上衣|上半身に着用する衣服の総称と変遷

上衣

上衣(じょうい、うわぎ)は、上半身を覆う衣服の総称であり、下半身を覆う下衣(かいた)と対をなす概念である。人類の歴史において、上衣は身体の保護、体温の維持という実用的な目的から始まり、時代が下るにつれて社会的な地位や身分、職業を示す象徴的な役割、さらには個人の自己表現としてのファッション性を帯びるようになった。現代の一般的な語彙としては「うわぎ」と訓読されることが多く、シャツやブラウスといった肌に近いものから、ジャケット、コートなどの外衣まで、極めて広範囲な衣類を含んでいる。

分類と定義

上衣は、その着用目的や形態によって多角的に分類される。最も基本的な分類は、肌に直接または下着の上に着用する「シャツ類」と、その上に重ねて着用する「外衣(アウターウェア)」の区別である。また、前開きでボタンやファスナーを用いて着脱する「前開き形式」と、頭から被って着用する「プルオーバー形式」にも分けられる。日本の法体系や統計調査においては、用途やデザイン、素材に基づいて細かく定義されており、例えば日本標準商品分類では、メンズ、レディース、子供用といった区分に加え、カジュアル、ビジネス、スポーツといったカテゴリーで分類されている。

西洋における上衣の歴史

西洋における上衣の変遷は、中世の「チュニック」から始まり、ルネサンス期を経て複雑な構造を持つようになった。17世紀から18世紀にかけては、男性の服装として「ジャストコール」と呼ばれる丈の長い上衣が主流となり、これが現代のスーツ・ジャケットの原型となった。19世紀に入ると、実用性と機能性が重視されるようになり、フロックコートやモーニングコート、ラウンジジャケットへと簡略化が進んだ。女性の上衣においては、コルセットで身体を締め付けるスタイルから、20世紀のシャネル・スーツに代表されるような、活動的で解放的なフォルムへと劇的な変化を遂げた経緯がある。

日本における伝統的な上衣

日本における伝統的な和服の体系においても、上衣に相当する概念は存在する。平安時代の「垂領(たりくび)」形式の衣服や、江戸時代に一般化した「羽織(はおり)」、作業着としての「半纏(はんてん)」などがその代表例である。和装における上衣は、洋装のように身体のラインに沿った立体裁断ではなく、直線的な裁断による平面構成が特徴であり、帯を用いて着付けることで完成する。明治時代以降の洋風化により、軍服や学生服として西洋式の上衣が導入され、次第に日常着として定着していった歴史的背景を持つ。

主な種類と特徴

現代社会で使用される上衣には、用途に応じて以下のような多種多様な形態が存在する。これらは繊維技術の発展により、防水、透湿、保温などの高機能な素材が用いられることも多い。

  • ジャケット:腰丈程度の長さで、前開きの仕立てられた上衣。ビジネスからカジュアルまで幅広く用いられる。
  • コート:防寒や防雨を目的に、他の上衣の上に着用する最も外側の衣類。
  • シャツ:肌着の上、または直接肌に着用する襟付きの上衣
  • セーター:獣毛や化繊の糸で編まれた、保温性の高いプルオーバー形式の上衣
  • ブラウス:主に女性が着用する、柔らかい素材で作られた装飾性の高い上衣

構成要素

上衣の形状を決定づける主要な構成要素には、襟(カラー)、袖(スリーブ)、身頃(みごろ)、ポケット、ボタンなどがある。これらの要素の組み合わせにより、特定の職種を象徴する制服や、儀礼的な場にふさわしい礼服としての格式が決定される。例えば、襟の形状一つをとっても、ノッチドラペルやピークドラペルといった違いがあり、それが上衣全体の印象を大きく左右する。

部位名称 概要・役割
前身頃(まえみごろ) 上衣の前面部分。ボタンやファスナーが配置される。
後身頃(うしろみごろ) 上衣の背面部分。姿勢や動きやすさに影響を与える。
袖(そで) 腕を覆う部分。長袖、半袖、七分袖などのバリエーションがある。
襟(えり) 首の周囲を囲む部分。装飾的な役割と首元の保護を担う。
見返し(みかえし) 前端や襟元の裏側に貼られる布。形状を保つ役割がある。

機能性と素材

上衣に求められる機能は、気候や活動内容によって異なる。夏季においては通気性と吸湿性に優れた綿や麻が多用され、冬季には断熱性の高いウールやカシミア、あるいはダウン(羽毛)を充填したナイロン素材が選ばれる。近年では、衣服内の温度を一定に保つ調温素材や、ストレッチ性に優れた合繊繊維など、化学技術を駆使した上衣が一般化しており、スポーツウェアやアウトドア用品の分野で特に顕著な進化が見られる。

現代における社会的な意味

現代のビジネスシーンにおいて、ジャケットなどの上衣を着用することは、相手に対する敬意や信頼感を示すマナーとして定着している。一方で、クールビズに代表される軽装化の動きにより、上衣を省略するスタイルも許容されるようになりつつある。しかし、冠婚葬祭などの儀礼的な場面では、依然として特定の形式を備えた上衣の着用が必須とされることが多く、上衣は単なる防寒具を超えた社会的な文化記号としての役割を維持し続けている。