リミットスイッチ|位置や動作の限界を電気的に検出

リミットスイッチ

リミットスイッチは、機械の可動部が所定位置に達したことを物理的な接触で検出し、回路を開閉する位置検出用スイッチである。アクチュエータにローラやプランジャを備え、カムや停止片により押し込まれると内蔵のスナップアクション機構が動作して接点状態が瞬時に切り替わる。産業用ロボットのエンドストップ、搬送装置の位置決め、工作機械の原点復帰、安全扉のインタロックなどで広く用いられ、電源ノイズや粉塵環境下でも安定に作動する堅牢性を特徴とする。

構造と動作原理

基本構造は「アクチュエータ」「スナップアクション機構」「接点ブロック」から成る。アクチュエータがカムにより一定量以上押し込まれると、バネ機構の蓄勢が臨界を越えてスナップし、接点が高速で切り替わるため、接点の滞留時間が短くアークやチャタリングが抑えられる。動作位置の設計には、プレトラベル(PT)、オーバートラベル(OT)、リリースポイント(RP)、差動移動量(MD)などの幾何要素を用いる。これらを正しく見積もることで、要求する位置精度と繰返し精度を満たせる。

  • PT(Pre-Travel):作動前から動作点までの移動量
  • OT(Over-Travel):動作後に許容される追加押込み量
  • MD(Movement Differential):動作点と復帰点の差(ヒステリシス)
  • RP(Release Point):復帰時に接点が戻る位置

接点方式と用語

接点は主に a 接点(NO:Normally Open)と b 接点(NC:Normally Closed)で表す。切替接点を有する SPDT(1a1b)は、共通端子(COM)から NO/NC のいずれかに導通する。電気的仕様では、許容電圧・電流に加え、抵抗負荷か誘導負荷か(例:AC-15、DC-13)の区別が重要である。微小荷重領域では金メッキ接点を選ぶと接触抵抗の上昇を抑えられる。チャタリングはスナップ機構で抑制されるが、外乱振動が大きい場合は回路側でシュミット入力やデバウンスを設ける。

  • NO/NC:常開/常閉
  • SPST/SPDT:単極単投/単極双投
  • a 接点/b 接点:通電時に閉成/開放

主な種類

用途に応じてアクチュエータ形状や筐体が最適化される。ローラレバー形はカム追従性が高く、プランジャ形は位置決め精度に優れる。ヒンジレバー形は長ストロークで柔軟に取り付け可能である。安全扉にはロック機構やキー連動を備えたセーフティタイプが使われ、誤動作や迂回を防ぐ設計が施される。

  • ローラレバー形/ヒンジレバー形/スプリングレバー形
  • プランジャ形(ピン/ローラプランジャ)
  • 可搬・小型のマイクロスイッチ形
  • セーフティリミットスイッチ(扉インタロック)
  • 耐油・耐熱・耐環境(IP65〜IP67)筐体

定格・規格と環境条件

リミットスイッチのカタログでは、定格電圧(V)、定格電流(A)、負荷種別(AC-15、DC-13 など)、機械的寿命・電気的寿命、動作頻度、保護等級(IP65〜IP67)、耐振動・耐衝撃、使用温度範囲を確認する。国際規格は IEC 60947-5-1、国内では JIS C 8201-5-1 が一般的で、機械の安全関連では ISO 13849 との整合が検討される。ケーブル引込みはグランドやコンジットで保護し、油ミストや切削液がかかる環境では耐油材質とシール構造を選定する。

選定ポイント

選定では「必要位置精度」「到達速度」「押付力」「耐環境」「保全性」を軸に判断する。カム形状はリードイン勾配を持たせ、OT を十分確保しつつアクチュエータに過大応力がかからないようにする。繰返し精度を要する原点検出では、バックラッシュやレバー撓みを最小化し、基準面の剛性を高める。安全用途では冗長 2 系統や異種原理の多様化を採り入れ、単一故障で危険側にならないように設計する。

  • 要求位置に対する PT/OT/MD の余裕
  • 接点容量:起動電流・誘導性負荷の評価
  • 保護等級・材質:粉塵/油/水の曝露
  • 取付方向とカム当たり角:反復精度と摩耗の両立

配線とインタフェース

PLC の DI(24 V DC)へは、SPDT なら 3 線(COM/NO/NC)、単接点なら 2 線で配線する。インターロック回路では自己保持の解除条件を満たすよう NO/NC を適切に組む。長距離配線ではサージ・静電気の影響を受けにくいようツイストペアやフェライトコアを用い、外来ノイズが大きい設備ではアイソレーション入力やフォトカプラを介す。リレーやソレノイドを同一系に混在させる場合、誘導性負荷の逆起電力はダイオード、RC スナバ、バリスタで吸収し、接点溶着を抑制する。

よくある故障と対策

故障は機械摩耗、位置ズレ、接点溶着、配線断線に大別される。押当て過多はアクチュエータの塑性変形を招き、動作点が変動する。誘導性負荷を直接開閉するとアークによる接点劣化が進む。対策として、定格内での使用、OT の適正化、カムの面取りと潤滑、保守間隔の設定、接点保護素子の追加、冗長化と定期点検を行う。安全扉では、単一スイッチ依存を避け、異なる動作原理の二重化でフェイルセーフを確保する。

  • 接点溶着:過電流・アーク → スナバ・負荷側対策
  • チャタリング:振動 → 固定剛性向上・入力デバウンス
  • 位置ズレ:過大 OT/磨耗 → カム整備・交換
  • 断線:屈曲疲労 → ケーブルクランプ・余長確保

近接センサ等との比較

リミットスイッチは物理接触ゆえに摩耗と寿命の制約がある一方、被検出体材質を問わず確実に「触れた事実」を得られる。誘導形・静電容量形・光電式近接センサは非接触で高速応答だが、材質依存や設置距離、汚れに敏感な場合がある。設備では環境条件、必要精度、保全方針を踏まえ、原点検出は機械式、通過検知は非接触などと使い分けるのが実務的である。

代表的な適用例

搬送ラインの端検出(エンドストップ)、CNC の原点復帰、昇降装置の上下限検出、クレーンのストローク制限、安全扉のインタロックなどが典型例である。いずれもカムやストッパの形状・材質・当たり角を設計し、MD を見込んだ停止位置の余裕を確保することで、誤停止・過走を避けられる。