信頼度曲線
信頼度曲線は、製品やシステムの時間経過に伴う信頼性の変化を可視化する指標である。縦軸に信頼度R(t)または故障率λ(t)、横軸に時間tをとり、設計・製造・運用の各段階で弱点の発見、保全計画、保証設計に用いる。代表例が「バスタブ曲線」で、初期故障・偶発故障・摩耗故障の3領域を一枚で表す。信頼度曲線は単なる図示ではなく、背後にある統計分布や試験条件、打ち切りデータの扱いを含む分析フレームであり、RAMS(Reliability, Availability, Maintainability, Safety)の基盤に位置づく。特にフィールドデータとライフ試験の両輪で作成し、設計FMEAやFTA、予防保全・予知保全の意思決定に接続する点が実務上重要である。
定義と基本指標
信頼度曲線は、信頼度R(t)=P(T>t)、故障分布F(t)=1−R(t)、密度f(t)=dF/dt、故障率(ハザード)λ(t)=f(t)/R(t)の関係から導かれる。一般にR(t)=exp(−∫0tλ(τ)dτ)であり、λ(t)の形状が曲線の解釈を左右する。実務では平均故障間隔MTBF=∫0∞R(t)dtも併用するが、MTBFは分布形に依存し、単独指標では経時変化を読みにくい。よってR(t)やλ(t)の時間依存を図示する信頼度曲線を主軸に据えることが推奨される。
バスタブ曲線(初期・偶発・摩耗)
信頼度曲線の典型は「バスタブ曲線」である。初期は製造ばらつきや潜在欠陥によりλ(t)が高く、是正後に一定(偶発)へ移行し、寿命末期に摩耗で再上昇する。各領域で対策が異なるため、領域判定が保全・保証・設計改善の出発点となる。
- 初期故障:スクリーニング、エージング、バーンイン、工程能力向上で低減
- 偶発故障:冗長化、フォールトトレランス、監視・診断で可用性確保
- 摩耗故障:摩耗限界設定、予防交換、予知保全、設計寿命の見直し
Weibull分布とパラメータ解釈
信頼度曲線のモデリングではWeibull分布が広く用いられる。形状m(β)、尺度ηの2パラメータで、m<1は初期故障優勢、m≈1は指数分布(偶発)、m>1は摩耗を示す。Weibull確率紙や対数線形回帰で推定し、異常モードごとにm・ηを分離すると改善焦点が明確化する。右打ち切り(運転中)や区間打ち切りを含むデータは、最尤推定やKM推定で扱い、信頼区間を曲線に重ねて判断の不確かさを可視化する。
設計・製造・運用への展開
曲線は評価の終点ではなく、意思決定の起点である。以下の流れで活用すると効果が高い。
- 設計段階:設計FMEA・FTAで故障メカニズムと負荷を仮定し、目標R(t)・λ(t)を設定
- 製造段階:特性要因図や工程能力指数で初期故障領域を短縮し、スクリーニング条件を最適化
- 運用段階:保全方針(予防・予知・事後)を信頼度曲線から選定し、交換周期や点検周期を最適化
- 保証設計:保証期間内のF(t)を抑制し、コストとリスクのトレードオフを明示化
- フィードバック:フィールド故障のベイズ更新で曲線を継続的に改善
RAMSとの関係
ReliabilityはR(t)やλ(t)の形状そのものであり、Availabilityは稼働率A≈MTBF/(MTBF+MTTR)として信頼度曲線と保全性(Maintainability)で決まる。Safetyは致命度の高い故障モードの確率を小さくする設計・保全・防護で担保する。したがって、R(t)の改善、MTTRの短縮、危険事象の分離・低減を同時に進めることがRAMS最適化である。
データ取得と加速試験
信頼性データはライフ試験、HALT/HASS、加速試験から得る。温度・湿度・電圧・負荷などのストレスで故障メカニズムを変えずに時間を圧縮し、ArrheniusやEyringモデルで使用条件へ外挿する。サンプルサイズは狙う信頼水準・信頼限界・試験時間で決まり、経済性と推定精度のバランスをとる。打ち切り設計(時間または故障数)を明示し、試験終了後は打ち切りを含む推定法で信頼度曲線を再構築する。
可視化と読み取りのコツ
R(t)は縦軸対数で直観的に読め、λ(t)は移動平均やスプラインで過度平滑化を避ける。モード混在時はクラスタリングや階層ベイズで曲線を分解し、メンテナンスや環境差によるサブグループを別描画する。信頼区間・予測区間、打ち切り記号、運用プロファイルを併記し、意思決定者が不確実性込みで理解できる図にすることが重要である。
用語上の注意
信頼度曲線という語は文脈でR(t)(生存曲線)やλ(t)(ハザード)、あるいは両者を指す場合がある。報告書では何を縦軸に取った曲線かを明示すること。なお「故障率」と「不良率」は異なる(前者は時間依存の発生強度、後者はロット内の割合)。またMTBF=1/λは指数分布でのみ成り立つ近似であり、一般分布では成立しない点にも注意する。