レーザーセンサ
レーザーセンサは、レーザー光の直進性・単色性・集光性を利用して、対象物の有無、距離、変位、寸法などを非接触で検出する光学式センサである。一般的なLED光源を用いる光電センサと比較して、ビームを微小なスポットに絞れるため、直径0.1mm以下の微小物体の検出や、繰返精度1μm以下の高精度測定が可能となる。光源には波長650〜690nmの赤色半導体レーザーが多く採用され、光点が視認できることから光軸調整が容易という実務上の利点も持つ。FA(ファクトリーオートメーション)分野を中心に、位置決め、厚み測定、品質検査など幅広い工程で使用されている。
測定原理による分類
距離や変位を測定するタイプのレーザーセンサは、主に三角測距方式、TOF方式(Time of Flight)、位相差方式の3つの原理に大別される。三角測距方式は、投光ビームが対象物で拡散反射し、受光レンズを通してCMOSやPSD(位置検出素子)上に結像する位置の変化から距離を算出する。測定範囲は数mmから数百mm程度と短いが、分解能は0.01μmオーダーに達する機種も存在する。TOF方式はパルス光が対象物との間を往復する時間を計測する方法であり、光速(約30万km/s)を基準とするため長距離に強く、LiDARや屋外の車両検知では100mを超える測定が実現されている。位相差方式は変調した連続光の位相ずれから距離を求める方式で、両者の中間的な特性を持つ。原理の違いは下表のように整理できる。
| 方式 | 測定範囲の目安 | 分解能 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 三角測距 | 数mm〜数百mm | 0.01〜1μm | 変位・厚み・段差測定 |
| TOF | 数m〜数百m | 1mm〜数cm | 物流・車両・屋外検知 |
| 位相差 | 数十cm〜数十m | 0.1mm〜数mm | タンクレベル・位置管理 |
検出形式と構成
物体の有無を判別する用途では、投光部と受光部を対向配置する透過形、反射板を用いる回帰反射形、対象物からの反射光を直接受ける反射形が使い分けられる。透過形は検出距離を60m程度まで確保でき、粉じんの多い環境でも安定する。受光素子にはフォトダイオードやCMOSイメージセンサが用いられ、増幅回路・しきい値判定回路を経てオンオフ信号またはアナログ電圧として出力される。近年はIO-Link対応機種が増加しており、受光量や内部温度を上位の制御機器へ常時送信することで予知保全に活用する事例が広がっている。構成要素の考え方は検出器一般の設計論と共通する部分が多い。
光電センサ・他方式との違い
LED式の光電センサはビームが広がりやすく、スポット径は距離とともに数十mmまで拡大する。これに対しレーザー式はコリメートレンズにより数百mm先でもスポット径を1mm以下に維持でき、隙間からの検出や背景の影響を受けにくい判別が可能となる。フォトインタラプタのような近接配置型では対応できない長距離・高分解能の領域を担う点が特徴といえる。超音波式と比べると透明体や光沢面で不安定になる場合がある一方、応答速度は数十μsと圧倒的に速い。ナノメートル級の絶対精度が必要な場面では、干渉計を用いるレーザー測長が選択される。
産業分野での用途
自動車部品の組付け確認、電子基板の反り測定、鋼板やフィルムの厚み管理、ロボットのワーク位置補正など、用途は製造業全般に及ぶ。レーザー加工機ではノズルと板材の距離を一定に保つ高さ倣い制御に変位センサが組み込まれ、切断品質の安定化に直結している。回転体の位置検出ではエンコーダと併用され、搬送ラインではタクトタイム短縮のためのトリガセンサとして機能する。半導体製造装置ではウェハのマッピングや位置合わせに使用され、クリーンルーム対応品や真空対応品といった派生仕様も存在する。こうした光応用製品は光デバイス技術の進歩、とりわけ半導体レーザーの小型化・低価格化に支えられて普及してきた経緯がある。
安全規格と選定上の注意
レーザー製品はJIS C 6802(IEC 60825-1)によりクラス分けされ、FA用センサの多くはクラス1またはクラス2に該当する。クラス2は可視光かつ出力1mW以下であり、瞬目反射により保護されるとされるが、ビームを意図的に覗き込む行為は避けなければならない。選定時に見落とされやすいのが対象物の表面性状である。鏡面や透明体では正反射方式の機種を選ぶ、黒色ゴムのような低反射率対象では受光量マージンを2倍以上確保するといった配慮が現場では欠かせない。価格面では汎用の判別用が1台1〜3万円程度、高精度変位計はアンプ込みで数十万円に達するため、要求精度に対して過剰仕様にならない機種選定がコスト管理の要点となる。油煙や切削液のミストが漂う環境では、光学窓の汚れによる受光量低下が誤検出の主要因となるため、エアパージの追加や定期清掃を保全計画に組み込むことが望ましい。
技術の変遷
レーザーの産業応用は1960年のルビーレーザー発明に端を発し、1980年代に半導体レーザーの量産化が進むと、FA用センサへの搭載が急速に広がった。1990年代にはCMOS受光素子の採用により三角測距方式の直線性が改善され、2000年代以降はデジタル信号処理による外乱光補正や相互干渉防止機能が標準化した。現在では光通信分野で培われた高速変調技術がTOF方式の精度向上に転用されるなど、周辺技術との融合が進んでいる。
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