などの酸系薬品や次亜塩素酸系薬品と混合保管しないことも徹底したい。使用後の廃液は油水分離処理を経て、COD値や油分濃度が排水基準を満たすことを確認したうえで放流するか、産業廃棄物として委託処理する必要がある。

排水・環境面での位置づけ

半水系洗浄剤のリンス水は油分と界面活性剤を含むため、そのまま公共下水道へ流すことはできない。工場排水は水処理設備で凝集分離や活性汚泥処理を経てから放流されるのが一般的であり、PRTR法の対象物質を含む配合の場合は排出量の届出義務が生じる。近年はテルペン系を中心に生分解性の高い成分への置換や、水酸化ナトリウムを用いたアルカリ性水系洗浄剤との使い分けが進んでおり、現場では対象物の材質や汚れの種類ごとに複数の洗浄方式を併用する運用が一般的になっている。

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