ワイヤハーネス
ワイヤハーネスは、複数の電線やケーブルを束ね、端子・コネクタ・保護材・表示材などを組み合わせて機器間の電力供給や信号伝送を行うサブアセンブリである。自動車、産業機械、家電、医療機器、航空宇宙など幅広い分野で用いられ、組立性の向上、誤配線防止、保守容易化、耐環境性の確保を目的として設計・製造される。屈曲・振動・熱・水・油・薬品・塩害・電磁ノイズなどの厳しい環境条件に対して、材料選定と取り回し設計が鍵となる。
構成要素
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導体:主に銅(無酸素銅、錫めっき、ニッケルめっき)。軽量化のためアルミや銅合金を用いる場合もある。
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絶縁体・シース:PVC、XLPE、ETFE、PTFEなど。耐熱・難燃・低発煙・耐油・耐磨耗の要求に応じて選定する。
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端子・コネクタ:圧着端子、タブ端子、ギボシ、IDC、各種多極コネクタ。二重ロック、キーイング、シール(IP保護)を備える。
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保護材:コルゲートチューブ、熱収縮チューブ、スパイラルチューブ、布/ビニルテープ、ブッシュ、グロメット、クリップ、クランプ。
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表示・識別:線番チューブ、ラベル、色分け、マーカーリング、バーコードやQRによるトレーサビリティ。
機能と役割
ワイヤハーネスは、電力供給、信号伝送、接地(アース)の確立、ノイズ低減、誤配線の抑止、保護と固定を一体で実現する。機器側の取り付け性やサービス性を高め、工場内の組立工数と現場配線ミスを削減する効果が大きい。
設計要点と規格
回路仕様に基づき電流容量、温度上昇、電圧降下、束ね率、最小曲げ半径、許容曲げ回数、耐環境(熱・水・油・薬品・紫外線)を評価する。線径はmm²またはAWGで管理し、電圧区分や絶縁階級に応じて材質と厚みを選ぶ。関連規格としてJIS、IEC、ISO、SAE、UL、JASO、製造品質ではIPC/WHMA-A-620などが参照される。FMEAやDFM/DFSにより誤挿入や組立工数を抑え、線番・色別・枝分かれ位置を明確化する。
製造プロセス
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展開設計:回路図から展開図・治具ボード(ハーネスボード)を作成し、長さ公差・分岐位置・端末仕様を定義する。
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切断・剥線:自動機で切断・ストリップし、端末処理のばらつきを抑制する。
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端子圧着・はんだ:圧着高さ、ベルマウス、はみ出し長などを管理し、モニタで荷重波形を監視する。必要に応じてはんだ補強を行う。
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組立・保護:分岐、テーピング、チューブ挿通、コネクタ挿入、二重ロック、クリップ取り付けを行う。
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検査・梱包:導通・絶縁・耐圧・外観検査を実施し、ラベリングと梱包でロットトレースを確保する。
検査と品質管理
導通/短絡、絶縁抵抗、耐電圧、ピン配列、極性を100%検査とし、圧着部は断面観察や引張試験で妥当性を確認する。外観はキズ・潰れ・テープ端末の剥離、寸法は総長・分岐位置・露出長を管理する。部品混入や誤品使用を防ぐため、バーコード照合とPoka-Yokeを組み合わせる。
故障モードと対策
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断線・接触不良:線径見直し、ストレスリリーフ、適正曲げ半径、クランプ間隔の最適化。
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腐食・浸水:シールコネクタ、グロメット、ドレンループ形成、耐食めっき端子。
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摩耗・熱ダメージ:保護チューブ・布テープ、熱源離隔、エッジ部の面取りとブッシュ。
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ノイズ:ツイストペア、編組/箔シールド、360°シールド終端、レイアウト分離、フェライト等。
自動車における特徴
車載ハーネスは振動・温度・水・泥・塩害に曝されるため、難燃・耐熱・耐候の材料と堅牢な固定が必須である。エンジン、キャビン、ドア、ルーフ、フロア、シャシなど系統別に分割され、通信はCAN、LIN、FlexRay、Automotive Ethernetを併用する。EV/HEVでは高電圧オレンジケーブル、HVコネクタ、EMC対策、IP67/69Kシール、軽量化のためアルミ導体や細径化が進む。ゾーンECU化により配策の簡素化と重量低減が図られる。
産業・医療・航空用途
産業機械は油・切粉・粉塵への耐性、ロボットは繰返し屈曲と捻り耐性が重視される。医療機器は低アウトガス、生体適合、洗浄/滅菌耐性が必要である。航空宇宙では軽量・難燃(低発煙/無ハロゲン)や極限環境での信頼性に重点が置かれる。
材料選定のポイント
導体は銅の導電率と可撓性、アルミの軽量性を比較し、めっきは錫・ニッケル・銀から耐食/耐熱で選ぶ。絶縁・シースは温度範囲、難燃性、耐薬品、屈曲寿命で決める。保護材は配策経路と接触相手に応じ、コルゲートや布テープ、熱収縮チューブを使い分ける。
配策設計と取り付け
3D CADで機器・筐体・板金の干渉を回避し、しゅう動部・ヒンジ・高温部を避ける。クランプ間隔は振動条件に応じて設定し、余長で温度伸縮と組立許容を確保する。コネクタはキーイングと色分けで誤挿入を防ぎ、サービス性(脱着性)も加味する。エッジ部はブッシュや保護テープで保全する。
ノイズ・EMC設計
高電流系と微小信号系は距離を取り、交差は直交させる。差動線はツイストとインピーダンス整合を保ち、シールドは360°接地で終端する。リターン経路を短くし、スターアースや等電位化でグランドループを抑える。必要に応じフィルタやフェライトコアを追加する。
代替技術とアーキテクチャ
FPCやフラットケーブル、基板直付け(ボードイン)により軽量化・省スペース化を図る動きがある。ネットワーク化やBUS化、PoEの活用、無線の併用でハーネス点数を削減する一方、冗長性・安全性を満たす設計ルールが求められる。
トレーサビリティと文書化
ワイヤハーネスは部品表(BOM)、配線図、ピン配列表、端子条件表、検査記録、変更履歴を整備し、バーコード/QRで製番・ロットを追跡する。電子承認フローと図面の一元管理により、設計変更の伝達遅延や誤製作を防止できる。量産では標準作業票、ゲージ・治具管理、校正履歴、工程監視データを連携させ、品質の一貫性を担保する。