レンジフード|油煙を強力排出 静音・省エネ設計

レンジフード

レンジフードは、調理中に発生する油煙、蒸気、微粒子、臭気を効率よく捕集し、屋外へ排気または室内に循環浄化するための換気設備である。フード形状で発生源直上に「捕集域(キャプチャゾーン)」を形成し、ファンが生む負圧で気流を導く。捕集効率はフード開口面の形状、設置高さ、流入速度、整流度、周囲気流の乱れに依存する。一般に整流板やベルマウス形状、適切な開口面速度(例: 0.4〜0.7 m/s)が有効で、必要風量は「発生源面積×目標開口面速度」で概算できる。家庭用では静圧特性や騒音、清掃性、据付空間とのトレードオフを、業務用ではフードの連結・防火・排気ダクト計画や機械換気量の整合を重視する。

構造と機能

レンジフードの基本構成は、フード部(捕集・整流)、フィルタ/グリス分離機構、送風機(シロッコファン等)、ダクト接続部、操作・照明である。フィルタはメッシュ型、バッフル型、遠心分離型などがあり、油滴の慣性分離や方向転換で捕集する。排気型は屋外へ接続する円形または角形ダクトと逆止(バックドラフト)ダンパを備える。循環型は活性炭等の脱臭・微粒子フィルタで浄化し室内へ戻す。開口面での吸い込みを阻害しないため、整流板は流入渦を抑え、フード周縁部の漏れを減らす役割を持つ。

主な方式(排気・循環)

排気(ダクト)方式は、熱・水蒸気・臭気を屋外へ搬出でき、湿気滞留の抑制に適する。建物の換気計画・有効貫通面積・風量バランスを考慮し、給気経路の確保が前提となる。循環(ノンダクト)方式は、ダクト経路が取れない場合の選択肢であり、活性炭や高性能フィルタで臭気・微粒子を吸着・捕集したうえで室内へ戻す。いずれの方式でも、目標捕集効率を満たす実効風量と静圧特性、設置条件に合う圧損設計が重要である。

性能指標と選定の考え方

  • 風量: 定格風量(m³/h)やCFMで表記。開口面速度と捕集効率の観点から、加熱機器幅や熱負荷に見合う値を選ぶ。
  • 静圧特性: ダクト長・曲がり(エルボ)・端末器具による圧損に耐える必要がある。等価ダクト長で計画する。
  • 騒音: dB(A)で表記。高回転・乱流・共振が要因。インバータ制御やファン翼形状の最適化で低減する。
  • 捕集効率: フード形状・据付高さ・整流板・周囲気流で変動。実機条件での性能が重要。
  • 消費電力・効率: BLDCモーター、最適風路、低損失フィルタで省エネ化。
  • 清掃性: 油滴の滞留を避ける勾配、着脱容易なバッフル、親水・撥油コーティングなど。

設置・ダクト計画

レンジフードの据付高さは多くの家庭用でコンロ上方約600〜750 mmが目安とされる。低すぎると作業性が損なわれ、高すぎると捕集効率が低下する。ダクトは可能な限り短く、曲がりを減らし、内面が滑らかな材料を用いる。エルボは45°を複数使う方が90°1回より圧損が小さい場合がある。屋外端末は風雨の逆流を抑える形状とし、バックドラフトダンパを併設する。多住戸では機械換気の系統分離・逆流防止構成が望ましい。

気流・熱・湿気の取り扱い

ガス調理では燃焼生成物や水蒸気が多く、熱浮力により上昇流が強い。電気調理は発熱分布や油煙特性が異なるため、開口面速度の設定やフード形状の設計思想も変わる。冬季は室内の負圧により給気不足が起きやすく、窓開放や給気レジスタの利用でバランスを取る。高湿調理では凝縮水の処理とダクト内結露対策(断熱・ドレン)が必要になる。

騒音・振動と低減策

騒音源はファン回転・翼通過周波数、ダクト内の乱流、ケーシング振動、漏気や端末風切り音に分けられる。対策として、ファンの低比速度化・翼端隙間の最適化、インレットベルマウス、吸音材の適用、共振回避の剛性設計、ダクト支持の防振、固定金具の確実な締結がある。柔軟ダクトの過度な蛇行は乱流と圧損を増やすため避ける。

フィルタ・グリス管理と衛生

油煙は粒径が広く、粗大粒子は慣性で分離されやすいが、微小粒子は通過しやすい。バッフルや多層メッシュは清掃周期と圧損のバランスが要点である。業務用ではドレン溝やオイルトレーで回収し、火災リスク低減に寄与する。循環型では活性炭の飽和と圧損増大を踏まえた交換周期管理が必要で、PM2.5クラスの微粒子対策として高性能フィルタを併設する設計もある。

安全・法規と材料

レンジフード周辺は可燃性油分が付着しやすく、発火リスク低減が重要である。フード・ダクトには不燃性材料(例: SUS、亜鉛メッキ鋼板)を採用し、防火区画の貫通部は適合部材で処理する。ガス機器と組み合わせる場合は離隔・遮熱板や温度上昇の管理、電気安全では接地・過電流保護・ケーブル取り回しを適切に行う。屋外端末は防虫・耐候を考慮する。

近年の技術動向

近年はBLDCとインバータ制御で広範囲に効率が高い送風が可能になり、需要に応じた可変風量制御で省エネと静音の両立が進む。油煙センサーで自動運転し、余熱・残留臭のためのアフターラン機能も一般化しつつある。フード形状は流体解析で最適化が進み、縁部の漏れ低減や整流板の渦抑制設計が高度化した。清掃では親水性コーティングや食洗機対応バッフルの普及が見られる。

厨房計画とのインターフェース

コンロの幅・奥行・出力、周辺収納の位置、天井高さ、壁際かアイランドかなど、空間条件が捕集効率を左右する。アイランド設置では周囲からの乱れ風に対処するためフードの張り出しや風量計画が重要となる。複数機器が並ぶ場合はフードの連結・区画で発生源ごとの捕集域を確保する。居住環境では、全熱交換換気との整合や、気密住宅での給気確保を含む通気計画を総合的に検討することが望ましい。